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#39 小さく生まれた赤ちゃんたち
「小さな身体で5回の手術、よく頑張ったね」写真で伝える家族の思い
小さく生まれた赤ちゃんの写真展が開かれました
![小さく生まれた赤ちゃんの成長が展示されていました](https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/storage.withnews.jp/2025/02/15/3/e0/3e06fde6-l.jpg)
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#39 小さく生まれた赤ちゃんたち
小さく生まれた赤ちゃんの写真展が開かれました
「目も開けられなかったあなたも、今では毎日とびきりの笑顔で家族を癒やしてくれています」。そんなメッセージとともに並ぶ、妊娠28週1290gで生まれた赤ちゃんの写真。神奈川県藤沢市で、小さく生まれた赤ちゃんの家族およそ20組が撮影した写真の展示会が開かれています。
「小さく生まれていろんな困難を乗り越えて、元気にお兄ちゃんお姉ちゃんたちの後を追いかけて成長中」(22週0日485g)
「両手に収まりそうな小さな身体で生まれて5回の手術、よく頑張ったね!」(26週1日900g)
「みんなに心配されたけど、きょうだいの誰よりも強くたくましく成長しています」(30週6日1409g)
「背は小さいけれど、最大の気の強さで野球やってます」(39週3日1760g)
神奈川県藤沢市の商業施設「湘南モールフィル」の1階で開かれている、写真展「リトルベビーとともに歩む社会〜小さな命と家族を知る〜」。
小さく生まれた赤ちゃんたちの生後間もない写真と成長した「今」の写真が並び、家族からのメッセージが添えられています。
「リトルベビー」とは2500g未満で生まれた赤ちゃんのことで、低出生体重児とも呼ばれています。人口動態統計によると、2023年は約7万人が2500g未満で誕生しました。約10人に1人の割合で、近年は横ばいです。
多くの赤ちゃんは妊娠37~41週(正期産)で生まれ、平均体重は約3000g。妊娠22~36週は早産となり、より早く小さく生まれるほど命の危険や障害、病気のリスクが高く、医療的ケアが必要なこともあります。
写真展は、小さく生まれた赤ちゃんや家族を支援するNPO法人pena(ペナ)=神奈川県=が企画しました。
理事長の坂上彩さん(45)は、「当事者の方には『ひとりじゃないよ』と伝えたいですし、地域の方には小さく生まれた赤ちゃんやご家族の思いを知っていただき、よりマイノリティーが生きやすい地域社会になってほしいと思いました」と話します。
展示会場には、写真のほかに低出生体重児やNICU(新生児集中治療室)、医療的ケアの説明、きょうだい児の思い、低出生体重児向けの小さなおむつ、母子手帳のサブブック「リトルベビーハンドブック」などが並び、理解を助けています。
地域の現状を伝えるため、藤沢市で2021年に生まれた赤ちゃんの体重別出生数も掲示しました。
筆者が訪れたのは平日のお昼頃でしたが、買い物客が次々と足を止めていました。なかには今年に入って低出生体重児を出産したという母親や、孫が1000g未満で生まれたという人もいたそうです。
企画した坂上さん自身、2018年に妊娠24週4日で370gの長女を出産しました。
いまは6歳に成長しましたが、当時は「こんなに早く小さく産んでしまったのは、世界中で私だけじゃないかと思うほど追い詰められていました」と振り返ります。
初めて長女を抱くことができたのは、誕生から1カ月のときでした。
「同じ境遇の人たちが出会い、悩みや気持ちを話せるように」と、2021年にかながわリトルベビーサークルpenaを立ち上げ、昨年NPO法人として活動を始めました。
神奈川県内を中心に写真展や啓発活動を続けている坂上さんですが、地域の人と交流するなかで、たびたび認識の差を感じることがあったといいます。
「何人かの高齢の方に、『小さく生まれた子はみんな障害があるんでしょ?』と言われたことがありました。小さく生まれたといっても状況は様々です。障害のあるお子さんもいますし、そうでない子もいます。自閉スペクトラム症など見た目だけでは分からない特性がある子もいます」
写真展を開催するときは、「いろんな子どもがいる」ことが伝わるように掲示しているそうです。
湘南モールフィルの販促イベント担当・金子雅紀さんは、立ち止まる人の多さや感想ノートへの書き込みなどから、写真展への反響を感じているといいます。
「小さく生まれた赤ちゃんの存在は、penaさんに伺って初めて知りました。多くの方に来ていただける商業施設という場所から、今後も社会に発信する協力をさせていただきたいです」と話しています。
写真展は入場無料で、2月17日まで開かれています。
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