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猛暑に豪雨、痛感する気候変動 各党の政策アンケートから見えたこと

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ことしも続く酷暑。年々、夏の暑さが厳しくなり、全国各地で水害が起こり、気候変動の悪影響を感じる人は増えています。読者から「候補者の気候変動対策への考え方を調べてほしい」という意見が寄せられ、朝日新聞では主要10政党にアンケートを行いました。アンケートから見えてきたものを、取材した記者が振り返ります。(朝日新聞記者・福地慶太郎)
日本の有権者の3人に1人は、次の選挙で気候変動対策で考えが近い候補者に投票したいと考えている――。
そんな意識調査の結果を今年6月に朝日新聞紙面で報じると、読者から多くの声をいただきました。
「気候変動が選挙での争点に十分なり得ることが示された」「重要な視点を取り上げた」
たくさんの励ましもいただき、反響の大きさに驚くと同時に、気候変動に対する危機感の強さを感じました。
調査した一般社団法人「ジャパン・クライメート・アライアンス」によると、自分の生活で気候変動の悪影響を感じる人は8割を超えています。
そのうち7割超は、この2~3年で悪影響が大きくなっていると感じていました。
気候変動が生活に関わる問題とみなされ、選挙の投票意識に直結し始めているとみられるといいます。
では、気候変動対策で投票先を選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。
6月の記事では、「候補者と直接話す」というポイントを紹介しましたが、ハードルが高いとして、読者からは「メディアが調査して提供して」という要望も寄せられました。
そこで、参院選の公示が迫った6月末、主要10政党に気候変動対策に関する政策アンケートを行いました。
温室効果ガスの排出削減の必要性に対する考え方のほか、再生可能エネルギーと原発、石炭火力の活用方針などを尋ねました。
温室効果ガスの排出削減を積極的に進める必要があるかを尋ねたところ、回答を得た9政党のうち、参政党だけが「必要はない」と答えました。
その理由について、地球温暖化は「科学的な議論の余地がある」とし、「偏りのないエビデンスに基づく科学的な検証が必要」と主張しました。
世界中の科学者が協力する国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は2023年に公表した報告書で、人間が出す温室効果ガスが地球温暖化を引き起こしてきたことは「疑う余地がない」と断言しています。
残りの8党はいずれも「積極的に進める必要がある」と回答しています。
そのほかの回答も含め、アンケートの結果から感じたのは、気候変動対策をめぐる「政治の自己矛盾」です。
たとえば、ガソリン価格を抑えるための「ガソリン補助金」。ガソリン車に乗る人たちの出費を抑え、物流コストの削減も期待されます。
一方で、ガソリン車の利用を促し、二酸化炭素の排出量を増やしてしまいます。
補助金を今後も継続すべきか、廃止すべきかを尋ねたところ、5党が「廃止」、3党が「継続」、1党は「二択の選択は困難」と答えました。
廃止を求めた党のなかでも、別の方法でガソリン価格を抑えるべきだという意見が目立ちました。
同じように、再生エネルギーを積極的に活用する方針を掲げているのに、再エネ普及のために電気料金に上乗せしている「再エネ賦課金」は廃止を求める党もありました。家計への負担が大きいという理由でした。
こうした政治の自己矛盾が意味するのは、大量の温室効果ガスを排出してきた日本の社会構造を根本から変えないと、気候変動対策は進まないということではないでしょうか。
6月に開催された「気候変動と政治を考えるシンポジウム」では、自民・公明・立憲・国民・維新・共産・れいわ各党の国会議員が登壇し、200人ほどが参加しました。
ある登壇議員は、大手メディアの世論調査などでは物価高や社会保障、子育て支援に関心が集中し、環境問題への関心は低いと指摘しつつ、自身の党内でも環境問題に関する会議には「恥ずかしながら、参加人数があまり多くない」と吐露していました。
各党には、既存の枠組みにとらわれずに、新しい社会の将来像を練り上げて有権者に提示してほしいと感じました。