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連載

#227 #withyou ~きみとともに~

大人視点の「しっかりした子」って? 「意味わかんない」と言った彼

勝手にジャッジしていませんか?

「しっかりした子」、大人フィルターで見ていませんか=写真はイメージ
「しっかりした子」、大人フィルターで見ていませんか=写真はイメージ 出典: pixta

目次

中高生が言葉や態度で自身を表現できる場面に遭遇したとき、大人はこう表現するのではないでしょうか。「中学生なのによく考えてるね」「高校生なのにしっかりしてるね」――。生きづらさを抱える10代に向けての企画「#withyou」を3年前から続け、中高生を中心とするZ世代への取材を重ねてきた中で感じているのは、彼らの多くは、大人が想像する以上に思考を重ね、時にそれが言葉としても表現できているということです。ネットで彼ら彼女らの声に直接、触れられるようになった時代だかこそ、「大人フィルター」で見ていないか。我々が勝手にジャッジする裏で、実は向き合えていないことがあるのではないか。これまでの取材から、考えました。

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対面、SNSのメッセージ機能…取材方法は多様

「#withyou」は、学校生活や家族関係など様々な場面で生きづらさや悩みを抱く10代が、相談先につながることができるようになることを目的に、2018年から続けている企画です。
これまで、10代の生の声を聞き取り、悩みの共有を促したりする記事などを発信してきました。

私が中高生への取材をする手段は様々です。
対面はもちろん、インスタやTwitter、TikTokのメッセージ機能を使ったり、LINE、Zoom、電話、メールの場合もあります。
取材を受けてくれる本人が希望する取材方法に合わせるかたちをとっています。

そもそも中高生が社会人、しかもメディアの記者を相手に話をしてくれること自体、一つ大きなハードルを超えてきてくれていることは間違いありません。結果的に、私が接点を持てるのはそのハードルを超えられた中高生になりますが、それでも、多くの同世代に通じる空気感に触れることはできます。

言葉を持ち得た高校生たち

例えば今年、「この割れ切った世界の片隅で」というタイトルでnoteに投稿したコラムがインターネットで拡散された、長崎の県立高校3年生の鈴さん。

彼女は「この割れきった世界の片隅で」で、自分の生まれ育った環境を振り返りながら、教育格差(本人は「分断」と表現)について自分が考えている現状を整理しました。

このコラムを読んだことをきっかけに鈴さんに取材をした際、「どうしてこんなにうまく言語化できるんですか?」と聞いてみました。
すると、彼女の場合は、昔から自分が感じたことについて「なぜそう感じたのか」というのを分析してノートに書き綴る習慣があるのだと答えてくれました。
もし彼女にその習慣がなく、思いを表現する手段を持ち得ていなかったら、彼女の世界観は埋もれたままで、大人がそこに気付くこともできなかったかもしれません。

また、自分の感情を日常的に整理しているという意味では、先日取材した、虐待・ネグレクトを受けた過去があり、現在は里親の元で暮らしているという高校3年生も同じです。(withnews《4歳で里親へ…実母の家に行った帰りに起きたこと SOS出せる環境》)

つらかった過去のことも、いま幸せなことについても、感情的になることなく率直に語ってくれたその高校生は、気持ちを整理するために日記をつける習慣があると言っていました。
ノートに思いを綴ることで表現方法を得てきたという高校生もいた=写真はイメージです
ノートに思いを綴ることで表現方法を得てきたという高校生もいた=写真はイメージです 出典:pixta

表面上だけではない「その先」を

その一方で、その時は言葉にできていなくても、彼ら彼女らなりに社会に向き合っていることも忘れてはならないと感じています。

withnewsでは今年7月ごろ、インターネットで「新型コロナウイルスの影響による休校明けの不安」を聞き取るアンケートをとりました。
そのアンケートに答えてくれた高校生の一人にLINEのビデオ通話で取材をしたときのことです。

都内の高校に通っているというその男子生徒は、取材中、何度も何度も「意味わかんないですよ」と繰り返しました。
聞いていくと、「意味わかんない」のは、休校中の学校の対応や、大人の社会が動いているのに自分たちの生活は通常と違っていた現状に対してです。

さらに彼の思考を探ろうと、画面の向こうにいる彼と1時間以上話をしました。

すると、徐々に彼の脳内にあるのは不満や疑問だけでないことがわかってきました。
「意味わかんない」ことを自分なりに理解できるようになりたいと思っていること、それを理解するために勉強がしたい、だから大学に進学したいと思うようになった――。そんな気持ちを吐露してくれたのです。

もしかしたら、彼の「意味わかんないですよ」という言葉をそのまま捉えるだけではたどり着かなかったかもしれない「その先」を聞くことができ、彼の思考の深さに気付かされました。(withnews《文化祭中止「学校来る意味なくなった…」コロナで感じた「おかしい」》)
「意味わかんない」の先に…=写真はイメージです
「意味わかんない」の先に…=写真はイメージです 出典:pixta

大人の価値観に縛られていないだろうか

インターネットがなかった時代、「しっかりしている」子どもを取材するのは、何かの大会で活躍したり、ボランティア団体などで活動していたりするような場面が多かった気がします。

もちろん、そういう場面でも彼ら彼女らの本音に触れることはできました。でも、やはり、そこには「大人フィルター」があったと感じています。

今はnoteやツイッター、インスタなどで、直接、子どもたちの声に触れることができます。

だからこそ、ネットに対しても「大人フィルター」で見ていないか、自分の価値観に縛られていないか、注意する必要があります。

男子高校生が連発する「意味わかんないですよ」の根っこにたどり着くのは、大変でした。だけど、ようやく、彼の本当の思いに触れられた時、大人が書いたどんな記事よりも大切な気づきがありました。

大人は、子どもたちの言葉や態度以上のことを聞こうとする姿勢、時間を持てているでしょうか。

そんなことを自問しながら、これからも中高生の言葉に耳を傾けようと思っています。

 

withnewsでは、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou ~きみとともに~」を続けています。
 


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