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IT・科学

原発危機に顔出しツイート「誤り放置できない」 早野龍五さんの覚悟

2008年からツイッターでの発信を続けている東京大学大学院理学系研究科教授の早野龍五さん(@hayano)=2009年3月18日
2008年からツイッターでの発信を続けている東京大学大学院理学系研究科教授の早野龍五さん(@hayano)=2009年3月18日 出典: 朝日新聞

目次

 ツイッター誕生から10年。ソーシャルメディアは、専門家が直接、発信するツールとしても定着した。2011年3月の東日本大震災。原発事故後の混乱の中で、放射線量などのデータを分析し、発信したのが、東京大学大学院理学系研究科教授の早野龍五教授(@hayano)だ。その140文字を糸井重里さんは「行く先を照らす信頼すべき指針」と評した。リアルな危機に、科学者としてつぶやく意味は? スイス・ジュネーブからメール取材に応じてもらった。

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「生身の個人がツイート、僕にとって大事なもの」

――ツイッターを始めたのはなぜだったのですか。
 「2008年2月からHP更新が面倒なので、その代替として始めました。また学生さんに物理の教授は何を考え、どんな日常を送っているかを垣間見てもらうためにです」

 「原発事故後も、物理の話題や日常生活のツイートは継続しました。歌舞伎、写真、食べ物など・・・企業や機関のアカウントと違って、生身の個人がツイートしているというスタイルは、僕にとって大事なものですから」

相馬市役所であった早野教授の講義=2011年11月29日
相馬市役所であった早野教授の講義=2011年11月29日 出典: 朝日新聞

「社会的責任も感じざるを得ない状況に」

――震災後、科学者としてどういう思いで東京電力福島第一原発事故について発信されていましたか。
 「こういったら不謹慎に聞こえるかもしれませんが、(最初は)起きていることをじぶんで確認したいという好奇心からでした」

 「どんなデータがあるのか、何が起きているのかをグラフや地図をまじえてツイートし始めたところ、数日でフォロワーが3千弱から15万強に急増しました」

 「実名で写真をアイコンにし、勤務先も明らかにしてツイートしていましたから多くのかたに注目されたことに社会的に責任も感じざるをえない状況でした」

「実際の問題、サイバースペースにはない」

――どんな点に心がけていましたか?
 「誤りは放置できない。一方、誤ったツイートに直接返事をすると個人攻撃合戦になってしまう。そのバランスは常に難しいと感じています。(今でも続いていますが)自分が口汚くののしられるのを読むのは精神的に厳しいですね」

 「ツイッター上の『勝ち負け』を気にされる方も多いですが、実際の問題は福島の現場にあって、サイバースペースにはないということを肝に銘じ、じっと耐える日が多かったです」

「新聞記事よりは元のリリースをツイート」

 「言葉遣いは大事ですね。ツイッターは文字制限が厳しいので、ぶっきらぼうにならざるを得ないのですが、それでも一定の丁寧さを保つことを心がけています」

 「ツイートでは科学論文で引用文献を示すのと同様、元のデータがどこにあるかを常に示すことを心がけました」

 「プレスリリースが公開されている場合は、それに基づいて書かれた新聞記事よりは元のリリースをツイートするなど。またデータをグラフや地図などビジュアルなものに加工してツイートすることも心がけました」

早野龍五さんのツイッター(@hayano)
早野龍五さんのツイッター(@hayano) 出典:https://twitter.com/hayano

「発信よりも受信に比重を」

――リアルタイムの危機に対して、研究者の立場からリアルタイムで発信するのはどんな利点がありましたか。
 「利点は多くの方のツイートを読むことができたことです。これは発信することの何倍も大事。次に何をするべきかを考えるヒントをたくさん得ました」

 「利点の第二は、多くの方とリアルに知り合えたことです。それで乳幼児用のホールボディーカウンターBABYSCANの開発チームができた。糸井重里さんとの対談本『知ろうとすること。』も、ツイッターから始まったことです」

――どんな課題がありましたか。
 「もちろん時々間違えること。これは避けられない」

――ツイッターという手法についてはあらためてどうお考えですか。
 「ほとんどの方は読むだけ、ツイートなさいません。だから積極的にツイートする方の意見だけ見て、それが世論だと思うと実態はかけ離れている。そのことを知った上で使えば速報性、拡散力の点できわめて優れたソーシャルメディアです」

 「発信よりも受信にして多くの意見を読むことに比重を置くのがポイントだと思います」

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