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連載

#7 ウェブメディア祭り

大事なニュースは読まれない? 新聞社とプラットフォームの〝役割〟

イベント「プラットフォームさんとメディアが楽しく長続きできるためにできること」の様子。左上から右回りに、ヤフーの前田明彦さん、ツイッターの西村奈津子さん、withnews前編集長の奥山晶二郎
イベント「プラットフォームさんとメディアが楽しく長続きできるためにできること」の様子。左上から右回りに、ヤフーの前田明彦さん、ツイッターの西村奈津子さん、withnews前編集長の奥山晶二郎

目次

新聞社のような「メディア」と、ツイッターやヤフーのような「プラットフォーム」の役割や関係は? ツイッターの西村奈津子さん、ヤフーの前田明彦さん、withnews編集長として8年間運営に携わり5月に退任した奥山晶二郎が「プラットフォームさんとメディアが楽しく長続きできるためにできること」をテーマに語り合いました。

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【連載】「ウェブメディア祭り」

withnewsでは、編集長の交代をきっかけに、これからのメディアを考える「ウェブメディア祭り」を開催しました。ライターや編集者・プラットフォームのみなさんと語り合った各セッションの採録記事をお届けします。

西村 奈津子(にしむら・なつこ)氏
Twitter Japan 広報本部長。2019年Twitter Japan入社。日本市場における広報業務を統括。利用者、メディア関係者、教育機関など様々なステークホルダーのインターネットおよびソーシャルメディア・リテラシー向上にも力を入れている。Twitter:@natsuzo
前田 明彦(まえだ・あきひこ)氏
新聞記者を経て、2012年にヤフー入社。Yahoo!ニュース トピックスの編集、「Yahoo!みんなの政治」の編集などを担当。現在は選挙特集のプロジェクトマネージャー、新聞社やテレビ局などコンテンツパートナーとの共同・連携企画を進めるプロジェクトのマネージャーなどを務める。
奥山 晶二郎(おくやま・しょうじろう)
withnewsの前編集長。2000年、朝日新聞入社。佐賀。山口、福岡と勤務して2007年の社内公募をきっかけに、デジタル部門へ異動。「asahi.com」の編集に携わり、「朝日新聞デジタル」立ち上げ、動画、データジャーナリズム、SNS連動企画などを担当し2014年に「withnews」をスタートさせた。

大事なニュースは読まれない?

奥山:withnewsができた8年前から大事にしてきたのは、待っているだけではなくて、外に出ていこうということでした。そこで、プラットフォームの方々と連携し、コラボを続けて今に至ります。

Yahoo!ニュースに配信されたwithnewsの記事。「この記事は、朝日新聞『withnews』とYahoo!ニュースとの共同連携企画です」との但し書きがあります。こうした連携事例があります
Yahoo!ニュースに配信されたwithnewsの記事。「この記事は、朝日新聞『withnews』とYahoo!ニュースとの共同連携企画です」との但し書きがあります。こうした連携事例があります

奥山:新聞社やテレビのようなメディアと、ツイッターやヤフーのようなプラットフォームの違いはお互い意識しつつ、僕的にはいい関係で役割分担できていると思っています。メディアとプラットフォームが、これからもどうやって「いい感じ」にやっていくのか、うかがえたらと思います。

私たちメディアからすると、数字狙いというよりは、誰もが最初に使うプラットフォームというサービスで、接点のない人たちと出会えることに意義があると思っています。一方でプラットフォームの側から、新聞社のようなメディアとコラボする理由は?

前田:根っこには「大事なニュースは読まれない」ではなく、「大事だし読まれるニュースを届けたい」という、エモーショナルな部分があります。

いまYahoo!ニュースでは1日で計7500本くらいの記事を、各社から配信してもらっています。災害のその後とか、さまざまな社会課題について「より多くの人に気づいてほしい」と思うわけです。ところが、Yahoo!ニュースには、エンタメやスポーツもあって、そうしたニュースが数字的に負けてしまうこともあります。そこで、読まれ方の知見をお伝えすることで、メディアが大事なニュースをより多くの人に届けるためのお手伝いができればと思っています。

奥山:補足しますと、こちらが記事を出して、ヤフーさん側で「ヤフトピ」にピックアップする。これが通常の流れなんですけど、特定のテーマについて、事前に認識をすりあわせて、コラボ企画としてやりましょう、というのもあるんですよね。ヤフーさん側の知見を取り入れながら、がっちゃんこして出すわけですよね。

前田:見出しにこの言葉を入れるだけでも2倍クリック率が違うとか、データでわかる部分があるので。わかるところをお伝えしています。

ヤフーの前田明彦さん
ヤフーの前田明彦さん

会話の力を増幅させる

奥山:ツイッターは基本、ユーザー投稿がメインですね。そこをあえて運営側がコミットして、メディアと一緒に何かしようとなったときに、我々にはどういう役割がありますか?

