連載
#1 特派員フォトリレー
【世界の昼ごはん】ヤギ肉・湖の魚…、お国柄見える「サラメシ」たち

ところ変われば品変わる。世界のあちこちに住む朝日新聞の特派員が、同じテーマで写真を撮ってきました。今回のテーマは「昼ごはん」。ふつうの会社員、労働者が集まる、気取らない食堂やレストランの味が集まりました。あなたはどの国のランチが気になりますか?(朝日新聞国際報道部)
魚の発酵食品、パパイヤの葉…
はじめは東南アジアの国々から。ミャンマーから染田屋竜太記者と、カンボジアから鈴木暁子記者です。案内役は前テヘラン支局長で、世界60カ国以上に渡航経験のある東京・国際報道部の神田大介が務めます。

クレソンの炒め物(2300チャット=約188円)、豚肉と野菜の炒め物(2800チャット=約229円)、チキン肉団子の煮込みスープ(3500チャット=約286円)。
助手さん、運転手さんと3人でランチ。これに炒めライスもつけて、計9200チャットでした。私は糖質制限中のため、炭水化物はとりませんでしたが……。
ミャンマー料理はとにかく油が多いので、連日食べ続けるのになかなか苦労します。一番おいしかったのはスープかな」

運転手さんや取材先の方と4人で食べて15ドル(約1600円)ほどでした」
どちらもボリュームたっぷりで、しかも安い! カンボジアの「湖でとれる魚」と「ごはんにのせるとうまい魚の発酵食品」という、あいまいな2品が気になります。
ミャンマー料理が脂っこいというのはなんだか意外な感じがします。地理的に、中華料理圏とカレー文化圏のせめぎあいがあるようです。続いては、今月インドネシアに赴任したばかりの野上英文記者。


ちなみに私は、インドネシア滞在1週間にして、丸亀製麺やカレーのココイチに足を運んでしまいました。ショッピングモールなどにありますが、1食1000円程度するので、すごく高いことがわかります。それでもヒジャブ(イスラム教の女性がするスカーフ)姿の女性を含めて、かなり賑わってます」
パスタ、ヤギ肉、ヨーグルト…
インドネシアやタイといった国々では、辛さもおいしさの重要な要素の一つになっているようですね。次はトルコの其山史晃記者と、イタリアの河原田慎一記者。


バールではサンドイッチとパニーニのほか、プリモ(パスタ類など炭水化物系)とセコンド(お肉や魚系)のメニューを数種類ずつ用意しています。ガラスケースにあるもの(頼んで作ってくれるものもありますが)で「これ」と注文すると、微妙な温度加減に温めて席まで持ってきてくれます。
で、ローマ支局の近くのバールできょう食べたのはバジリコソースのファルファッレ。ファルファッレとは蝶々の意味で、見ての通りの形のショートパスタです。トマトとモツァレラ、オリーブが具として入っています。1人前は日本より多目で、5ユーロ(約700円弱)。これにミネラルウォーターとカフェ(エスプレッソ)を付けて6.9ユーロでした。レストランの半分くらいの値段で食べられます。ローマ中心部のバールでは7~8ユーロぐらいします。
ちなみに隣の席にった作業員風のおっちゃんは、サンドイッチ(2.5ユーロぐらい、日本のコンビニサンドの倍ぐらいの大きさ)を黙々と食べ、反対側のおばさまはポークソテーと付け合わせのグリル野菜を頼んでいました」
トルコ料理って野菜をたっぷりとるんですよね。それと、欠かせないのがヨーグルト。アイランというヨーグルトドリンクもあって、これは日本と違って甘い味はついていません。さっぱりしていて、ケバブなどの肉料理にあいます。
イタリアはさすがというか、さりげなくうまそうですね。きっとゆで加減も最高なんでしょう。以前イタリア人に、「君らだってコメの焚き具合にはこだわるだろ。俺たちはパスタのゆで加減に命をかけてるんだ」って言われたことがあります。
続いてはイギリスから下司佳代子記者と、アフリカ・ケニアの石原孝記者。

ちなみに普段は会社近くの中東系の屋台が並ぶ通りでテイクアウトすることが多く、そちらの方が安くて野菜もいっぱいです。箱にいっぱい詰めて5ポンド前後です。
イギリス料理はまずいと言われることがありますが、むしろ味がないことが多いと思います。この魚セットとポテトもまったく味付けされてないので、テーブルにある塩コショウしまくって食べました」

私もこれまでに3回は食べました。クセが多少あるものの、他の肉より噛みごたえがあっておいしい。特に骨の筋の部分がたまりません。
4月下旬に行きつけのレストランに行った際には、助手さんは手づかみで器用に食べ、満足そうな表情を浮かべていました。次の日も同じ店に行き、初挑戦だというラクダの肉をほおばって『これも結構おいしい。でも、やっぱりヤギ肉が1番だな』」
ロンドンのは、名物のフィッシュ&チップスを上品に皿に盛りつけただけという感じがしなくもありませんが、フィッシュ&チップスこそがイギリスで最もうまい食べ物だという意見もあります。わりと同感です。
ケニアの焼き肉は私も食べたことがあります。ごちそうなんですよね、確かにおいしかった。ちなみに、ケニアの一部の人たちの間ではシロアリを食べる習慣があるそうで、これも食べてみましたが、酸っぱくてもさもさしてました。
肉ちまき、揚げ豆腐、煮卵!
シメは日本のおとなり、台湾から西本秀記者。

肉ちまきは三角形で、もち米の中に豚肉、卵、くるみ、シイタケなどが入っています。スープの具は魚肉の団子とダイコン。パクチーもたっぷり入っています。肉ちまきが65台湾ドル(約240円)、スープが50台湾ドル(約180円)です」

オフィスのまわりには、400円程度で食べられるお店がたくさんあるとか。台湾は家庭で料理をつくるより、昼も夜も外食が主流なんだそうです。
これはうらやましい。食事ってメニュー決め、事前の買い物、調理、食器洗い、洗った食器の片付け、残った料理の保存、生ゴミの処分などなど、家事の中でも相当なウエイトを占めていますよね。日本ももっと思い切って、外食に依存してもいいのかも。

この日は肉団子、揚げ豆腐、煮卵、青菜とにんじんのソテー、スープで90元(約330円)でした」
煮卵がうまそうです。しかし卵って、高級食材というわけでもないのに、半熟で出てきたり、味がしっかり染み込んでいたりしたときのあの特別感、なんなんでしょう。ニワトリの卵が「タマゴ」というポジションを代表しちゃってるのもすごい。これは英語の「egg」でも同じですね。
ところで、ここまで見てきて感じたんですが。日本は手軽に使えるチェーン店こそ多いものの、家庭でも使われている食材を使い、味付けもふつうで、それを手頃な価格で出すような「ちょうどいい食堂」が、すごく減っているような気がします。
というわけで、世界の昼ごはん、外食編でした!