連載
「学校が死ぬほどつらい」理由は言わなくていい 不登校新聞編集長
中1の夏休み前、友達から無視されるようになりました。それまでは学校生活も楽しく、友達もたくさんいました。だから、いじめられている自分を知られたくなくて親には言えませんでした。夏休み明け、無理して学校に行きましたが、誰ともしゃべることができませんでした。帰り道、駅のホームで午後10時半ごろまで過ごし、「死ぬしかないのかな」という思いもよぎりました。親に理由を言わずに学校を休みたい時、どうすればいいのでしょうか。(東京都浪人生女子18歳)
まずお伝えしないといけないのは、大人の場合は、会社を休む時、有給休暇(給料が支払われる休み)などがあり、理由を言わずに休むこともできます。でも、子どもは基本的に親や学校に理由を言わないといけない。学校のほうが過酷と言えるかもしれません。
親に言い出せず無理して学校に行って、心身に支障をきたす人もいます。いま、社会では「死ぬぐらいだったら学校を休んで」という雰囲気がありますが、実際は、休む選択はハードルが高く、追い詰められた末にやっと休めたという子も多いのではないでしょうか。
私は中学2年の時から、不登校になりました。先生への不信感や友達との関係がこじれたことがきっかけです。学校を休む前の半年間は、無理して学校に行っていました。踏切の音が聞こえたり、マンションの上階に立つと吸い込まれそうな気持ちになったり……。今思えば、自分で何とか解決しようと頑張って、自分の身を削ったなと。
不登校を機に親子関係が改善するケースもあります。話してみると、すれ違っていた思いが解消されることもあります。私の場合、泣いているのを見た母親が「明日学校どうする?」と尋ねてくれ、「学校に行けない、行きたくない」と言うことができました。
親は子どもの変化にきっと気づいて心配しています。でも、一歩踏み出していいのかわからず様子をみているかもしれません。本当は親から先に動いて「学校よりあなたが大事」と伝えてほしいのですが。
どれだけ親に迷惑かけても心配かけてもいい。学校に行きたくない理由を言っても言わなくてもいい。自分の命を守ることを一番に考えてください。
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著名人や専門家が10代の悩みに答えるこの企画は、電話などで10代からの相談を受け付けているチャイルドラインの高橋弘恵専務理事に協力いただいています。チャイルドラインの電話相談には2018年度、のべ19万人から相談があり、この企画の相談内容は実際に寄せられる相談をもとに、架空の内容を設定しています。また、回答はあくまで回答者の個人的な見解であり、悩みへの一意見です。
<石井志昂(いしい・しこう)>
19歳からNPO法人「全国不登校新聞社」(東京)にスタッフとして参加。2006年から編集長を務める。不登校新聞は月2回、8ページのタブロイド判(3100部)とウェブ版を発行。
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