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IT・科学

英語教科書エレン先生、二次創作はOK? 「余計なことするな」炎上

90万ツイート以上をあつめて爆発的な人気者になった英語教科書のキャラクター「エレン先生」。ネット上では、キャラクターを真似した画像からきわどい姿の画像まであふれています。この「二次創作」が、騒動を呼んでいます。出版元の東京書籍はどう考えているのか。話を聞きました。

「エレン・ベーカー先生」を元にした問題ある二次創作の画像(画像にはモザイクをかけています)
「エレン・ベーカー先生」を元にした問題ある二次創作の画像(画像にはモザイクをかけています)

目次

90万ツイート以上をあつめて爆発的な人気者になった英語教科書のキャラクター「エレン先生」。ネット上では、キャラクターを真似した画像からきわどい姿の画像まであふれています。この「二次創作」が、騒動を呼んでいます。出版元の東京書籍はどう考えているのか。話を聞きました。

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著作権について問い合わせ→「余計なことするな」と炎上

発端は加工用の画像を配っているユーザーの投稿でした。

「教科書著作権協会に問い合わせたところ、利用許諾申請書の提出が必要という。使用料が発生する可能性が高いので、エレン先生の素材の配布を中止します」
とツイートした模様です。

これに対し、「余計なことするな」「節度守って使っていれば黙認されたのかもしれないのに」と批判が殺到したのです。炎上により、元の投稿は削除されたようです。

東京書籍「許諾申請お願いします」

とはいえ、節度を守った画像ばかりでもないのが現実。東京書籍は13日、自社のホームページ上で見解を発表しました。

まず、キャラクター設定について
「英語学習がますます重要性をもつ時代となる中、できるだけ多くの中学生の皆さんに、英語学習に意欲をもって取り組んでいただけるよう、これらのキャラクターを設定いたしました」
と説明したうえで、

「教材、図書、インターネット等でのキャラクターの使用をご希望の場合、許諾申請は教科書著作権協会(http://www.jactex.jp/)までお願いいたします。上記のキャラクター設定の趣旨から著しく逸脱すると見なさざるをえないケース等、許諾いたしかねる場合もありますことを、あらかじめご了承ください」
として、許諾申請を求めました。

東京書籍が発表した公式見解=同社ホームページから
東京書籍が発表した公式見解=同社ホームページから

公式見解に書けない願いがあった

公式見解をそのまま読めば、東京書籍が二次創作に実質的な「ノー」を突きつけた、とも言えそうです。でも本当にそうなの? 黙認したほうが、教科書のファンが増えるのでは? 法務担当部長の井澤貞行さんに聞きました。

――「なぜ見解を出したのですか?」
井澤さん「会社に『教科書のキャラクターにかんする性的な表現の画像があふれているのを放置していていいのか』と苦情が入っていることから、社会的責任を考え、動くことになりました」

――「二次創作については完全に禁止ですか? それとも黙認しますか」
井澤さん「教科書のキャラをとりあげていただけることはありがたいのです。未来の日本を支える子どもを育てるという教科書の特性を認識して頂けるとよいのですが」

とのことです。井澤さんは明言しなかったものの、おそらく二次創作については「黙認」のスタンスのようです。
ホームページで公表された見解も、許諾申請を求めていますが、趣旨から著しく逸脱しないケースについては申請がなくても実質的に許されることになりそうです。

ただ、いまのところ法的な対応までは検討していないとしていますが、「これ以上教科書の品質をおとしめることがあったり、ビジネスへの利用があったら、なんらかの対応も必要になるかも」とのことです。

記者としては、今回の問題は、二次創作や教科書著作権協会への問い合わせではなく、「教科書のキャラであることを考えると行きすぎだ」と会社から判断されるような画像があふれたことにあった、と言えると思います。こうした画像があふれることを防ぐのは難しい。でも、黙認しないとファンの自由な投稿も生まれにくくなる。……難しい問題だと思います。

多くのアニメファンでにぎわった昨年暮れのコミックマーケット=東京・有明の東京ビッグサイト
多くのアニメファンでにぎわった昨年暮れのコミックマーケット=東京・有明の東京ビッグサイト

法律家「黙認文化、前提でいいのでは」

法律的にはどのように整理できるのか。著作権問題に詳しい福井健策弁護士に聞きました。

――「今回、ネット上であふれた二次創作のエレン先生は、著作権法では違反になるのですか?」
福井弁護士「その可能性はあります。東京書籍とイラストレーターとの契約にもよりますが、まず会社については、複製権と翻案権を侵害する可能性があります。両方とも著作権に含まれる権利のひとつです。また、内容によってはイラストレーターの著作者人格権を侵害する可能性もあります。」
(記者注:複製権は著作物を複製する権利。翻案権は著作物をもとに新たな制作をする権利。著作者人格権は著作者の望まない変更をやめさせることなどのできる権利)

――「二次利用にはファンとして著作物を盛り上げたい思いもあると思うのですが、必ず違反になるのですか?」
福井弁護士「著作権法に違反するかどうかは権利者の姿勢でも変わるものです。会社やイラストレーターが了承していれば問題はありません。昔は許可しない会社が多かったですが、今どきは許可や黙認の例も多い。初音ミクは販売元が二次創作を認めていますし、ディズニーアニメの『アナと雪の女王』では、パロディ動画があふれましたが、ディズニーが必ずしも積極的に消す動きをしなかったのです」

――「なぜそうした変化が起きているのでしょうか?」
福井弁護士「完全にやめさせるのが難しいというのもありますが、元のキャラクターの魅力を高め、市場を活性化させるというメリットが注目されてきています」

――「黙認していると問題のある画像もあふれてしまいますが、黙認を前提にした文化は良いのでしょうか?」
福井弁護士「一般のユーザーが非営利の目的で楽しむことについては、日本では黙認文化がある程度うまく機能してきたとはいえるでしょう。ユーザーが著作権を持つ会社に許可を求めると、会社も表だって許可はできないので『駄目』とやぶ蛇になる可能性があります。性的表現やヘイトなどの問題もあり、どこまでを良しとするかの線引きが難しいのも事実です。権利者としては、黙認しつつ、やり過ぎには怒るという態度がいいバランスかもしれません」

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