連載
#20 #乳幼児の謎行動
3歳児の「なんでそうなる?」リモコンを隠して〝にやにや〟の意味
実は大人と駆け引き中、専門家に聞く
乳幼児(0歳から就学するまで)は、「なんでそうなる?」と大人からすると不思議に思う行動をとることがあります。2歳ごろ、リモコンやスマートフォンを部屋の隅っこに隠してはにやにや。大人の反応を見て楽しんでいるようです。実は「隠す」行動は、コミュニケーションの発達につながっていたのです。小児科医・小児神経専門医の小西薫さんに「#乳幼児の謎行動」を聞きました。
記者
小西薫さん
物を隠す遊びは、「人と人をつなぐ遊び」です。
物事を推測して、相手の反応を見て自分の行動を考えることにつながるため、コミュニケーションの発達につながります。受け身ではなく、能動的に自分から遊びを企画できるようになった証拠です。
記者
小西薫さん
2~3歳ごろがブームになります。2歳から3歳になると自我の発達とともに、さらに進化します。
2歳ごろは、「隠したら大人が探しにくる」と分かり、物ごとの見通しが立てられるようになります。3歳ごろになるとさらに、「ここに隠すと見つからなかった」と大人の動きを見ながら、臨機応変に隠す場所を変えて、駆け引きができるようになります。
記者
小西薫さん
物を隠す遊びができるようになるのは「短期記憶」ができるようになってからです。
「短期記憶」が分かるゲームがあります。片方の手に小さいおもちゃやあめ玉を持ち、どっちの手に入っていたか、両手をにぎってかくしてから、当ててもらうのです。どっちに入っていたか分かるようになるのが生後10~12カ月ごろになります。
もっと大きくなって1歳を過ぎ記憶時間が長くなると、一度両手を体の後ろに隠した後になっても、覚えているようになります。
幼いときには、目に見えないものは存在していないと感じています。8カ月ごろになると大人がいなくなったら不安で、家中ついてくる「後追い」をするのはそのためです。10カ月ごろになると、目の前に見えなくても、存在はしている、ということが理解できるようになるため、「後追い」が少し減り、物を隠す遊びも楽しくなってくるのです。
記者
小西薫さん
大人の反応を見て楽しんでいることが、にやにやとしてあらわれます。
2歳ではわざと見つかるように「ここだよ」とすぐにどこに隠したのか教えてしまいます。
しかし、3歳になると更に進化します。成長すると大人の顔色をうかがって、駆け引きもできるようになります。「どこかな?あそこかな」と言いながら大人の反応を見て楽しむようになるのです。
記者
小西薫さん
物を隠す遊びがさらに進化すると、自分が隠れる「かくれんぼ」ができるようになります。「鬼」に見つからないように隠れる」というルールが理解できるようになる3歳ごろから楽しめるようになります。
さらに発展していくと「鬼ごっこ」が好きになります。より、人間の関係性も広がり、活動量も増えていくためです。大人と室内で遊んでいたのが、お友達と一緒に、体を使って外で遊ぶことが楽しくなってくるのです。
ちなみに、私が子どもの頃は「下駄(草履)隠し」という遊びをお友達としていました。鬼の分からない場所にそれぞれの片方の下駄や草履を隠し、鬼はそれを探すという鬼ごっこの遊びの一つです。昔から親しまれていたのですね。
記者
小西薫さん
子どもの遊びには、自分が思い描いているシナリオがあります。大人との駆け引きを楽しんでいるのだなというのを理解して、乗ってあげてください。なので、子どもが隠したものがどこにあるかすぐに分かっても、まずは付き合って一緒に楽しんでください。そして時にはすぐに見つけてしまうことも必要です。子どもの予測を裏切るような多様な対応をすることで駆け引きを楽しむことができます。
大切なものを隠されたら、いけないことだ、ということを伝えなければなりません。線引きは必要です。
1/7枚