連載
#17 #乳幼児の謎行動
うちの子、なんでそうなる?アリの行列に釘付け…3歳児がはまる理由
めくるめくファンタジーの世界
乳幼児(0歳から就学するまで)は、「なんでそうなる?」と大人からすると不思議に思う行動をとることがあります。3歳くらいになると、散歩に行くたびにアリの大行列に興味津々。実はただ見ているのではなく、そこにはファンタジーの世界が広がっていたのです。小児科医・小児神経専門医の小西薫さんに「#乳幼児の謎行動」を聞きました。
小西薫さん
実は、アリをただ見ているのではないのですよ。アリの世界のファンタジーのお話に入り込んで、楽しんでいるのです。
アリが列になっているのをじっと見て「こっちに行くかな? あ、あっちに行った」と予測しながら動きを観察しています。
次第に、列になって巣に向かっているのが分かる。動きの法則性に気づきます。自分で予測した通りにアリが動いても楽しいし、違ってもまたそれが発見になり、楽しいのです。
記者
小西薫さん
1歳くらいの子は、まだ感覚的な遊びが好きで、外で散歩をしていても、石ころを見つけて投げるなどその場での物の形や動きを楽しんでいます。
それが、3歳になると、物事に連続性や法則を発見し、ストーリーを感じることができるようになるのです。
絵本を見せたときでも、まだ1歳だとストーリーのあるものにはついていけない。3歳になると、ストーリーを思い浮かべて「次は何かな、その次は何かな」と連続性を楽しめるようになってくるのです。アリの動きもストーリーにして楽しんでいるのです。
記者
小西薫さん
3歳になると、さらに、予想通りに動くだけではなく、予想外のハプニングが起きることも楽しむようになります。
たとえば、電池で動く電車がレールの上を走るおもちゃも子どもは好きだけれど、おもちゃの動きは決まっています。
一方、アリの動きは、予測通りの時と予測外の時が入り混じっています。また、アリの進む方向を予測して、石を置いたらどうなるかな、などと自分が参加してその変化を楽しむこともできます。
さらに、現実の世界を勉強する機会にもなります。たとえば、アリがセミの死骸に群がっているのを見て、「アリが死んじゃったセミをもらってる」と食物連鎖を知る機会になるのです。
昆虫は、子どもにとってとっつきやすい格好の勉強の材料です。
記者
小西薫さん
子どもの視野は大人より狭いですが、その分、目にとまった物を注視しています。
たとえば、赤ちゃんのときは、人の顔全体を見ているのではなく、パーツの目をよく見ています。
絵本だと、大きな絵ではなく隅っこの小さな虫に気づいたりする。なので、アリなど小さなものでも見つけやすいのです。
記者
小西薫さん
知育玩具とは違い、能動的に動いて発見することができる自然は、子どもの成長に良い刺激を与えることができます。
アリという一つの昆虫を観察することで、物語や世の中のルールを学ぶことができます。
与えられて遊ぶのではなく、自分で見つけてその時持っている自分の力を使い、色々確かめているのです。自然の中で遊ぶことは大切なのです。
編集部では「#乳幼児の謎行動」をSNSで募り、乳幼児の「なんでそうなる?」を、同志社大学赤ちゃん学研究センター長で小児科医の小西行郎さん(享年71歳)に聞いてきました。小西さんの妻で、これまで二人三脚で子どもたち発達の研究をしてきた小児科医・小児神経専門医の薫さんが、引き続き疑問に答えます。
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