連載
野生の美顔ローラーがうろつく、過酷な美の旅 マンガ「妄想旅行記」
美容にパラメーター全振りの国

小山コータローの妄想旅行記「ビューティフル諸島編」

小山コータロー33歳。おとめ座、O型、甘いものがだだ~いいすすきき!(鍾乳洞にこだましている様子)
悲しいかな肌はカサカサ、皮膚はダルダル、奇声を上げてはニヤニヤしてばかりの日々となってしまいました。年齢には勝てませんね。
まだ首の座っていない若い頃(16歳~18歳)はシャワーを浴びれば水をはじき、風呂上りに保湿なんかしなくても、擬人化したウォーターサーバーかと思うほどビショビショでした。鼻がコックになっていました。
男といえどお肌の劣化が気になってきたので、そろそろ美容に気を使わないといけないなと思いはじめました。インターネットを買ってきて調べたところ、とても素敵な場所を発見しました!
『ビューティフル諸島』です。
名前の通り、美しさを追求している国とのこと。美容に効果のあるフルーツや魚、野生の美顔ローラーがうろついているなど独自の環境を形成している島国で、住む人たちの肌年齢は平均3歳と言われているそうです。
今回も善は急げと、隣人の有給休暇を使ってビューティフル諸島へ行ってきました。
さっそく空港に用意されたウエルカムドリンク(乳液)を飲み干し、美容にいいものを扱っている屋台が並ぶ『ビューティフルストリート』へ出かけました。


そうして目に留まったのは『保湿ドッグ』です。見た目はほとんどホットドッグなのですが、持ってみるとパンが山芋とオクラのキメラくらいヌルヌルでした。
店主に聞いてみると、肌の保湿にいい油をパンに吸わせているらしく、食べる前にパンを肌に押し付けて保湿するそうです。美容もここまで来たかと思いました。保湿ドッグという商品名にしておきながら食べることと保湿することを切り離して考えているとは恐れ入ります。
しっかりとパンを顔に押し当ててから、一口パクリ!口の中にひろがる油は、僕の体が瞬時に『これは体内に入れてはいけないね』と判断するほどまずかったです。
保湿と引き換えに胃がやられてしまったので、なにか飲み物はないかと歩いていると、タピオカドリンクのようなマークのお店を見つけました。店主に、得意の尻文字で注文すると、店主はタピオカドリンクのようなパッケージのもののフタを外し、コットンにしみこませ、僕の顔に塗ってくれました。お疲れ様といわんばかりに黒飴を渡してきたので、タピオカドリンクを偽装した立派な詐欺だと確信しました。
屋台を3件回って、まともな食べ物は1つしかありませんでしたが、肌年齢が3歳になったと思えば、あまりつらくありませんね。
【総括】
ビューティフル諸島、その名の通り美容に全振りして五角形のパラメータが一本の線みたいになってるひどい国でした。古くからこの国には『 肌年齢 わかっているから 測らんね 』ということわざがあります。小2が考えた標語では?と思いましたが、それくらい自身に満ちあふれたエネルギッシュな国ということですね。40歳になったらまた行こうと思います。
<こやま・こーたろー>
漫画家。「違和感」を作風とし、漫画家のSNS「コミチ」やTwitterで毎日4コマ漫画を発信中。前後関係を無視したセリフや、突拍子もない理不尽な展開が得意。Twitterアカウントは@MG_kotaro。