乳幼児(0歳から就学するまで)は、「なんでそうなる?」と不思議に思う行動をとることがあります。今回の疑問は「リモコンやスマホ、何で興味を持つ?」です。赤ちゃんは、大人のやることをよく観察ししていて、動く原理をすぐ覚えてしまう能力が高いのです。小児科医・小児神経専門医の小西薫さんに「#乳幼児の謎行動」を聞きました。
同世代の子どもがいる人たちと、赤ちゃんのリモコン好きについてちょっと話題になりました。スマホもですが、スマホは両親がよく使っているし、光るし、なんとなく興味を持つ理由は分かります。リモコンの魅力は何でしょうか。よく子どものいたずら用おもちゃも販売されています。リモコンを触ることによって子どもにとっての発見は何でしょうか。
<相談者:1歳の息子いる女性記者(34)>
募集した質問をもとに筆者が小西さんに取材しました。
小西薫さん
大人が頻繁にしていることがトリガーになります。 そもそも子どもは大人がしていることをよく見ています。スイッチを押したらテレビの画面が付く、と予測することが出来るようになります。最初は不思議に思っていても、繰り返してやっていくうちに、テレビの画面とリモコンの因果関係が分かるようになるのです。 大人と同じことをしたい、というのもあります。
「ボタンを押したらテレビがつく」仕組みを理解
記者
小西薫さん
前回、「障子をびりびりやぶる理由」について、ご紹介しました。(『赤ちゃんが「障子びりびり」をやめられない理由 1歳児の鉄板の遊び 』) 子どもの遊びの原点は触覚、視覚、聴覚を使った「感覚的な遊び」です。すでに0歳の赤ちゃんも自ら外界に働きかけてがらがらの音を聞く、ころころと転がるものを見るなどして変化を楽しんでいます。 そして、1歳前後からは、立てるようになりできることが増え、「感覚的な遊び」とさらに「操作的な遊び」を組み合わせて遊べるようになってきます。そうすると、ティッシュをたくさん出したり、障子をやぶいたりします。リモコンが扱えるようになるのは、さらに発達した証拠です。「このボタンを押したらテレビがつく」という仕組みを理解する必要があります。 また、障子をつまんで引っ張るよりも、より細かい手の器用さが必要になります。リモコンはわしづかみでは動きません。力加減が分かるようになってきているのです。
まだ寝ている赤ちゃん 離れた物が動く関連性が分かっている!?
記者
小西薫さん
実はお座りができず寝ている赤ちゃんも、離れた物が動く、という関連性が分かっている可能性があります。 赤ちゃんの手と、ベッドの上にあるおもちゃのモビールを糸でつなげる心理学の実験があります。すると、手を動かしたらモビールも動くのに気づき、糸を外した後でも手を動かすという結果が出ました。糸につながれていたからという関連性までは赤ちゃんは分かっていませんが、手を動かすとモビールが動くという学習をしているというのが分かりました。さらに成長して1歳ごろになると、リモコンとテレビの関係も分かるようになります。



大人と同じことをしたい 「偽物」では満足しない
記者
小西薫さん
ちょっと遊ぶくらいならいいと思います。 その上で、それ以上触ると困る場合「単純な偽物」ではなく、子どもが興味を持ちそうな代替の遊びを提案してあげましょう。単純な偽物、たとえばリモコンの形を模したおもちゃでも、ボタンを押しても変化がない物ですと子どもは満足しません。リモコンと同じ質のもの、押すと何か変化が起きるものを与えてみましょう。たとえば、楽器のキーボードや、ボタンがたくさんあって音楽が流れる絵本なども最近たくさん出ていますね。
記者
小西薫さん
大人は視野が広く、物事を全体的にとらえる能力に長けていますが、赤ちゃんは視野が狭い分、逆に自分の興味ある物に集中し、大人より気づくところがあります。なので、大人がやっていることをよく観察していて、やり方を覚えてしまうのです。
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編集部では「#乳幼児の謎行動」をSNSで募り、乳幼児の「なんでそうなる?」を、同志社大学赤ちゃん学研究センター長で小児科医の小西行郎さん(享年71歳)に聞いてきました。小西さんの妻で、これまで二人三脚で子どもたち発達の研究をしてきた小児科医・小児神経専門医の薫さん(72)が、引き続き疑問に答えます。
みんなの「#乳幼児の謎行動」を見る

withnewsでは12月19日(土)15時30分から、コロナ禍の子どもたちについて考える、緊急トークイベントをオンラインで開催します。
子どもの権利から見たとき、どんな行動をすれば良いのか。
傷ついた子どもたちの心に、どう接すれば良いのか。
児童精神科医の井上祐紀医師と、子どもの権利に詳しい一場順子弁護士をスピーカーに招き、現役高校生や、教育現場と話し合いたいと思います。ぜひ、ご参加ください。