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ネットの話題

「やめたいけどやめられない」 SNS依存防止授業の識者「規制を」

「ネットの世界は、繁華街を子どもがひとりで歩いているようなもの」

中学生の授業の中では、インターネットを一日5時間以上利用すると答えた子どももいたそう。
中学生の授業の中では、インターネットを一日5時間以上利用すると答えた子どももいたそう。 出典: 朝日新聞社

目次

オーストラリアで、16歳未満のSNS利用を制限する法律が施行されましたが、日本国内でも、子どもたちのSNSやスマホ利用について懸念する声があがっています。関東のある中学校の新入生が 卒業するまでの3年間、SNSやインターネットゲームの依存予防プログラムを実施した専門家は、子どもたち自身による「自己管理」だけでは依存や危険性を回避することには限界があると指摘します。

中学で3年間授業

SNSやインターネットゲームの依存予防教育に取り組み、養護教諭の養成にも携わっている、SBC東京医療大学教養部教授の佐久間浩美さんは、昨年までSNSやインターネットゲームの依存予防プログラムを関東の中学校で実施していました。

2021年に1年生だった生徒が3年生になるまで、毎年1回2時間にわたり、SNSを利用する上での注意点などを、具体的な事例を元にディスカッションするなどして、効果を測定。毎回、授業後には、授業前に比べてネットの利用時間が減少するなどの効果がありました。

先生の「SNSの困りごと」元に授業

――具体的にはどのようなプログラム内容だったのでしょうか。

自分の心や行動を、自分なりの方法でコントロールし、自己管理をするスキル(セルフマネジメントスキル」を使ったプログラムです。

自己管理スキル とは、目の前にある問題を解決するスキルや、強い欲求が生じた際に、時間を少し延ばすことでそれが抑えられ適切な行動をとれるなどの「メタ認知スキル」のことを言います。


一回一回の授業テーマは、中学校の先生から「このようなSNS利用で困っている」と具体的な困りごとを教えてもらい、それをベースに大学の学生と授業を作りました。授業では事例を元に話し合ってもらうスタイルをとりましたが、いずれもフィクションです。

【関連記事】LINE機能に年齢制限を 中学生父が問う「テクノロジーの使い方」 https://www.asahi.com/articles/ASTDJ10C0TDJULLI00KM.html

「画像を送って」言われたら…

――どのような授業内容でしたか?

中学校1年生では、「好意を寄せ合っている先輩から過激な写真が送られてきて、 自分の写真も送るように言われた女子生徒」の事例をテーマにしました。

男女一緒のグループを作り、「この女子生徒はどうすべきか」と話し合ってもらいましたが、「もし仮に送ったとしても、つきあえるわけではない」など、まっとうな意見が出ましたね。私たちからは「一度ネットにあげた画像はあとから後悔しても取り返しがつかない」といったことも伝えました。

中学校2年生では、文化祭でダンス部での発表で3年生をさしおいて代表に選ばれた2年生の女子生徒がSNSで誹謗中傷を受けたという事例。中学校3年生では、高校入学が決まり「#春から○○高校生」とつけてSNSにアップした女子生徒の事例を作りました。

 Rise/stock.adobe.com
Rise/stock.adobe.com

「誹謗中傷も依存の一つ」

――2年生のテーマ「誹謗中傷」は、個人情報をネットにアップしないということを伝える1、3年生のときのテーマとは少し毛色が違いますね。

誹謗中傷も依存の一つなんですよね。悪口を言ったりすると、興奮し脳が快感を覚える。これも依存の一つだと考えられています。
3年生で扱った事例は、依存の話でもあります。

SNSにアップした内容に「いいね」がつくとうれしいですよね。生徒たちからも、この事例のメリットとして「#タグ投稿をして『いいね』がたくさんもらえる」とか「人気者になれる」といった点があがりました 。デメリットとしては、「個人情報が流出して危険な目に遭う」ことが挙げられていましたが、「そもそもSNSは知らない人との交流を楽しむものだ」と言っている生徒もいました。

私は「いいね」に依存することは、危険だと考えます。「いいね」狙いの写真をアップするようになったら、それは依存している可能性が高いと考えられます。

授業では、「現実の世界での『いいね』が何かを、自分の中に見つけてもらいたい」ということを伝えました。

利用時間長くなればなるほど「依存する」

――プログラムの成果として、そのような内容を含んだ授業を続けた結果、授業前と後とでは、スマホの利用時間が短くなったという結果が出ました。でも、生まれたときからスマホが身近な世代の子どもたちです。ネット利用時間は、そもそも長いのではないですか。

授業の最初に、自分の生活を振り返る円グラフを作ってもらうと、ネットを一日5時間やってる子もいましたし、円グラフを書いてみて「こんなに使っていたんだ」と認識し驚く生徒もいました。ネットの利用時間は、依存とリンクします。利用時間が長くなればなるほど自分でコントロールがきかなくなります 。

生徒たちからは「やめたいけどやめられない」という声をいくつも聞きました。

SNSやオンラインゲームは、確かに楽しいし、場合によっては達成感がある。でもその時間が長くなりすぎると、依存する傾向が高まります。
自分の欲求や幸せを、ネットとは違ったところに求められるよう、自分の行動を自己管理できることが理想です。 「自分がネットにハマりすぎているな」という状態を俯瞰してみれたらいいのですが。

TAGSTOCK2/stock.adobe.com
TAGSTOCK2/stock.adobe.com

子どもだけで繁華街を歩いているようなもの

――では、「過度にハマってしまっている状況」を中高生が俯瞰することは可能なのでしょうか。

ある程度は可能かもしれませんが、「先を見通す力」がまだ未熟な中高生には規制が必要だと思っています。
誰とでも繫がれるネットの世界は、まさに繁華街を子どもがひとりで歩いているようなものです。規制は必要だし、しないといけないと考えます。

危機管理として、小さなうちからネットとの付き合い方を教えたり考えさせたりすることも大切ですが、それは、個人情報の非公開とか、見ず知らずの人とはつながらないという大原則があってこそ。その上で、その年代にあった危機管理行動やネットリテラシーを教えていくことが重要です。

【関連記事】LINE機能に年齢制限を 中学生父が問う「テクノロジーの使い方」 https://www.asahi.com/articles/ASTDJ10C0TDJULLI00KM.html

大人が手を取り合って

――日本では、まだ大きな規制の流れにはいたっていませんね。

プログラムを通して、学校からはトラブルの事例をいくつも聞きましたし、SNSトラブルの話は様々なところで見聞きします。

学校や保護者は、トラブル事例があることを、件数や具体例を挙げながら声に出していった方がいい。そして、規制が必要であることを、子どもたち自身にも丁寧に伝えていかないといけないですよね。

ネットに依存してしまう子どもは、いまの自分に不安や悩みがある場合もあります。現実の世界があまりに苦しいので、ネットに依存するという考え方もあります。

親たちはまず、子どものその苦しさを受け止めてあげる必要があります。大人ひとりでは太刀打ちできないこともあるので、大人たちが手を取り合って、子どもたちがネットに依存してしまう原因部分の、解決の糸口を見つけるべきです。

その上で、「ネットに依存しなくても、そばにいる人といることが楽しい」という状況にしてあげられたらいいですよね。

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