連載
#4 ポスド苦日記
気がつけばエゴサーチ…ポスドクの副業事情「先生って呼ばれたい!」
教授でも准教授でもないポスドクだって「先生」って呼ばれたい! ポスドクの欲望と寂しい懐を満たす副業って?

ポスドク、ときどき先生
「先生」って呼ばれるの、少し憧れます。大学や研究所の教授・准教授・助教の方々は「先生」という敬称で呼ばれていますが、ポスドクは「先生」ではありません。
受信したメールの宛名や講演会のプログラムに「◯◯先生、△△先生、ポス・ドクえもんさん」と並んでいるのを目にすると、偉い研究者のみに許された称号、「先生」が無性に羨ましくなります。
「先生」って呼ばれたい。広瀬すずさんに「先生」って呼ばれたい。今回はそんなポスドクの「先生」欲を満たす秘密の(?)お仕事の話をしましょう。
ポスドクの寂しい懐事情?
ポスドクの年収は場合によりけりですが、研究分野によってはポスドクを含む任期制研究者の40%が年収400万円を下回るという統計もあります。

年収400万円以下が40%という寂しい懐事情。一方、年収800万超えもいるのが驚き。自分をポスドクだと思いこんでいる石油王でしょうか。 出典:日本学術会議 基礎医学委員会 2011年「生命系における博士研究員(ポスドク)並びに任期制助教及び任期制助手等の現状と課題」
むしろ任期の期限が決まっているという立場から、体感としては数字以上に寂しい懐事情になっています。実はそんなポスドクの懐を暖める副業があるのです。

ポスドクのアルバイト?=非常勤講師
※1) 雇用契約によって非常勤講師のコマ数に制限があり、またそもそも副業が不可の場合もあります。

ただし、大都市圏では大学が多いため非常勤講師の職探しにはあまり苦労しないのですが、地方ではそうもいかないという事情もあります。
講義1コマあたりの給料はそれほど多額ではなく、90分の講義を行って1万円から1万5千円程度です。事前の準備やレポートの採点などを加味すると、実質的には時給1千円程度と、給料の点ではアルバイトに近い感覚です。
余談ですが、私は非常勤講師の仕事に行くことを「バイトに行く」と言います。お小遣い制を採用している私の家では、この「バイト代」はそのままお小遣いになります。

ポスドクでも”先生”
「立場が人を育てる」という言葉がありますが、「先生」と呼ばれると「先生」らしくあろうという気持ちが生まれ、ちょっと背筋を伸ばしてしまいます。
実際のところ、私たちポスドクは学問の最前線で研究を行っている身であり、さらに学生たちとも比較的年齢が近いため、学問の世界の伝道師としてはうってつけの存在だと密かに思っています。
ポスドク業との両立は大変ですが、少しでも面白い講義にすべく、準備には自然に熱が入ります。
エゴサーチにご用心!
自分の研究ネタを盛り込んだ回の後などは「どうだった?」「面白かった?」と一人ひとり聞いて回りたいくらいです。
そんなもどかしい気持ちから、講義後はついついツイッターでエゴサーチ(※2)をしてしまいます。今の大学生世代はネットリテラシーがしっかりしているので、名前や大学を明かさず、講義の感想もそれとわからないようにつぶやいています。
※2) インターネット上で、自分の本名や関連するものについて検索し、その評価を確認すること。

一人受講者を特定できると、最終的にはそこから芋づる式に発見できます。そんな労力をかけて自ら感想を探しておきながら、批判的なコメントに出くわし凹むこともあります。(批判的な感想はちゃんと真摯に受け止めています。)
いつか本当の先生に
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「ポスド苦日記」は基本的に毎週月曜日に更新します。
