twitter facebook hatebu line LINE! IT・科学 2025/05/10 みんなの感想 かかりつけ医と相性が合わなかったら?上手な医療のかかり方を考える かかりつけ医と合わないなぁと感じたときは… 出典: Getty Images ※画像はイメージです 水野 梓 SNS 医療 医師 医療情報 コロナ禍やGoogleのアップデートなどで、医療情報にまつわる環境は大きく変化しました。そんななか、わたしたちはどう医療従事者とコミュニケーションをとるといいのでしょうか。特に「かかりつけ医」と相性が合わないと感じたとき、どう対応したら――。医師たちにアドバイスをもらいました。(構成=withnews編集部・水野梓) 【PR】幅広い「見えない」に対応 日常生活の不便を減らすために withnewsでは、SNSなどで発信している医師たちを招き、「知って、届けて、思い合う~やさしい医療がひらく未来2025~」を開催しました。6年ほど前に、医療のデマや見極め方について対話したイベント以来、再び集まった登壇者たち。医療情報を取り巻く環境の変化や、医療者とのコミュニケーションについて語り合いました。イベントの内容を抜粋してお送りします 【イベントのトーク①はこちら】医療情報、どう変化した?コロナ禍での医師の「強い言葉」への危機感 【イベントのトーク②はこちら】外来に「マスクをしたくない」患者が来たら…医療不信との向き合い方 【イベントのトーク③はこちら】病気の予防の情報、TikTokに上げるのは…届けるための試行錯誤 【イベントのトーク④はこちら】医者もメディアも「嫌われている」現状で…医療情報をどう届けるのか 「かかりつけ医」を探すには… withnews編集長・水野梓:このトークセッションでは、「病気になった時、医師と医療をうまく利用するコツ」をおうかがいしていきます。 withnews編集長・水野梓(みずの・あづさ) 2008年、朝日新聞社入社。医療の取材や新サイトの立ち上げなどを経て、2022年から朝日新聞のニュースサイト「withnews」の編集長 水野:まずお医者さんであるお二人は、体調が悪いなと思ったら、どう判断してどう行動することが多いですか? けいゆう先生:医師自身は医学的な知識を持っているので、体温や食欲や便通など、自分の症状の変化を整理するところから始めます。いきなり受診はしませんね。 そして、受診した方がいいと判断したら、その時に初めて専門家に相談します。 外科医・山本健人(やまもと・たけひと) 消化器外科専門医。「医師と患者の垣根をなくしたい」をテーマに「外科医けいゆう」のペンネームで医療情報サイト「外科医の視点」を開設し、1300万超のページビューを記録。著書に『すばらしい人体』(累計19万部超)ほか多数。時事メディカル、ダイヤモンド・オンライン、エムスリーなどで連載 けいゆう先生:医療従事者でなければ事前の整理ができないので、その仕事を誰かにやってもらわないといけない。なので最初に相談する相手は、いわゆる「かかりつけ医」だと思います。 まずかかりつけのお医者さんに状況を整理してもらって、さらに専門的な病院にかかるべきなのかそうでないのか、評価してもらうということになりますよね。 水野:ちなみにかかりつけ医がいるという方、会場にどれぐらいいらっしゃいますか?(挙手してもらう)半分ぐらいでしょうか。わたしはいないんですが…… たらればさん:僕もいませんね。どう見つけたらいいんでしょうか? たられば @tarareba722 編集者(出版社勤務)。関心領域はSNS、平安朝文学、働き方、書籍・雑誌、書店、犬。朝日新聞、講談社、新潮社、集英社、KADOKAWA、サイボウズ式、ほぼ日の學校などに各種書評やエッセイ執筆、講演など。だいたいニコニコしています ほむほむ先生:「かかりつけ」では、僕は「この先生と合うかどうか」をみた方がいいと思います。 たとえばけいゆう先生も「いい先生」であることは間違いないですが、受診した人が「合う」か「合わない」かは、人によって多分違うと思うんですよね。 小児科医・堀向健太(ほりむかい・けんた)/ほむほむ先生 「なぜ?」に答える医学情報記事を世の中に2000本以上そっと置きながら、25年以上前線で医療を続けている小児科専門医・アレルギー専門医。