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2017年06月30日

「恋愛と選挙は、よく似ている」木村草太さんに聞く、騙されない投票

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恋愛と選挙は似ている?「嘘をつくこととか誇張をするところ…」憲法学者、木村草太さんがバッサリ

恋愛と選挙は似ている?「嘘をつくこととか誇張をするところ…」憲法学者、木村草太さんがバッサリ

 物語も佳境に入ってきた「恋も選挙も情報戦」。本当に恋愛と選挙は似ているの?どこが違う?恋愛でも選挙でも騙されない方法ってあるの?今回は、憲法学者で首都大学東京の木村草太教授に教えてもらいました。


憲法学者で首都大学東京の木村草太教授

憲法学者で首都大学東京の木村草太教授

出典: 朝日新聞

政治に関わるために必要な知識が多い

―― 都議選が目前に迫り、若者に選挙に興味を持ってほしいと思って、「恋も選挙も情報戦」というコンテンツ制作を始めました。若者は、投票に興味がある一方で、選挙に関する知識が乏しいという調査結果もあります。
 
 「単純に、政党や争点などの政治に関わるために必要な知識が多いからだと思います。当たり前ですけど、選挙というか政治についての知識の量と、新聞を購読しているかどうかというのは相関関係があると思いますけれども、大学生は非常に新聞を読む人が少ないですね。ですから当然知識も少ない」

政治経済という科目自体が重視されない

— ――それでも私たちは、興味のない人にも選挙について知ってもらおうと試行錯誤しています。
 
「話は複層的だと思いますけれども、まず興味のない人に対して教えていくというような、一定の知識を教育していく局面に限っていうと、まずその側面が必要です。しかし、生々しい争点について適切に教えるというようなことが出来ていないと思います」

「また、その手の知識は少なくとも大学生になるまでの間には、さほど重要視されません。日本の大学の場合、いわゆる政治経済という科目は、必修ではなく、文系の学生でも多くの場合は歴史科目で受験します。政治経済という科目自体が高校生から大学生になるまでの年齢の人にとって重視されないものですね」

投票箱の前で求められるのは光源氏じゃない

―― でも18歳になって選挙権を持ち、投票に行くことになり、突然必要な知識になってしまう
 
「そうです。高校生というのは皆さんも覚えていると思いますけども、古文を読んだりですね、数学の高度な三角関数を解いたり、微分積分をやったり、世界史や日本史の古今東西の歴史を勉強するのが大学入試で、高校生の間にやる勉強っていうのはそういう勉強なわけです」

「一方で、投票箱の前で求められるのは、光源氏の正室の名前とか、ムガル帝国の興亡の歴史ではなくて、生々しい国民年金のありかたとかですね、日本のGDPとか、マクロ経済政策のありかたとか、そういうことが問われるわけです」

言っていることの検証

―― ただ、これまで新聞を読んでこなかった若い人が突然読んでも分からないかもしれません。木村先生が考えるオススメの方法はありますか?
 
「若い人に伝えていくときに政策の内容を正確に伝えることが必要だと思いますね。つまり、候補者や有識者の言っていることの検証です」

「今の選挙では『嘘でも票になればいい』と考える候補者もいますから、各候補者の言っていることを中立的に紹介するだけだと、嘘をつく候補者に有利になります」

「なので、そうならないようにする必要があります。テレビやメディアで発言する有識者の発言も、特定の意図・政治的な傾向をもって一定の方向に導こうとするものがあり、検証の必要な虚偽の情報を流すということもなくはないでしょう」

「広い意味でのフェイクニュース的なものですけども、そういうことが行われているので、中立的に各候補者の政策をわかりやすく伝えるというのは、正しくないやり方の可能性があると私は見ています」

情報の裏取りは大学生が有利なわけ

―― 私たちができる具体的な検証方法はありますか
 
「特別なことは必要がないと思います。争点になっている政策について各候補が言っていることの裏をとるという作業をすればいいんだと思います。誰が正しいことを言っているかを調べてみるということです」

「大学生は、この分野では有利な面もあります。というのは、政治的な主張の検証というのには時間とコストが非常にかかります」

「メディアや学者も、それぞれ仕事があり、嘘も含めて深く検証するには限界があります。時間的に使える資源が非常に少ないので、時間をかけないと検証できないタイプのものごとについては、大学生がメディアや有識者が扱いきれない争点について、的を絞って時間をかけて検証することが有意義な場合もあるでしょう」

