連載
「不登校でも夢はかなう?」不登校新聞編集長が心配する「落とし穴」
いじめが原因で、小2のころから不登校になりました。上級生からからかわれ、全校朝会が嫌でした。保健室やフリースクールにもあまり通えず、友達がつくりづらく、孤立していき、精神的にも苦しくなりました。いま、家にいるのがとても心地よく、ひきこもりぎみです。将来、俳優になりたいという夢があります。不登校でひきこもりの自分が俳優をめざせるのかなとも思います。このままでいいのか将来が不安です。(東京都 高校2年女子17歳)
不登校だったから夢がかなわないということはありません。不登校やひきこもり経験者で、俳優や声優、漫画家、宝塚歌劇団への夢をかなえた人はたくさんいます。不登校新聞の取材に、不登校経験や当時思っていたことが自分の原型をつくったと語ってくれた人もいます。
夢をかなえた人は、自分が何をめざしているのか本質を捉えている人が多いなと思います。そこに向かって歩んだ人は、夢の形が変わっても夢をつかんでいるように思います。夢は職業ではなく、なぜそうしたいのか、なぜそこをめざすのかが大切です。
私も不登校経験者です。学校に行っていないと、自分が何も持っていない、手持ちがない気持ちになります。だから形をすごく追ってしまうことがある。
たとえば元気が出てくると「この高校に行く」と自分で希望を語ることもありますが、逆にその希望が重しになることがあります。「こうしなきゃ」とか「こうあるべき」に振り回されるのではなく、本当にしたいことは何かを追いかけてください。そうすれば、夢の形が変わっても、夢をかなえられます。
不登校の10代の男の子が1年間掛けて作り出した短い歌詞が秀逸でした。「やりたいと思ってやらなかったことは、本当はやりたくないことだったんだな」
これを聞いた時、腰が抜けるほどの衝撃を受けました。そうです。焦りやプレッシャーで動くのではなく、何かに突き動かされて行動したくなった「やりたいこと」が大切なのです。
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著名人や専門家が10代の悩みに答えるこの企画は、電話などで10代からの相談を受け付けているチャイルドラインの高橋弘恵専務理事に協力いただいています。チャイルドラインの電話相談には2018年度、のべ19万人から相談があり、この企画の相談内容は実際に寄せられる相談をもとに、架空の内容を設定しています。また、回答はあくまで回答者の個人的な見解であり、悩みへの一意見です。
<石井志昂(いしい・しこう)>
19歳からNPO法人「全国不登校新聞社」(東京)にスタッフとして参加。2006年から編集長を務める。不登校新聞は月2回、8ページのタブロイド判(3100部)とウェブ版を発行。
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