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駄菓子の「終売情報」なぜバズる? 「物じゃない」から残る価値 

「なんだ、このすごい食べ物は!」世界が驚いたDAGASHI

目次

「甘い思い出をありがとう!!」 駄菓子の生産終了を知らせる「終売情報」が、たびたびツイッターで話題になっています。人々のライフスタイルが変わる中、ひとつ、またひとつと消えていく、懐かしい「駄菓子」たち。しかし、駄菓子業界を見に行くと、生き残りをかけた「新たな価値づけ」に挑んでいました。

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外国出身の記者と、日本出身の記者が、一つのテーマで取材をしたら、何が見えるのだろう?
日本の文化やニュースを海外に発信している英字メディア「Grape Japan」と、withnewsの共同企画「News Crossing」。第1回のテーマは、「駄菓子」です。
消えゆく日本の「伝統文化」なのか? それともまったく新しい価値が見えてくるのか。多様な視点から、「新しさ」を感じられる、カルチャー交差点にご案内します。
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「買い物できない子どもたち」 駄菓子屋とともに失ったものは

【記事は英訳もあります】(Grape Japanのページに移動します)→
#1: Japan’s “penny snack” culture [News Crossing]
#2: Dagashi review: We tried 7 flavors of Umaibō, Japan’s top “tasty stick” snack [News Crossing]
#3: The current state of dagashi: What Japan is losing along with its dagashi shops [News Crossing] 

少しずつ失われるもの

「日本一のだがし売場/シカダ駄菓子岡山店」(@dagashi_okayama)のツイートが話題になりました。

「アメハマの10円あたり付きキャンディ、、甘い思い出をありがとう‼︎」

廃業で販売できなくなるお菓子の情報でした。

7000件以上もリツイートされました。「今度はこの飴か……」「子供の頃の思い出が少しづつ失われていく」と衝撃が走りました。

駄菓子はただの「物」じゃない

終売情報を発信しているのは、岡山県瀬戸内市にある菓子卸70年の「株式会社大町」です。店舗面積が約2500平米と「日本一」を誇る、直営店を経営しています。

ツイッターを担当する安達勇治副社長は、過去につぶやいたお菓子の「終売情報」をそらんじました。

「カレーせんべい」(雷屋)

「面白ボーイ」(まるたけ食品工業)

「さくらんぼの詩」(UHA味覚糖)

どれも、反響を呼びました。
終売情報という、一見、ネガティブな告知。
「でも、ある日、突然なくなったらさみしいじゃないですか。特に駄菓子は、何十年も、ずっと買ってきてくれた人がいる。支えてきてくれたファンに、お別れをする機会を持ってもらいたいと思うんです」
安達さんは「終売情報」のツイートに込めた思いを語りました。

そんな終売情報に反応し、一部では、買い占めや転売をする人もいると言います。「本当に欲しい人に届かなくなってしまうんじゃないかと、実は悩みながらやっている」

一方で、毎回、終売情報は多くの「思い出」とともにリツイートされます。「300円以内の予算でも、遠足には必ず持っていった」「口に入れると小学生の頃の自分に戻れる」「初恋の相手にもらったお菓子」

安達さんは、反響を見るたび、「駄菓子は物じゃなくて、思い出とともにある。だから、『お別れ』の時間は必要なんだ」と感じると言います。

「非効率」こそが価値に

日本では、毎月のように消えて行く駄菓子があります。一個10円から30円の駄菓子。家族経営や、小さなメーカーも多く、「機械が壊れた」ことなどから、突然廃業する
こともあるそうです。

それでも、廃業すること自体、ほとんど誰にも気づかれません。人件費をかけて売るには利益が少ない駄菓子は、利用者が多いスーパーなどの売り場では、そもそも陳列されることが少なくなったからです。

株式会社大町では、あえて、棚から消えていくものを集めて、売ってきました。廃棄される寸前だった訳アリ商品を集めた「もったいない広場」の試みも、その一つだと言います。

結果として、スーパーでは見ない商品ばかりが並ぶ、ユニークな売り場を作り出してきました。「こんな商品見たことない」「懐かしいね」。遠方からや、親子3世代で買い物に来てくれる人などが、後を絶ちません。

「駄菓子は笑顔につながる。感動を生み出す『非効率』を追及していこうと思うんです」と安達さんは力を込めました。

「もったいない広場」などユニークなコーナーを設けた「日本一のだがし売場」
「もったいない広場」などユニークなコーナーを設けた「日本一のだがし売場」 出典: 株式会社大町提供

新しい価値、世界にもアピール

駄菓子は「子どもを喜ばせるためのお菓子」です。その特性上、なかなか値上げもできません。そして、もちろん、安全安心なものを作らなければいけない。大手の製菓メーカーとは違い、「駄菓子メーカー」は中小・零細です。時代とともに、相当な企業努力を強いられてきました。

衰退する「駄菓子文化」を盛り上げようと、駄菓子メーカーや、玩具メーカー約160社が、2015年に「DAGASHIで世界を笑顔にする会」を立ち上げました。
中小・零細のメーカーが苦手とするPRなどの分野で支援し、業界を活性化させていこうとしています。

会は毎年、3月12日を「駄菓子の日」として記念日登録し、大切な人に「駄菓子を贈り、笑顔を交換しよう」と呼び掛けています。
6年目の今年は、会員企業から駄菓子12万個を集め、全国320カ所の幼稚園・保育園、小学校、児童養護施設などへ送りました。「伝統的」なイメージとは真逆の、オンラインのイベントにも取り組みました。

世界へのアピールも進めています。2015年、2018年には、フランスで日本文化を紹介する「サムライジャポン」のイベントに参加。10~30円という価格設定のお菓子はフランスでは珍しいようで、吹くと音が鳴る「笛ラムネ」など、安くておいしくて遊び心もある駄菓子に、「なんなんだ、このすごい食べ物は!」と注目を浴びたそうです。

世代や国境を越えて、「笑顔を生む」菓子として、日本で、新たな価値付けを進めて行こうとしています。

駄菓子だけじゃなく、ユニークなゲームも人気を集めた
駄菓子だけじゃなく、ユニークなゲームも人気を集めた 出典: 「DAGASHIで世界を笑顔にする会」提供
フランスでも子どもたちに人気だった駄菓子
フランスでも子どもたちに人気だった駄菓子 出典: 「DAGASHIで世界を笑顔にする会」提供
 

日本の文化やニュースを海外に発信している英字メディア「Grape Japan」と、withnewsの共同企画「News Crossing」。第1回のテーマ「駄菓子」について、駄菓子屋さんを交えたトークイベントをします。

FacebookLiveはこちらから: 7月16日13時スタート
(~13:30)日本の「だがし」って、なんですか?
(~14:00)日本と世界の目で見た「だがし」の価値

【話す人】
埼玉県にある「駄菓子屋いながき」の店主、アンディ宮永さん
Grape Japanの記者 ゼビア・ベンスキーさん(フランス系アメリカ人)
withnewsの記者 松川希実

どなたでも、ご視聴いただけます。無料です。

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