「例えば、東京都にもたくさん課題があって、全てに興味を持つことは無理だと思いますけれども、興味がある政策課題を一つぐらいは見つけて、東京都の議事録くらいは読んでおくのも良いでしょう」

「政治に参加するための政治経済に関わる概念の教育は、まだまだ行き届いてないと思います。多分、日本の大学生というのは、ボールとストライクがわからずに野球をやらせられているようなもんだと私は思っています」

「政治の言葉が難しいと言われても、例えばストライクの概念は、ストライクの言葉より柔らかくならないですね。それは、ストライクという概念を教えないとダメでしょうね」

ネットの特徴は、その時点しか切り取らない

――その一方で、検証する方法をネットに求めた場合、ネットの嘘の情報を鵜呑みにしてしまうようなこともあると思います

「まさに生々しい具体的な人についての説明とか解説を割けないというのが大事です」

「今のネットの特徴というのは、その時点しか切り取らない形で情報がでるということです。

「例えば、小池百合子さんであれば、小池百合子さんの東京都知事である今の情報しか見られないわけですね。これは新聞もそうですけれども、過去にどんな発言をしていて、どんなことに関わってきた人なのかっていうことが見えにくいわけです」

「各党の候補者も基本的には過去のことを詮索されるのは嫌なので、自分のいいところしか書かないということになります」

「例えばですね、候補者にクリックというか矢印を当てるとその人の過去の発言や経歴がバッと出てどんな人か分かるとかですね、そういう時間軸がわかるような情報の発信というものが今ウェブ上では足りないと思います」
 

恋愛も選挙も嘘をつく!?

―― 26日から、発信している恋愛と選挙を重ねたコンテンツなんですが、先生は、恋愛と選挙は似ていると思いますか?
 
「よく似ていると思います。似ているのは、当事者ができるだけ自分を良く見せようとして、嘘をつくこととか誇張をするところで、かつ、それにまつわる言説が、生々しい実態をしばしば見落とすという形での言説になるというのがよく似ていると思います」

「例えば、彼氏や彼女と一泊旅行にいくという事態を考えてみると、とても楽しいものとして描かれることが多くて、実際にそうだと思いますが、そこに至るまでには、いろんな問題があります」

「つまり、計画段階でのトラブルとか、日常的な食事の所作でイラッとするとかですね、そういうことを乗り越えながら、二人の関係というのは深まっていくわけです」

「ただ、恋愛を語るときに、例えば食事に関するマナーに関する感覚がずれていて、それをどうしたのか、というのはあまり語られないわけですね。あまり語っても面白くないからなんですけれど、恋愛というのは、そういうものですよね」

「でも、恋愛をキラキラしたものとして描きすぎると、実際の生々しい人間関係を描けないと思います」

自分の好き嫌いで投票してはいけない

―― ここは違うという点は
 
「恋愛というのは、カップルの中で完結するものですけれども、政治というのは、公共のために行うものなので、政治をやるときに、自分の好き嫌いでやってはいけないというのが一番の違いです」

「今回の都議選でいうと、東京都のためになるかどうかで投票先を決めるということですね」
 
「『選挙や政治が身近に感じられない』とか、『どの候補者に投票しても、自分の損得という観点からは同じ』といった言葉に見られるように、政治への参加が、自分の利益のためのものだと考えている人が多いと思います」

「本来は、自分の得になろうがなるまいが、日本あるいは東京都の公共性のためにいいのであれば、その政策を支持するし、そうでないならば支持しないというのが正しい政治的態度であって、そういう風な教え方になっていないというのが問題なんじゃないでしょうか」

「国民や住民が、公共性を大事にする価値観を持たないと、国家や公共団体は持続できませんよ、ということを教える必要がありますね」
 

木村草太(きむら・そうた) 首都大学東京教授(憲法学)

1980年生まれ。東京大学法学部卒業後、同大学助手、首都大学東京准教授を経て現職。専門は憲法学。著書に『平等なき平等条項論』(東京大学出版会)、『憲法の急所』(羽鳥書店)、『キヨミズ准教授の法学入門』(星海社新書)、『憲法の創造力』(NHK新書)、『テレビが伝えない憲法の話』(PHP新書)、最新刊に『集団的自衛権はなぜ違憲なのか』(晶文社)、共著に『未完の憲法』(潮出版社)、『憲法の条件――戦後70年から考える』(NHK出版新書)、『検証・安保法案――どこが憲法違反か』(有斐閣)など。趣味は音楽鑑賞と将棋観戦。棋譜並べの際には、菱湖書・竹風作の彫埋駒を使用。


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