連載
#18 #乳幼児の謎行動
「車輪もの」の魔力…子どもが〝必ず〟電車にハマるこれだけの理由
成長に合わせた「幅広い遊び方」こんなに
乳幼児(0歳から就学するまで)は、「なんでそうなる?」と大人からすると不思議に思う行動をとることがあります。車や電車のおもちゃ、子どもたちは必ず一度はハマります。実は、車も電車も赤ちゃんから大人まで引きつける魅力が隠されていたのです。小児科医・小児神経専門医の小西薫さんに「#乳幼児の謎行動」を聞きました。
小西薫さん
赤ちゃんから成長していくにつれて、できることが増えていき、できるようになったばかりの自分の力をどんどん試したくなり、遊びも広がっていきます。
0歳代は、動けなくても、手を伸ばして物を触ったり、見たり、五感から刺激を受けて「感覚運動遊び」をします。そして、1歳ごろから、自分から物を動かす「操作的な遊び」、そして2歳に近づくと「見立てつもり遊び」つまりごっこ遊びというようにどんどん遊びの領域が広がってきます。どの領域にも幅広く、長くおつきあいができるおもちゃが、車輪のついている電車や車なのです。
記者
小西薫さん
赤ちゃんは、動くものや回るものが大好きです。たまたまタイヤを触ったときに、ころころと回ります。「感覚運動遊び」として車輪はとっつきやすいのです。また、基本的な形がありながらその色や形にバリエーションがあるため、奥深さ、多様性があるので飽きないのです。
今度は1歳ごろから「操作的な遊び」が始まると、自分が走らせて動かして、動く、ということそのものを楽しんだり、手の感触を楽しんだりしています。
そうしているうちに、実際に車や電車に自分が乗る機会が訪れます。すると、車窓から景色が見えたり、運転士さんが見えたりと、車や電車を身近に感じ、どのような物なのか理解するようになります。
それと同時に1~2歳ごろ、ミニチュア版のおもちゃで運転手のつもりになって「見立てつもり遊び」が始まります。部屋中に積み木を並べて線路を作ったり、紙に道を描いたり、空想の世界を膨らますこともできます。車や電車は現実世界でも乗ることで楽しめるし、空想でも楽しめる素材です。
また、車や電車はよく折り紙や工作のモチーフになることも多いです。車輪がついていて形状がはっきりしていますが、バリエーションは豊富なため、再現しやすく創造性も必要になるため格好の材料になります。
記者
小西薫さん
他の物に興味を持つようになるため、大体は幼児期で卒業しますが、大人になるまで大好きな人もいます。車や電車は、形状が同じだけどたくさんバリエーションがあるため、コレクターの魂がある人にはちょうどいいのです。
さらに、図鑑が好きで研究者気質のある人は、電車の作りなど、工学的な視点でも好きになっていきます。年齢がより高くなっても様々な楽しみ方があるのです。
記者
小西薫さん
子どもは自分から能動的に色々と遊び方を見つけていきます。大人は「黒衣」のつもりで、ちょっとアイデアを出してあげたり、困っていたらやり方を教え、道筋だけ分かるようにしてあげたりするつもりでいましょう。子と同じ目線でその場で一緒に楽しんでください。
記者
小西薫さん
編集部では「#乳幼児の謎行動」をSNSで募り、乳幼児の「なんでそうなる?」を、同志社大学赤ちゃん学研究センター長で小児科医の小西行郎さん(享年71歳)に聞いてきました。小西さんの妻で、これまで二人三脚で子どもたち発達の研究をしてきた小児科医・小児神経専門医の薫さんが、引き続き疑問に答えます。
1/287枚