連載
#1 #自分の名前で生きる
「え、できないの?」選択的夫婦別姓、高校生がおぼえた現状の違和感
「未来を変えたい」と企画したオンラインイベントが25日開催
未来を変えるのは、未来の大人である若者たち――。そう考える高校生たちが「選択的夫婦別姓」について深く知りたいと、サイボウズの青野慶久さんや弁護士の古家野晶子さんを招いたオンラインイベントを開きます。運営メンバーのひとりは「結婚したときに別姓が選べないことを知らなかった。何で選べないんだろう?と思いました」と話します。高校生たちが選択的夫婦別姓をどうとらえているのか、話を聞きました。
イベントを開くのは京都私学フェスティバル実行委員会。私立高校で学ぶ高校生や教職員でつくる団体で、私学助成の拡充を目指す活動をするほか、身近な社会問題について学んだり、意見を発表したりしてきました。
今回は選択的夫婦別姓に興味を持った大谷高校や同志社高校などの約10人の高校生が、団体の大人の力も借りながらイベントを企画したといいます。
運営メンバーのひとり、森山優星さんは家庭科の授業で「選択的夫婦別姓」の議論が起きていることを知ったといいます。
「両親も同じ姓なので、女の人が男の人の姓になるのが当たり前だと思っていました。学んでいくうちに困っている人がいることを知り、自分の考えも変わっていきました」
小山春陽さんは逆に「別姓で法律婚もできる」ものだと思っていたそうです。「この議論を知って初めて『え、できないんだ』と知ったんです。何でだろう?と感じて、それはおかしいし変えていきたいなと思いました」と言います。
イベントを企画するにあたり、今月初めに立命館大法学部教授の二宮周平さんを招いて、日本の「姓」の歴史を学ぶ勉強会を開いたといいます。
盛永芭奈さんは「伝統が壊れるという反対意見がありますが、これまでは『それでもいいんちゃうん』という感じでした(笑)」と話します。
「でも、同姓である意味が現代と昔では変わっていることを学んで、根拠を元に議論できる知識がつきました」
25日のイベント当日にファシリテーターを務める朝子隆貴さんは「昔の考え方を大切にする人も多い中で、今の考え方とうまくマッチングさせるにはどうしたらいいのか、青野さんに聞いてみたい」と話します。
高校生たちは全員が必ずしも「選択的夫婦別姓を導入するべきだ」と考えているわけではありません。
中谷優仁さんは「家族の絆が壊れてしまうのではないかという懸念も分かるし、国会での議論も全く進んでいない。『旧姓や通称名の拡大使用ではいけないのか』と疑問に思っています。青野さんには『絶対に別姓を取り入れないといけないのか、他の道はないのか』と聞いてみたいです」と話します。
選択的夫婦別姓に反対する人からは、「両親が別姓の子どもがかわいそう」という意見もあります。子ども世代である高校生たちはどのように考えているのか尋ねると、盛永さんは「自分の親だけ名字が違っていて、みんなの両親は同じだったら、特別感があってうれしいな」と笑います。
中谷さんは「心配する意見も分かるんですが、成長してから親が離婚して名字が別になることもありますよね。生まれつき別だったらそれが『当たり前』として育ちます。離婚の方が子どもへの影響が大きいんじゃないでしょうか」と指摘します。
過去に選択的夫婦別姓を考えるイベントに参加し、事実婚などで両親が別姓という当事者の話を聞く機会があった短田美紘さんは「親の名字が別であることが自分たちの普通であって、他の人から『変だ』と言われて違いに気づくだけだと話していました。『かわいそう』と言うのは、周りが勝手に決めていることなんだなと思いました」と話します。
25日13時からのイベントは、Zoomに参加して青野さんたちに直接質問できるのは10代だけに限っていて、すでに多くの参加申し込みがあるといいます。
短田さんは「未来を変えるのは、未来の大人である若者たちだと思います。選択的夫婦別姓は『名前とは何か?』をみんなで考えること。今回のイベント『Be a TRIGGER-高校生が創る未来の作戦会議-』では、学生と大人、みんなで名前について考え、未来を変えていくきっかけにしたいです」と話しています。
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