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連載

#14 #乳幼児の謎行動

赤ちゃんが「障子びりびり」をやめられない理由 1歳児の鉄板の遊び

「こら!」より効果的なやめさせ方

障子をびりびりやぶいてしまう赤ちゃん
障子をびりびりやぶいてしまう赤ちゃん 出典: イラスト=橋本佳奈

目次

0歳~就学するまでの子どもたちの、思いも寄らない行動や不思議な言葉遣いに心当たりはありませんか?
今回は「障子をびりびりやぶいて穴だらけに…。どうしたらいい?」です。子どもの発達の研究をしてきた小児科医・小児神経専門医の小西薫さん(72)は「半分成長を喜んであげて」と話します。

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【質問】
こどもが1歳児のときに、寝室の障子をやぶいて遊んでいました。最初は小さな穴でしたが、やぶくことができると分かると、引っ張っては「にやっ」と笑っていました。後日、「穴が空いちゃったね。直そうか」と、穴が空いた部分に色紙を貼って一緒に直しました。
こどもが障子に興味を持つのはなぜでしょうか。
〈相談者:4歳のこどもがいる女性記者(34)〉

 

小西薫さん

赤ちゃんは、ちょうど立てたばかりの頃、活動的になりたくさん新しい発見をしていきます。「見えない世界が見えるようになった」ことが楽しくて仕方がないのです。 自分で触れて音がすると面白いのです。意図的な操作ができるようになったころ、障子という素材に出くわして、たまたまやぶれていて、ためしてみたら、びりびりの感覚が面白くなり、くりかえし、くりかえしやってしまうのです。

感覚的遊び×操作的遊び

 

記者

1歳児の赤ちゃんがよくやる理由はあるのでしょうか

 

小西薫さん

まだ立てない0歳代の赤ちゃんでも、実は、触覚、視覚、聴覚を使った「感覚的な遊び」を初めています。自分から外界に働きかけて、たとえば、がらがらの音を聞く、ころころと転がるものを見る、など変化を感じて楽しんでいます。 そして、1歳前後からは、立てるようになり更にできることが増え、「感覚的な遊び」とさらに「操作的な遊び」を組み合わせて遊べるようになってきます。 障子を破るのは、大体立てるようになってから始めることが多いです。障子をつまみ、びりびり引っ張る技術が必要になるからです。似ている遊びとしては、ティッシュペーパーを引っ張って次々と出すこともこどもたちは大好きですよね。それから少し進化したのが、障子を破る行動です。

2歳ごろからは「ごっこ遊び」に移行

 

記者

2歳ごろになると、ぴたっとやらなくなりました。やめるタイミングはあるのでしょうか。

 

小西薫さん

歩けるようになってきて、探索をして周りを理解できるようになると、もっと色々な力を試したくなり大体2歳ごろにはいわゆる「卒業」という形でやらなくなります。1歳半くらいから、たとえば、大人が料理をしているのを見て、自分もお椀と鍋を使っておままごとをするなど、「みたて・つもり遊び」いわゆる「ごっこ遊び」をするようになります。びりびりと障子をやぶく単純な作業は発展性がないので、つまらなくなり、さらに新しいことをやりたくなるのです。

 

記者

もし卒業できない場合、あまり良くないことなのでしょうか

 

小西薫さん

子供は「感覚的遊び」→「操作的遊び」→「ごっこ遊び」と少しずつ成長につれて遊びも進化していきますが、もちろん個人差があります。「2歳ごろからは卒業しますよ」と話しましたが、 「何歳になったら卒業しなければならない」ということではありません。 ただ、危ないことやいけないことについてはさせないようにしてください。障子をやぶるのは、困ることです。「これでおしまいね」と伝え、違う遊びを提案するなど、卒業を促していきましょう。

「なぜそうするのか」大人は寄り添って理解して

 

記者

やぶいている子どもに、「しつけ」で叱っていいのでしょうか。

 

小西薫さん

ついつい「こら!」と叱りたくなるのは分かります。でも、叱るだけ一本やりでは、子供は切り替えられません。1歳児の子どもは、「だめ」と言われていると理解していても、行動の切り替えは出来ません。
自分の欲求の方が勝ってしまいます。 子どもがする行動には必ず訳があるのです。 その行動をする理由を、子どもに寄り添って理解するよう努めてください。
訳が分かるようになるととても面白いです。「そうか、こんなことをしようとしたのだね」と、ちょっと怒りもクールダウンすると思います。 「こんなことも出来るようになったのね」と成長を「半分」喜んであげてください。ただ、もちろん喜んでいるだけではだめです。残りの半分は、やっては困ることや危ないことについては、ルールが必要です。危ないことはきちんと「だめ」と伝えてください。障子の場合は危険を伴うことではありませんが「これでおしまい」と線引きしてください。

代替の遊びのアイデア 大人の力の見せどころ

 

記者

叱らないで、やめさせるためにはどうすればよいのでしょうか。

 

小西薫さん

同じような質で、代替できる遊びを提案してあげましょう。
ここが大人の工夫どころです。たとえば、新聞をやぶってみたり。全く同じようなことでなくてもいいのです。手先を使えて変化を楽しめるもので言えば、水絵の具で乾いたら消えるシートでお絵かきなども楽しそうです。「遊び」の工夫は、自治体の子育てのセンターや、テレビなどからアイデアをもらってみてください。

小西行郎医師の思い 受け継いで

編集部では「#乳幼児の謎行動」をSNSで募り、乳幼児の「なんでそうなる?」を、昨年9月に亡くなった同志社大学赤ちゃん学研究センター長で小児科医の小西行郎さん(享年71歳)に聞いてきました。小西さんの妻で、これまで二人三脚で子どもたち発達の研究をしてきた小児科医・小児神経専門医の薫さんが、引き続き疑問に答えます。

小西薫さん
小西薫さん 出典: 本人提供

小西薫さん
(こにし かおる) 小児科医・小児神経専門医。2010年~小児科・発達支援の「すくすくクリニックこにし」院長(香川県木田郡三木町)。専門領域は、小児神経学、小児発達神経学、小児保健学、障害児教育、育児学。児童発達支援・放課後デーサービスや病児・病後児保育も手がける。 1948年2月京都市生まれ。大阪医科大学卒業。夫で同志社大学赤ちゃん学研究センター・前センター長の小西行郎氏と三男一女を育てた。 主な著書に「赤ちゃんのしぐさBOOK」(小西行郎氏と共著、海竜社)、「運動・遊び・音楽 (赤ちゃん学で理解する乳児の発達と保育2 運動・遊び・音楽(小西行郎氏らと共著)、 子どもはこう育つ! おなかの中から6歳まで」(小西行郎氏と共著、赤ちゃんとママ社)など。

赤ちゃん学
小児科学、発達認知心理学、発達神経学、脳科学、ロボット工学、物理学、教育学、霊長類学などの異分野研究の融合による新しい学問領域。赤ちゃんの運動・認知・言語および社会性の発達とその障害のメカニズムの解明から、ヒトの心の発達までを対象とする。2001年には「日本赤ちゃん学会」が設立。08年に同志社大学内に開所した赤ちゃん学研究センターは、16年に文部科学省の共同利用・共同研究拠点「赤ちゃん学研究拠点」として認定された。

  withnewsでは赤ちゃんの謎行動を募集しています。「洗濯物を装着する」「前転したくてお尻を押されるのを待っている」など、みなさんの中で「そういえば……」とひらめいたものをハッシュタグ「#乳幼児の謎行動」をつけてツイートしてくれませんか? 編集部が取材にかかります。

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