色々医学記事を書いているけど、筆は遅い。著書に『子どものアトピー性皮膚炎のケア』『ほむほむ先生の小児アレルギー教室』 ほむほむ先生:特に「かかりつけ医」では、受診したときに「フィーリングが合うかな」っていうのは大事だと思います。 ただ、その時にあまり知識をつけずに受診すると、科学的根拠のない治療をするドクターに当たってしまうかもしれないので、難しい内容かもしれませんが、ガイドラインなども予習していくのも一法かもしれませんね。そうしてフィーリングと知識で選んでいくっていうのがいいんじゃないかなと思います。 医師を「ツール」ととらえたら? 水野:体調が悪いとき、「おなかが痛かったら消化器内科」とか、その「科」を選んで受診した方がいいのでしょうか。胸が痛いのか、お腹が痛いのか分からないなぁという時もあるんですが…。 けいゆう先生:内科を標榜している医師は、全身のどんな症状でもある程度、診療することができて、大きな病院に紹介しなければいけないかを判断できます。それが地域におけるクリニックの医師の役割だと言えます。 水野:では、たとえばこの内科は「ちょっとイヤな先生だなぁ」「フィーリングが合わないなぁ」と思った時はどうしたらいいんでしょうか? けいゆう先生:人間同士なので相性の良し悪しはありますよね。一方で、医者と患者って「友達同士」の関係ではないので、患者さんが求めているのは「医者と仲良くなること」ではないはずです。 むしろ、顧客とサービスを提供する側、というちょっとドライな見方をして、医者は利用するべき「ツール」と考えてもいいんじゃないでしょうか。 「すごく感じのいい人」を求め続けると、ベストなかかりつけ医に出会えない可能性もある気がします。「この情報がほしい」という希望に対してちゃんと答えてくれるかどうかが大切ですね。患者側としては、「いかにして医者から自分の利益を引き出せるか」というドライな観点を持ってみてもいいんじゃないかなと思います。 出典: Getty Images ※画像はイメージです ほむほむ先生:医者もその状況次第で対応に差が出てしまいますよね。すごく忙しくてせっぱ詰まっている時だったら、「仏」のように対応できないですよね。 ですので、急ぎではない場合なら、混んでいる日を避けようと考えてみてはどうでしょうか?Googleとかで医療機関の状況を調べると、混んでいるかどうかを調べることも出来るようになっています。 医師側に余裕のある時なら、その医師のポテンシャルは発揮しやすいし、ファーストコンタクトで失敗しにくいと思うんですよね。 水野:医療にかかる方も想像力が大事っていうことですね。 ほむほむ先生:また、みなさん早く行けばいいだろうと思って、早く着きがちなんですが、早朝ってけっこう混んでるんですよね。どの時間帯が混んでいるか、病院によって違うので、これもGoogleなどで事前に調べておくのをおすすめしたいです。 「この医者と合わない」と感じた時のおすすめ たらればさん:人気者のお医者さんであればあるほど患者が増えるわけで、そうなると、ひとりひとりにあてる時間はどんどん少なくなっていくじゃないですか。 患者側としては、診察されている時に医師が忙しそうだと「自分ひとりにこの人の時間をあまり使っちゃまずいよな」という心理が浮かんできますよね。 お医者さんによっては「手術が終わってからすぐ来ました」「今日はこれからあと30人の患者さんを診ます」という感じで診療室に現れる人もいて、そうなるとますますじっくり相談するのが難しいなって思います。 そもそも、「僕は先生と合わないので変えてください」ってストレートに言っていいものなんですか? 言いづらいですよね……。 水野:直球。うーん、言えないです。 けいゆう先生:言ってもいいと思いますけど、言いづらいですよね。看護師とか医療クラークとか、受付の人でもいいので、「仕事の都合で曜日を変えたいんですが」とか「転居するので病院を変えたいんですが」と言ってみたらどうでしょうか。 水野:うそも方便ですね。わざわざ本当のこと言わなくていいと。違和感があったら、それをほかの医療スタッフに伝えてもいいってことですね。 出典: Getty Images ※画像はイメージです けいゆう先生:なぜそれを勧めているかと言うと、たとえば「医師のちょっとイヤなところ」を看護師さんに話したとしますよね。