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#3 ポスド苦日記

ポスドク悩ます「文章術」フォントは明朝体?研究費のため…四苦八苦

小学生を悩ませる「作文」。作文が苦手だから理系を選択した、という人はいませんか?でも理系の研究者って意外と「文筆家」なんです。

研究者になった今も、作文に苦しんでいます
研究者になった今も、作文に苦しんでいます

目次

 理系の研究者といえば実験や計算に明け暮れているように感じますが、研究者の「文筆家」な一面をご存じですか? 研究費の申請のために、「偉い人」の目にとまる丁寧な文章をしたためるのも大事な仕事なのです。「フォントは明朝体がいいらしいぞ…」「それぞれの持ち時間は10分!」など、研究費をゲットしたい気持ちがいっぱいな研究者の間では、怪しい噂も飛び交います。研究者を悩ませる「作文サバイバル」の実情についてつづります。
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【連載】ポスド苦日記
第1回:ポスドクはつらいよ 結婚式で親族ドン引き「え…無職なの?」
第2回:ポスドクの全然かっこよくない「極貧」海外研究 将来のため…箔づけ

読書感想文が苦手だった幼少期

 こんにちは、ポスドク研究者のポス・ドクえもんです。

 根っからの理系人間である私は、作文が苦手です。
 
 本といえば漫画と少しのSF小説しか読まない十代を過ごしたことが災いしてか、書きたいことがどうにも文章の体を成してくれません。
小学生の頃、よく宿題で出ていた「読書感想文」。苦手な人も多かったのでは
小学生の頃、よく宿題で出ていた「読書感想文」。苦手な人も多かったのでは
 思い返せば、物心がついた頃にはもう読書感想文の宿題に苦しめられる日々を送っていたような気がします。放課後に居残りさせられ、締め切りがとうに過ぎた読書感想文を完成させるまで帰らせてもらえなかったことは、軽いトラウマです。

 成長するにつれ、後書きを自己流にアレンジする(ほぼパクる)という合理的な解決策を編み出したことで読書感想文の問題は無事克服しました。

 しかし、理系の道まっしぐらで、行き着く果てで研究者になった今、実は再び作文に四苦八苦する日々を送っているのです。

理系研究者って意外と文筆家

 理系研究者の仕事というと、実験や野外調査など、とにかく研究漬けのようなイメージを抱く方が多いかもしれません。ところが、実際には勤務時間の半分くらいは書き仕事をしています。
 
 まず、論文を書くという仕事があります。
 
 どんなに素晴らしい研究成果でも、論文にまとめて出版しないと業績として認めてもらえないので、論文を書くことはもっとも重要な仕事です。
研究者になった今も、作文に苦しんでいます
研究者になった今も、作文に苦しんでいます
 私の場合、論文をまとめる作業に入った際には、一月程度の間、文章を書いては消し、書いては消しという生活になります。

 論文はどんな研究をして何がわかったかという事実を端的に書くものなので、読書感想文のようにゼロから文章を捻り出す必要が無いことが救いです。
 
 さらに、研究をして論文を書くより以前には、研究費を獲得するため申請書を書くという仕事があります。

 お金がないと研究ができず、論文を書くこともできないため、時には論文と同じくらいの時間をかけてよい申請書を書き上げます。

 ポスドクにはもう一つ、職を得るための応募書類書きもあります(第1回参照)。

研究費をめぐる噂に右往左往

 研究費をくれる相手は、研究分野によって国だったり民間企業だったり様々です。

 私が属する自然科学の研究分野においては、文部科学省とその外郭団体の日本学術振興会が行っている科学研究助成事業が提供する研究費、通称「科研費」に応募することが一般的です。

 科研費の応募締め切りがある10月は、例年その申請書書きに費やされることになります。
 この科研費の申請書類は教授クラスのシニアの研究者によって採点され、その合否が決まります。

 しかし、審査員は事前に公表されず、合否を決めたポイントも明かされないため、審査を巡る憶測怪しい噂が飛び交うことになります。

 例えば、「審査員は多くの申請書を読むため、ゴシック体より明朝体のほうが目が疲れないので心象がいい」「一つの申請書を読む時間は10分程度のため、文章より図をふんだんに使ったほうがいい」などです。

 「過去に採択された研究課題名の文字数の統計から、もっとも採択されやすい文字数は○○文字!」「採択された研究課題名でもっとも多く使われている単語は△△!」というような、研究者目線での分析を試みた話を聞いたこともあります。
 
「ゴシック体より明朝体のほうがいい」「○○文字の課題名が採択されやすい」といった噂に右往左往
「ゴシック体より明朝体のほうがいい」「○○文字の課題名が採択されやすい」といった噂に右往左往

「研究費が当たる」まるでくじ引き?

 私たちの業界用語で、申請がめでたく採択されて研究費を獲得することを、「研究費が当たる」と言います。

 申請書の内容をもとに合否が判断されるものの、どんなに自信がある申請書でも不採択になることがある一方で、ダメで元々という気持ちで応募した申請書が採択されることもあります。

 運任せのくじ引きのような表現には、この結果の読めないもどかしい気持ちが込められている気がします。
「研究費が当たる」と呼ぶことも、もどかしい状況が表れているのかも
「研究費が当たる」と呼ぶことも、もどかしい状況が表れているのかも

書き仕事に四苦八苦

 書き仕事に苦労している現状は、読書感想文をサボった少年時代のツケが回ってきているのかもしれません。

 今回はそんな人生訓めいた話だったということで、また次回お会いしましょう。ちゃんちゃん。(作文力の無さを晒す無理矢理な締め。)

    ◇

 「ポスド苦日記」は基本的に毎週月曜日に更新します。

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