日本では年間およそ10人に1人が、2500g未満で生まれる「低出生体重児」です。朝日新聞がアンケートをしたところ、多くの親から出産時の不安やその後の成長といった体験談、必要な支援についての意見が寄せられました。今回は1000g未満で生まれた小さな赤ちゃん「超低出生体重児」についての意見をまとめます。
2500g未満で生まれる赤ちゃんは、「低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)」と呼ばれます。日本人の平均出生体重は約3000gですが、約10人に1人が2500g未満で小さく生まれており、その割合は近年横ばいです。
低出生体重児の中でも、1500gに満たない赤ちゃんは「極(ごく)低出生体重児」、1000gに満たない赤ちゃんは「超低出生体重児」とされ、小さく生まれるほど病気や障害のリスクは高くなると言われています。
【出生体重からの定義】
・低出生体重児:2500g未満
・極低出生体重児:1500g未満
・超低出生体重児:1000g未満
厚生労働省「低出生体重児 保健指導マニュアル」より
人口動態統計によると、2021年に生まれた日本人の子どもは81万1622人。そのうち、低出生体重児は7.6万人(9.4%)で、1975年の5.1%から増加しています。極低出生体重児は0.8%、超低出生体重児は0.3%でした。
OECD(経済協力開発機構)諸国で、低出生体重児の割合の平均は6.6%(2018年)。日本は先進国の中で、小さく生まれる赤ちゃんの割合が高い国の一つです。
小さく生まれる背景には、早産や、双子などの多胎児の増加、妊婦への体重制限(やせ)や病気などが関係していますが、はっきりとした原因が特定できないこともあります。
小さく生まれる理由について、新生児臨床研究ネットワーク(NRNJ)理事長の楠田聡医師は「早産や、双子などの多胎児の増加、妊婦への体重制限、病気などが関係している」と話す。
多くの母親は妊娠37~41週(正期産)で出産する。22~36週は早産とされるが、「超早産」の28週未満は子宮内感染症が主な要因で、34~36週の「後期早産」では妊娠高血圧症などの病気や妊婦の「やせ」も影響してくるという。
朝日新聞デジタル「10人に1人が2500グラム未満 小さく生まれた赤ちゃんのリスク」より
背景のひとつである早産は、年間およそ20人に1人と言われています。早産は予防できるものではなく、母親が何かをしたから早産になるということではないそうです。
「妊婦さんが何か悪いことをしたから切迫早産になる、早産になることはありません」とお話しすることは多いですね。
「自分が悪かったのではないか」と自責の言葉を口にするお母さんがいるので、「お母さんのせいではありません」とお話しさせてもらいます。
withnews「『お母さんのせいじゃない』 20人に1人が早産、原因に感染や多胎」より
【出産週数からの定義】
・早産児:在胎週数 37 週未満で出生
・後期早産児:(早産児のうち)在胎週数 34 週から 37 週未満で出生
・正期産児:在胎週数 37 週から 42 週未満で出生
・過期産児:在胎週数 42 週以上で出生
厚生労働省「低出生体重児 保健指導マニュアル」より
2022年に朝日新聞が「小さく生まれた赤ちゃん」をテーマに意見を募ったところ、お子さんが小さく生まれたという親を中心に1000件近い回答が寄せられました。
1000g未満で生まれた赤ちゃんが成長している様子や求める支援をつづってくれた方もいました。その一部を紹介します(年齢などの情報は2022年11〜12月当時)。
◆兵庫県 女性 40代
3男が700g台で生まれました。
脳室内出血、壊死性腸炎、敗血症、慢性肺疾患、未熟児網膜症などたくさんの疾患を経験し、現在11歳になりました。脳室内出血の後遺症でてんかんの持病があり、日常生活で気をつけている事はありますが、毎日小学校に通い、友達と遊んだり習い事をしたり、元気いっぱいに成長しています。