すると院内でその情報が伝わって改善されて、もしかすると医者や病院を変えなくても、患者さんの満足度が上がるかもしれません。 患者さんと医者の間には「情報の非対称性」がありますから、患者さん自身が、本当に医師を変えることが医学的にベストなのかどうかって判断できませんよね。 医者を変えたら、またイチから別の医師と関係性を構築するというタスクが発生しますし、距離的にアクセスしやすい病院を変えて遠路はるばる通わなければならなくなるかもしれません。「本当に医者を変えた方がいいのか」という判断を自分でしづらいのが、患者さんにとっての難しさだと思いますね。 水野:さらに難しいのが、科学的根拠のない医師もいて、見極めるのがすごく難しいんですよね。たとえばステロイドを使いたくないって思いの患者さんがいたとき、根拠なく診療する医師ってすごく優しいんですよね。「怖いですよね」「じゃあ使うのやめましょうか」とかじっくり話を聞いてくれる感じがするし……。 でもそうすると治らないみたいなことになってしまうわけで。だから「優しいからいいお医者さん」というわけじゃないですよね。 出典: Getty Images ※画像はイメージです けいゆう先生:そう。結局優しく時間をかけてじっくり寄り添って時間が取れるのが、そういう詐欺的医療を提供する人たちなんですよ。 だってそれだけ時間かけてもリターン大きいですからね。結構高額な医療提供してますから、僕らはどれだけ時間をかけても短くしても、もらう給料はもちろん変わらないし、特段のインセンティブはない。 水野:優しさ追加料みたいのはないんですね。 たらればさん:指名料とかないんですか? けいゆう先生:ないですね。 たらればさん:ないのか~。待合室に「今月一番指名された医師ランキング」とか貼ってもらえるとか……。 けいゆう先生:よくそういう意見をもらうんですよね。でもそれが医学的に妥当なのかというと難しいんですよね。 僕の予想では、医学的には微妙だけれど口調が優しいとか処方薬をたくさん出してくれるから、とか、そういう理由で1位になる人が出てきそうです。 たらればさん:たしかにそうですねぇ。たとえば原稿を持ち込んだときに担当編集者番付があったら、出版社も弊害のほうが大きいと思うので、我が身を振り返ると「無理だな」ということが分かりました(苦笑)。 一番最後の情報、覚えて帰ってもらう 水野:ほむほむ先生は、患者さんとのコミュニケーションエラーをなくすために心がけていることはありますか? ほむほむ先生:まず、百戦百勝はもう無理だと思ってやっています。そのような中で、この人なら、このたとえ話をすると合うかなぁとか、工夫しながらお話しをしますね。 さらに、「一番最後に与えられた情報が一番覚えてもらえる」という心理的なバイアスがあるので、どうしても覚えてほしいことは、診察室のドアを開けて出て行く直前にお伝えしてお帰りいただくのを心がけています。 水野:なるほど~。 ほむほむ先生:受診する時に患者さんに守ってほしい重要なことはまだあって、「遅刻をしない」ということです。遅刻すると、そのあとの患者さんのすべての時間を奪ってしまうんですよね。 そして、聞きたいことってきっとたくさんあると思うので、メモを用意するのもおすすめです。聞きたいことを書き出し、優先順位をつけて1番目2番目の質問をしてもらうのがいいと思います。そして、聞いたことをメモにとっておく、というのもおすすめです。 聞きたいことは1回で全部聞きたいと思うんですけど、もしたくさん聞きたいことがあれば、「もう1回お話が聞きたいんですけど」と受診の予約をとって、またその時に聞くのがいいと思います。 【イベントのトーク①はこちら】医療情報、どう変化した?コロナ禍での医師の「強い言葉」への危機感 【イベントのトーク②はこちら】外来に「マスクをしたくない」患者が来たら…医療不信との向き合い方 【イベントのトーク③はこちら】病気の予防の情報、TikTokに上げるのは…届けるための試行錯誤 【イベントのトーク④はこちら】医者もメディアも「嫌われている」現状で…医療情報をどう届けるのか 「脱ステ」にハマっていたあの頃「裏切り」とさえ思って… 1/9枚 withnews