西村:ツイッターは、会話で社会を良くしようとしています。社会課題を浮き彫りにして、それを見た人が何かアクションする。そのような会話の持つ力を大事にして、増幅させたいと思っています。

いろんな人が発言することで問題が顕在化したり、解決策が見えたりするイシューについては、会社としてプロモーションすることがあります。

その面で、メディアは、誰に話を聞くのがよいかご存じだったり、編集力や書く力、伝える力があったりします。社会のいろんな人たちの心を動かす、実際にアクションさせる、その力が足りないところを補ってもらい、大きなものになればいいなと思っています。

奥山さんたちとの取り組みで言えば、例えば夏休みの終わりに、学校に行きたくない子たちが、行きたくないあまりに(自傷や自殺など最悪の)行動にうつしてしまう、そこで「そこまでして学校に行く必要ってあるんだっけ?」と、みんなで考えたことがあります。

そういう人の命にかかわるものは、ツイッターでも、メディアと一緒に取り組みましょうという思いが強いです。

2019年8月、withnewsと日本財団が主催し、ツイッタージャパン本社から生中継番組「#わたしの居場所」を配信しました。当時の記事から
2019年8月、withnewsと日本財団が主催し、ツイッタージャパン本社から生中継番組「#わたしの居場所」を配信しました。当時の記事から

奥山:ツイッターは、ユーザーがハッシュタグとかで自然発生的に盛り上がるものですよね。それ以外のかたちで、仕掛けをつくるみたいな、これはサービス全体の中で、通常の投稿とちゃんと共存できるんですか?

西村:自然発生するものの方がパワーが強いっていうのはありますよね。ただ、それだけで掘り起こせないものは、こちらで主導することはあるのかなと思っています。

ツイッターの西村奈津子さん
ツイッターの西村奈津子さん

競合と共存が成り立っている

奥山:どうしてもユーザーのクリックする傾向って似てきちゃったり、特定のジャンルだったりしますよね。使いやすさとの裏返しで、悪いことではないのですが、ちょっともったいないっていうか……。

西村:知らない世界に触れられるのがインターネットの良さですよね。家に居ながらにして、いろんな情報を知れる良さがあります。

奥山:プラットフォームの存在感の大きさに問題意識を持っている方もいると思います。なぜ、新聞社のようなメディアがプラットフォームと連携するかというと、けっこう同じところを目指しているからだと思っています。

メディアは元々はプラットフォームでしたよね。新聞を読んで1日がはじまる。これ以外はチャンネルがない。そんな時代があったわけです。テレビもそう。そこでは、編集という名のもとに、「これが大事だ」ってニュースを一面とか社会面にどーんと載せていったわけです。

それが、一つの組織で完結していたのが前の時代。でも、いまの時代は単一のメディアだけではそこまでの影響力がない。だからコラボするのかなと思っています。

競合と共存が成り立っているところがあるんだと思います。うちの会社としては、プラットフォームが競合になる面もあるけれども、ユーザーとの接点で考えると、けっこう共存していかないといけないと思っています。

ハッシュタグが乱立

奥山:逆に、プラットフォームにしかできないことって、何なのでしょう?

前田:「入り口を作れること」と思っています。

ヤフーにいろんなお客さんが集まってくださる中で、例えば、記事を出すメディアに、見出しにハッシュタグを入れてもらうようにお願いします。そうすることで、今度はツイッターで引っかかる。ヤフーだけじゃなくて、ほかのプラットフォームと連携して、引っかかりを増やすのが役割だと思っています。

西村:東日本大震災の311周辺のときに、過去の記憶を忘れないようにとか、未来の防災についてこれまで得た知見を共有しようとか、そういうキャンペーンをやっています。

この時に、メディア単体だとハッシュタグが乱立してしまい、ツイッターでの会話が結局まとまらない、ということが起こりがちです。

なので、ハッシュタグは統一した方がいい。でも、例えば「朝日新聞が率先してやります」と他のメディアに声をかけると、相手も社内の事情があるわけです……(笑)。中立的な立ち位置のプラットフォームから声を掛けるというのがよいのかなと思います。ある意味で、うまく私たちを使ってください、ということです(笑)。