赤ちゃんの頃の手術で、お腹の端から端まで大きな傷跡はありますが、彼の中では隠したい傷跡ではなく、自分が壊死性腸炎に勝った勲章だと誇らしく思っていて、友達にも自慢しているようです。そんな息子を私も誇らしく思っています。
◆北海道 女性 40代
第4子を845gで出産しました。
サイトメガロウイルスが原因で切迫早産になり、緊急帝王切開で生まれた我が子は在宅酸素が必要な状態で半年かかって退院しました。
この子は何か障害を抱えることになるのかもしれない。でも生きていてくれればそれで良いと葛藤を抱えながら家族みんなで支えあい、今は小学校3年生になりました。
在宅酸素は1歳で離脱し、そこからは病院のリハに通いながらなんとか普通級で頑張っています。みんなについていこうと必死な姿を見ていると、大きく産んであげられなくてごめんねと思うこともありますが、本人がやりたいことを楽しめる人生にできるようサポートしていきたいなと思ってます。
◆千葉県 女性 40代
娘が早産、超低出生体重児でした。胎児発育不全で原因不明の羊水過少で388g27cmのサイズでした。
臓器形成不全の疑いがありましたが生まれたら何も問題なしでした。もうすぐ3歳、サイズは1歳半位。食事には苦戦してますが活発で元気です。
当時は都内住みだったので医療費や退院後の医療ケアは無料なものもあり助かりましたが通院費、母乳パック、ミルク、母乳強化剤、オムツ等々通常よりお金がかかりました。やはり経済的支援は必要です。
発達はゆっくりな子が多いと思うので育休は3〜4年は必要だと思います。地域の保健師、訪問看護師、リハビリの先生もリトルベビーと父母の不安や心身の不調について理解してもらえると助かります。
◆岡山県 女性 30代
娘を22週2日356gで出産しました。
9ヶ月の入院で手術もたくさんし、退院時寝たきりかもと言われた娘。今年5歳になりましたが1人では歩けず、歩行器を使えば歩けるようになっています。基本ハイハイで移動し、発達・発育はかなり遅いです。
同じような境遇の方と出会える場所、ママたちが「ひとりじゃないんだ」と安心できる居場所がほしいです。小さく生まれてもかけがえのない命。もっともっと周りの方にこうして頑張っている子どもたちがいることを知ってもらい、障害があっても家族が安心して子育てできる環境を作ってほしいです。
◆宮城県 女性 50代
我が子は23週5日607gで生まれ現在8歳、NICUフォローアップを受けています。
2歳で未熟児網膜症による弱視、4歳でADHDと診断され、教育委員会の判断もあり地域小学校の通常学級へ入学しました。しかし入学後、授業に集中しない、友達トラブル多発などの理由で支援学級を勧められ、知的障害の判定も受けて2年生から移りました。
日々の大変さに加え、年を重ねるごとに定型発達している同級生からの遅れや違いを思い知らされ、障害を指摘され、その都度ショックを受けました。
小さく生まれた先輩ママさんから「慣れるから大丈夫」とアドバイスを受け納得していますが、もう少し生きやすい術はないかと暗中模索の日々です。
◆ 東京都 女性 40代
2006年、686gで出産しました。当時情報網が発達しておらず、同じ経験をした人も周囲におらず、苦しかったです。
生後2回息子の心臓が止まり、長時間の心臓マッサージにより、両肺に穴があき気胸にもなりました。浅黒いカエルのような皮膚に人工呼吸器、鼻のチューブ、両肺チューブがつき、ブカブカのオムツを履いた姿が目に焼き付いています。当時手厚い精神ケアと今後の発達経過などの情報がほしかったです。
また3月31日生まれの息子の就学猶予について検討しましたが、例があまりなく諦めました。成長が遅く集団健診は傷つきました。
現在高2で、親元を離れ寮生活。建築家を夢みています。当時の自分に大丈夫と言ってあげたいです。