水野:みなさんがネットメディアで手掛けた面白い仕事、ぜひ教えてください。
神庭:
ネットって、わかりやすさや感情の行き先がわかりやすいものを提供することが大事だとされています。でも、それだけだと面白くないです。
BuzzFeedの最近の記事で、ストックフォト(広告や記事などに使用する目的で購入する写真や画像のこと)にあがっている奇妙な写真を撮った人に、話を聞いていくという企画がありました。
お相撲さんが凍り付けになっていたりとか、変な写真がいっぱいあるんですが、その中に、鹿のカチューシャをしたスーツ姿の男性が、鹿を追い回している写真があって。ところが、その写真を撮影した人はすでに亡くなっていたんです。
最初のうちはゲラゲラ笑いながら読んでいたんですけど、読み進めていくうちに遺族の話なんかも出てきて、ちょっとしんみりしてしまう。
「わかりやすい」「役に立つ便利な話」はもちろん大切なんですけど、感情の行き先がわからない、正体不明の感情に出会える記事もあると面白いと思っています。
【使いどころ不明な「ストックフォト」の謎】
https://www.buzzfeed.com/jp/keijiroabe/rikishibakkayan?utm_source=dynamic&utm_campaign】
水野:ライターのヨッピーさんが、コロナ禍で「面白い記事がなかなか読まれなくなっている」ともお話ししてましたね。
宮脇:ツイッターは基本殺伐としていますよね。見るけど、足を踏み入れないようにしているというか。
結局、誰かを攻撃すると100%跳ね返ってくるので、いい精神状態にはならないです。
きれいごとでもいいので自分が誰かの役に立ったり、誰かが笑ってくれるような情報発信はどんどんやりたいし、そういうコンテンツを作っていきたいです。せっかくこういう仕事をしているので。
水野:たらればさんが「インターネットには『祝福』が足りていない」と言っていました。BuzzFeedも“No Hater”ですもんね。
【「10年で景色は変わる」 たらればさんと考えるニュースの未来】
https://withnews.jp/article/f0220705001qq000000000000000G00110201qq000024890A
神庭:ジャーナリズムとして批評は必要だけど、炎上のための炎上はいらない。
批判するにしても提案があったほうがいいですよね。ポジティブ・インパクト。殺伐ワールド一色になりたくない。
だからこそ、デイリーポータルZやオモコロがやっていることは尊いし、BuzzFeedでも行き先がわからないコンテンツを出していきたい。無意味なこと、わけのわからないことって貴重な価値になっていると思います。