参院選もそうですね。これまでの選挙のときも、同じような取り組みをしていて、前回の衆院選では #私たちの一票 というハッシュタグを作っています。

※編集部注:今回の参院選でも、ツイッターでは「#私たちの選挙」「#私たちの一票」「#投票しました」「#Voted」という、特別な絵文字がついてタイムラインで目を引くハッシュタグを作成し、報道機関、政府、自治体などに利用を呼びかけました。

奥山:NHKさんが「#あちこちのすずさん」という企画をやっていました。「すずさん」のような普通の人が見た戦争や原爆にフォーカスする企画です。「#あちこちのすずさん」とつけるだけで、特定の地域にとどまらない話として広がったわけですよね。

ここでは、他のメディアも試された気がしました。乗るかどうか。乗って、広くシェアされたメディアもありました。

記者を育てるのはメディア

奥山:それでは、メディアにしかできないことって何だと思いますか?

西村:例えば、学校に行きたくないお子さんたちの企画であれば、誰に言ってもらえば、一番刺さるのか。それもいわゆる専門家ではなくて、同じ目線の人でとなると、我々だと日頃取材しているわけではなく、存じ上げません。そこを助けてもらっています。

前田:取材力というか、書く力は唯一無二だと思っています。例えば、子育てされているお父さんの話。ファクトは10万も100万もあるわけですが、どのデータを選ぶかは、センスや経験がないと難しい。切り口の設定も取材経験によると思います。

ファクトをテキストに落とすっていうのは誰でもできますが、どうやって最適な形にするかに長けているのが記者だと思っています。同時に、記者を育てることも、メディアでしかできないと思います。

専門性があまりないまま

西村:海外では、記者が記事で書き切れなかったことをツイートすることがよくありますけど、日本でも、もっとやっていいと思います。

奥山:いったん記事にすると、そこで達成感が出てしまうのかもしれません。あるいは、専門性があまりないまま「担当」としてやっているものだと、結果は気にせず、「はい、次の取材」みたいな感じで気持ちを切り替えちゃっているとか、そういうのがあるのかもしれません。

一方で、特定のテーマを追いかけているならば、次の取材のきっかけになるような形で発信していくというのはありですよね。

西村:思わぬコメントがきちゃったときに「そういう解釈じゃなくて」ってご自身でやるのが確かかと思います。当事者不在のまま、あさっての方向に議論がいっちゃったりすることはありますね。

奥山:トラブルが起きる時の原因として、結局「言い方」みたいなところはあるけれど、インタラクティブにしていくために、スキルアップしていかないといけないと思っています。

中立サービスも大事

【視聴者からの質問】

私はヤフーニュースのようなプラットフォームを介したニュースにやや抵抗感があります。これは話題性を競い合っていて、中身が薄いように思えてしまうからです。でも、プラットフォームを通さないと今度はメディアの多さゆえ、せっかくの面白い記事にも出会う機会が減ってしまうかもしれません。そこで、どうすればウェブメディア及びプラットフォームをうまく利用できるのか知りたいです。ぜひ皆さん自身の普段の利用方法を教えて下さい。

前田:前提として、ヤフーってNHKさんとは違うんですよね。

政治からエンタメまで、それに検索とか、乗り換え案内とか、そういうサービスまで扱っていて、幅広いお客さんが利用されています。その中で、あくまで中庸であるように心がけています。

個々人のニーズに合わせると、「ちょっと自分向きではない……」っていうのは確かにあると思います。じゃあ自分がどうしているか、というと、柔らかいところはヤフーで知ることができるのですが、解説とか深掘りとかが足りないと思うところもあります。

そのために、仕事中はBS放送なんかをつけっぱなしにしています。言わずもがな、(朝日新聞社の)朝日新聞デジタルもwithnewsも(笑)。

奥山:中立が難しい時代ですよね。興味関心を突き詰めやすいからこそ、合う合わないが目立っちゃうのかな、と思います。だからこそ、中立のニーズも高まっているようにも思うんです。ディフェンシブな意識もありますが、ポジティブな意識もあります。中立サービスも大事ですね。

西村:個人的に、やってみたらいいと思うのは、あえて自分と違う意見の人をフォローすることですよね。「聞きたくない」「心地良くない」と思うかもしれませんが、そういう人もいるんだと、ぬるっと生温かく見守るだけでもいいと思います。

あとは、けしからんツイートをみかけることもあると思うのですが、よくよく見ると、引用リツイートやリプライで反証されているものもあります。スレッドを見るというのも手だと思います。直情的にツイッターを見るというよりも、いろんな意見に接する場としてみていただけるといいなと思っています。


 
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