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フォロー外しは中立? 朝日新聞の場合「同じことは考えていません」

NHKの公式ツイッターが、外部のアカウントのフォローを解除した。中立って何だろう?
NHKの公式ツイッターが、外部のアカウントのフォローを解除した。中立って何だろう?

目次

 NHKの公式ツイッターが、外部のアカウントのフォローを解除した。公平公正、中立性の担保などが理由だという。朝日新聞の場合はどうなのだろうか。藤谷健・ソーシャルメディアエディターのところに、「ちょっと教えて下さい!」と押しかけた。「つながることで新たな視点も出来る」、「SNSで失敗しても、命まで取られない」という。(朝日新聞文化くらし報道部記者・後藤洋平)

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【中立ってなんだ?3】スイスの守るポリシー
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【中立ってなんだ?5】朝日新聞どう考える?

「色んな声を聞くというのは記者として普通」

――NHKのフォロー外しですが、ひとごとではないと感じました。我が社の記者も同じような指示が出る可能性は?
 「朝日新聞のアカウントで同じことをすることはまったく考えていません。『フォローとかリツイートは必ずしも賛意ではない』ということを書いている記者もいます。僕は必ずしも必要とは思っていませんが、組織としてはある種のエクスキューズにもなりますね」

 「しかし、そもそも色んな声を聞くというのは記者として普通です。例えば個人としても記者としても特定秘密保護法に反対していても、賛成の人に取材をするのは当然じゃないですか。それと同じことです」

「朝日新聞のアカウントで同じことをすることはまったく考えていません」(藤谷健・ソーシャルメディアエディター) ※画像はイメージです
「朝日新聞のアカウントで同じことをすることはまったく考えていません」(藤谷健・ソーシャルメディアエディター) ※画像はイメージです 出典:https://pixta.jp/

「若い記者の多くは学生時代に親しんでいる」

――NHK広報局の元「1号さん」は、「みんな怒られるのが嫌だから、ネガティブになってしまう」というようなことを言っていました。
 「まあ『余計なことをすると上司から怒られるから、何もしない方がいい』っていう考えはウチにもあるでしょうね。地方の総局を回って話を聞くと、若い記者の多くは学生時代に親しんでいる」

 「いま記者として発信したいけれど、やりにくいという話も聞きました。もし炎上なんかすると、怒られると思うでしょうしね」

朝日新聞のツイッターアカウントの一部
朝日新聞のツイッターアカウントの一部 出典:http://www.asahi.com/sns/account/

「フォローが中立かどうか、違う次元の世界」

――それでも、多くの記者がツイッターをしているのは日本では朝日新聞ですよね。私も含めて。藤谷さんは一応とりまとめというか、そういう立場にいるので、それぞれの記者たちがどう「中立」というか、そういうのを保つべきだと思いますか?
 「その中立っていう意味、僕よく分からないんですけれども。中立というのは、一概に言えないというか、一言では言えないですよね。少なくともツイッターでフォローすること、しないことが中立かどうかというのは、全然違う次元の世界のことを話しているようにも思える」

 「一昨年の12月にBBCでソーシャルメディアの研修を受けると、ルールは一つだけでした。つまり『BBCの公平性、公正性、中立性に疑念を抱かせるようなことはしてはいけない』という。我が社に置き換えれば、『あなたの発言によって、朝日新聞社の取材の姿勢とか、メディアとしての誇りとかを疑われるようなことはやめてください』ということです」

後藤記者のアカウント。ハッキリ言って全然使いこなせていない。
後藤記者のアカウント。ハッキリ言って全然使いこなせていない。 出典:@Yohei_Goto

「失敗しても命までは取られませんから」

――でも、その判断って、すごく難しくないですか?
 「難しい。ただ、ひとつ言えるのは、言葉遣いは慎重にした方がいいとは言えますね。あとは、誤解されるような言い回しをしないことも大事。残念ながら、何でもかんでもディスる人や、揚げ足を取りたい人はいます。そういう人に、わざわざネタを提供しなくてもいいと思うのです」

 「ただ、失敗を重ねて学んでいくということもあります。ソーシャルで失敗しても命までは取られませんから、失敗も程度によりますが、それでもソーシャルの発信はやらないよりはやった方がいいとは思っています」

「失敗を重ねて学んでいくということもあります」(藤谷健・朝日新聞ソーシャルメディアエディター) ※画像はイメージです
「失敗を重ねて学んでいくということもあります」(藤谷健・朝日新聞ソーシャルメディアエディター) ※画像はイメージです 出典:https://pixta.jp/

「フォローは色んな人とつながっている感が出る」

――最初に戻りますが、ウチの記者はどんなアカウントでもフォローしてもいい?
 「いいです。双方向性でつながって、ファンが増えたり、『こういうことを聞いてほしい』というのがあったり」

 「以前、大手情報企業から個人情報が漏れた時に、経済部のアカウントを若手中堅が熱心にやっていて、ツイッターで聞いて欲しいことを募集したんです。そこで『情報が漏れた企業は結局被害者なのか、加害者なのか?』という問いが投げかけられた。実際に記者が質問し、それまで被害者としての応対一辺倒だった社長が、加害者であることも認めて謝罪しました」

 「トンネルの崩落事故でも同様で、記者が『なぜ事故が起きたのか』『誰に責任があるのか』『社長は辞めるのか』という質問に走るところを、ツイッターから『ほかに同じ工法のトンネルはあるのか』という質問がきた。他に危ないところはないのかという、まさにユーザー視点なんです」

 「メディア視点ではなく。そこは強いと思いますよね。そういう使い方ができるのがソーシャルメディアの強さならば、色んな人にフォローしてもらった方がいいし、フォローは色んな人とつながっている感が出るしね」

ツイッターを活用した取材についての記事
ツイッターを活用した取材についての記事 出典: 2014年8月30日:(記者有論)取材の新手法 ツイッターで新たな発想 下山祐治:朝日新聞紙面から

「やっていない人はもっと分からない」

――確固たるポリシーを記者が持って、信用を失わないような発言であれば何をしてもいいということ?
 「基本的にはそうですね。しかし、ツイッターで一般公開の設定でやっているということは、忘れないようにした方がいいですね。最近は『銀座の歩行者天国で、スピーカーを持って話しているのと同じですよ』と説明しています」

 「自分のフォロワーしか見ていないと思ってやっていても、実際は検索もされるし、いったん拡散すればすごいことになる。そう認識したうえで、その発言、できますか? と」

藤谷ソーシャルメディア・エディターのツイッターアカウント
藤谷ソーシャルメディア・エディターのツイッターアカウント 出典:@TFujitani_Asahi

 「だからガイドラインは作っています。そこのあたりを分かっていれば記者個人の考えを示してもいい。たとえば何かを批判するのもいいけれど、根拠は示してもらわないと」

 「リツイートって、いわば情報のバケツリレーでしょう。管理する側も、自分には今までにない経験なので、どう反応するのが正しいのかは分からない。ソーシャルメディアをやっている人でもそうなのですから、やっていない人はもっと分からないですよね。ウチの社も含め、管理する側のソーシャルメディアに対する理解やリテラシーこそ必要だと感じています」

 「中立ってなんだ」は5月7日発行の朝日新聞夕刊紙面(東京本社版)「ココハツ」と連動して配信しました。

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