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2018年02月23日

女装バー経営者が「障害者支援」続ける理由 関係者も驚く「人間力」

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女装イベント「プロパガンダ」の会場で=モカさん提供

女装イベント「プロパガンダ」の会場で=モカさん提供

 24歳で性別適合手術を受け、29歳の時にはマンションから飛び降りる自殺未遂も経験したモカさん(31)は今、発達障害者の就労支援に携わっています。早くに社会に出て働き、今は複数の女装バーを手がけるなど、経営者として成功したモカさん。「社会不適合者だと思っている人も、自分に合う働き方を見つけさえすれば、かなり楽になるのです」と語ります。(朝日新聞記者・高野真吾)




【動画】「ギフテッドアカデミー」の河崎純真代表と講師陣について話をするモカさん=高野真吾撮影

「ビジネスの難しさ、よくつかんでいる」

※悩みを抱えている方へ、記事の最後に相談窓口の案内があります

 東京・JR渋谷駅新南口近くのビル一室にある「ギフテッドアカデミー」。発達障害者を対象に、プログラミング・デザインに特化した独自カリキュラムと就労機会を提供する就労移行支援施設だ。

 モカさんは2017年5月から講師をしつつ、河崎純真(じゅん)代表の経営相談にも乗ってきた。

 2017年12月中旬、個室で他の講師陣の近況や今後の経営方針について2人で話した。河崎代表が気になっていることを口にすると、モカさんが適宜、自分の考えを伝える。

 河崎代表は「人を使いビジネスを展開していく難しさを、感覚値でよくつかんでいる。一番話しやすい相手」と語る。

「ギフテッドアカデミー」の河崎純真代表と講師陣について話をした=高野真吾撮影

「ギフテッドアカデミー」の河崎純真代表と講師陣について話をした=高野真吾撮影

河崎代表「人間力高い」

 モカさんが知人の紹介で、施設を訪れたのは2017年2、3月ごろだった。

 「畳敷きの開放感ある部屋で生徒たちが、自由に学んでいる雰囲気が気に入りました。私自身、男から女になったトランスジェンダーですが、接してきた性的マイノリティーに発達障害の人も一定数います。学んできたプログラミングの知識と、20代に培った経営者の経験が生かせれば光栄ですね」

 モカさんは控えめに語るが、河崎代表は経営者としての信頼感以外に「人間力が高い」と評価する。「生徒に慕われ、頼りにされ、教室にいると安心感が生まれる」。

 映像プログラミングをモカさんに教わる男性(30)は、「目標の人」とした上で「話しやすく、明るく、親身になって指導してくれる」と話した。

ギフテッドアカデミーの生徒と談笑する=高野真吾撮影

ギフテッドアカデミーの生徒と談笑する=高野真吾撮影

無料勉強会を主催

 「この場所で2017年11月から『デザイン&プログラミングの独学法』を学ぶ無料の勉強会を開いています。悩み相談で70人を超す人たちと向き合ううちに、自分と合ってない働き方をしている人が多くいることに気がつきました」

 「仕事でミスをする、朝起きられずに遅刻する……。こうしたことが重なり、自分を『社会不適合者』だと思い込む。結果、働くのがつらくなってしまいます。しかし、そのつらさは、自分に合う働き方を見つけさえすれば、かなり楽になるのです」

 モカさんは「したくない仕事」で週5日出勤することは、「人の体に合ってない」と考えているという。

 「自分自身が鬱病(うつびょう)の時には気づけなかったけど、人生は楽しむためにあるはずです。最低限の生活費を得たら、したいことをすればいい。無理して働くと心の声が聞こえなくなり、自分がしたいことすら分からなくなってしまいます。これで良いはずがないのです」

2017年11月から月1回の無料勉強会を始めた=モカさん提供

2017年11月から月1回の無料勉強会を始めた=モカさん提供

「『貢献』の気持ち連鎖して」

 モカさんが具体的な解決策として提示するのが、「仕事が多く、自由なスタイルで働きやすい」という「デザイン&プログラミング」のスキルを得ることだ。モカさんは、IT業界は「社長に柔軟な人が多い」ことも利点に上げる。

 勉強会は毎回、定員上限の50人が集まる。参加費を無料にしているのがモカ流だ。

 「厳しい世の中ですから、損得でコミュニケーションを取るのは仕方がない面がある。ですが、してあげたいという一方的な気持ちでコミュニケーションを取り、実行してもいいじゃないですか」

 「困っていたら助けてあげる。助けられたら、いつか困っている人を助けてあげる。『貢献』の気持ちが連鎖していけばうれしいです」

無料勉強会では話し始めると自然に力が入る=モカさん提供

無料勉強会では話し始めると自然に力が入る=モカさん提供

「次の最期、温かい心で満たしていたい」

 参加者の一人は「モカさんの優しさが満ち溢(あふ)れる学習会だった。(中略)こういう人になりたいと思った」との感想を寄せた。

 「確かにきれいごとを言っていますよね。ですが、お金とか地位とか名誉とかは、あの世には持っていけません。最期の瞬間に思い出すのは、人とのつながりや心温まるできごとだと思うのです」

 「マンション屋上から飛び降りたときは、孤独で寂しい思いを抱えていました。だから、次の最期の瞬間は、温かい心で自分を満たしていたい。そのためにも、自分のために生きるより、他の人のために役立つことをしたいですね」

自宅マンションで相談者と話し合う。「他の人のために役立つこと」を実践している=高野真吾撮影

自宅マンションで相談者と話し合う。「他の人のために役立つこと」を実践している=高野真吾撮影

クラブ店長「独特の発想力すごい」

 マンション飛び降りの前からモカさんと付き合いのある、女装バー「女の子クラブ」店長のくりこママ(33)は、モカさんの変化を実感している。

 5年ほど前に出会った時から、「独特の発想力はすごかった」と評価する。

 できたばかりの女の子クラブを盛り上げるため、スクール水着の女装大会を開き、女装した男性同士のカップリングイベントを開いた。そもそもスタッフがメイクし、衣装を貸し出す「女の子クラブ」のコンセプト自体、モカさんの発案だ。

 それに加え、飛び降りからの生還を果たしたこの2年は、「ぐっとコミュニケーションが取りやすくなった」。余裕ができ「最近、どうなの?」と気を遣って聞いてくる機会が増えたという。

 そんなモカさんに、くりこさんは「自由にし、幸せになって欲しい」との言葉をかける。

「女の子クラブ」でくりこママ(右)と談笑する=高野真吾撮影

「女の子クラブ」でくりこママ(右)と談笑する=高野真吾撮影

「私らしく生きる」

 「今後のことは、特に決めていません。悩み相談はできる限り受け、無料の勉強会も続けるつもりです。あまり自分の時間はないけど、それでも、もう自分を見失うことはありません。マンガを書く時間も取りたいですね。LGBTに関するニュースを、漫画化して発表することをしてもいいかもしれません」

 「マルチに活躍する? うーん、ちょっと違いますかね。単に私らしく生きるということです」

行政なども、複数の相談窓口を設けています

・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト)
http://jssc.ncnp.go.jp/soudan.php
・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト)
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/06112210.htm
 

女装バー経営者が描く「人生を救う」マンガ 飛び降り…奇跡の生還
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