連載
#23 #乳幼児の謎行動
2歳児、なんで狭い所が好き?遊んでいるだけじゃない…専門医の答え
乳幼児(0歳から就学するまで)は、「なんでそうなる?」と大人からすると不思議に思う行動をとることがあります。2歳くらいになると、洗濯かごなど狭い所が気に入ってしまいがちです。いったいなんでそんなに狭い所が好きなんでしょう? 実はこれ、ただ遊んでいるだけはないのです。小児科医・小児神経専門医の小西薫さんに「#乳幼児の謎行動」を聞きました。
記者
小西薫さん
今まで寝ていた赤ちゃんが立って歩けるようになると、新しい世界を知りたくて家の中を探検します。そして、たまたま中に入れる物を見つけて入ってみると、心地が良いと感じるのでしょう。
これは感覚的な理由が一番大きいと考えられます。触覚の種類の一つに、硬さや柔らかさを感じる「圧覚」があります。適度に強く抑えられる「圧覚」は心地よい、落ち着くと感じると言われています。段ボールや洗濯かごなど囲われているものは、体が密着していて窮屈で適度な硬さがあります。ちょうど、胎内の環境に似ているので本能的に安心できるのかもしれません。抱きしめられたり、手を握られたりする安心感に近いのではないでしょうか。
記者
小西薫さん
1歳を過ぎて歩けるようになった頃は、「心地よい」という理由で狭い所に入っていますが、そこから少しずつ、遊びに発展していきます。隙間からのぞいた景色が普段と違って見えたり、声が響いて聞こえたりと、発見があり「感覚的な遊び」を楽しんでいます。
さらに2歳を過ぎると、「見立てつもり遊び」や「ごっこ遊び」に発展していきます。この頃になると、ただ隠れるだけではなく、かくれんぼをしてみたり、小さな部屋のようにしておままごとをしてみたりと遊びが広がっていきます。1人で楽しんでいたのが、他者との関係も加わっていくことで、コミュニケーション力を付けていくことにつながります。
記者
小西薫さん
基本的に「狭い所は安心する」というのは、大きくなっても幼少期に本能的に感じていたのと変わりません。視覚的、聴覚的なものを遮断できるため、自分だけの世界として、安心できる場所となります。
たとえば、かんしゃくを起こしたお子さんを落ち着かせるため、静かな部屋につれて行くことがあります。日常と少し違う自分だけの場所があることで、気持ちを切り替えたり、クールダウンできます。大人になってもそのような「心の安全基地」というのは必要になってくるのではないでしょうか。
記者
小西薫さん
温かく見守ってあげることが大切です。小さいときは、遊びに変化を与えるため、参加するのも良いでしょう。箱を開けていないいないばあをしてみたり、とんとんとんと叩いてみたりしてみると喜びますね。
一方で、大きくなってから、基地として安心したいために中に入っている場合、無理に外に出そうとしたり、ちょっかいを出したりしないのが一番です。
ただし、特に小さい頃は安全面の注意は必要です。ドラム式洗濯機に閉じ込められて亡くなってしまう事故などもあります。窒息するような、内側から自力で外に出られないような場所には入れないように事前に室内をチェックする必要があります。また、完全に子どもを放っておくのではなく、今どこにいるのかは把握しておきましょう。
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