連載
#3 ポスド苦日記
ポスドク悩ます「文章術」フォントは明朝体?研究費のため…四苦八苦
小学生を悩ませる「作文」。作文が苦手だから理系を選択した、という人はいませんか?でも理系の研究者って意外と「文筆家」なんです。

読書感想文が苦手だった幼少期
根っからの理系人間である私は、作文が苦手です。
本といえば漫画と少しのSF小説しか読まない十代を過ごしたことが災いしてか、書きたいことがどうにも文章の体を成してくれません。

成長するにつれ、後書きを自己流にアレンジする(ほぼパクる)という合理的な解決策を編み出したことで読書感想文の問題は無事克服しました。
しかし、理系の道まっしぐらで、行き着く果てで研究者になった今、実は再び作文に四苦八苦する日々を送っているのです。
理系研究者って意外と文筆家
まず、論文を書くという仕事があります。
どんなに素晴らしい研究成果でも、論文にまとめて出版しないと業績として認めてもらえないので、論文を書くことはもっとも重要な仕事です。

論文はどんな研究をして何がわかったかという事実を端的に書くものなので、読書感想文のようにゼロから文章を捻り出す必要が無いことが救いです。
さらに、研究をして論文を書くより以前には、研究費を獲得するため申請書を書くという仕事があります。
お金がないと研究ができず、論文を書くこともできないため、時には論文と同じくらいの時間をかけてよい申請書を書き上げます。
ポスドクにはもう一つ、職を得るための応募書類書きもあります(第1回参照)。
研究費をめぐる噂に右往左往
私が属する自然科学の研究分野においては、文部科学省とその外郭団体の日本学術振興会が行っている科学研究助成事業が提供する研究費、通称「科研費」に応募することが一般的です。
科研費の応募締め切りがある10月は、例年その申請書書きに費やされることになります。
しかし、審査員は事前に公表されず、合否を決めたポイントも明かされないため、審査を巡る憶測や怪しい噂が飛び交うことになります。
例えば、「審査員は多くの申請書を読むため、ゴシック体より明朝体のほうが目が疲れないので心象がいい」「一つの申請書を読む時間は10分程度のため、文章より図をふんだんに使ったほうがいい」などです。
「過去に採択された研究課題名の文字数の統計から、もっとも採択されやすい文字数は○○文字!」「採択された研究課題名でもっとも多く使われている単語は△△!」というような、研究者目線での分析を試みた話を聞いたこともあります。

「研究費が当たる」まるでくじ引き?
申請書の内容をもとに合否が判断されるものの、どんなに自信がある申請書でも不採択になることがある一方で、ダメで元々という気持ちで応募した申請書が採択されることもあります。
運任せのくじ引きのような表現には、この結果の読めないもどかしい気持ちが込められている気がします。

書き仕事に四苦八苦
今回はそんな人生訓めいた話だったということで、また次回お会いしましょう。ちゃんちゃん。(作文力の無さを晒す無理矢理な締め。)
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「ポスド苦日記」は基本的に毎週月曜日に更新します。
