MENU CLOSE

連載

#4 ラグビーW杯の楽しみ方

ラグビーW杯、日本のベストシナリオとは 鍵を握る「10.13決戦」

初の地元開催のラグビーW杯に挑む日本代表
初の地元開催のラグビーW杯に挑む日本代表 出典: 朝日新聞社

目次

 日本ラグビー協会広報部長の藪木さんに、9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の楽しみ方を教えていただくインタビュー。4回目は、長い長い苦しみを経て前回大会で日本代表がみせた奮闘が、世界のラグビー関係者にもたらした空気の変化についてうかがいました。あの試合後に五郎丸選手がみせた涙の意味も。そしていよいよ日本大会を迎えるにあたり、藪木さんが思い描く「ベストシナリオ」も聞かせていただきました。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格
【V7戦士に聞く ラグビーW杯の楽しみ方(連載)】
ラグビーW杯の歴史、「ブルームフォンテーンの悪夢」が衝撃的だった
ラグビー日本、記録的大敗からはいあがっても……再び壁になったNZ
記録的大敗を経て、史上最大の番狂わせ 「劇薬投入」で変わった日本
ラグビーW杯、日本のベストシナリオとは 鍵を握る「10.13決戦」
藪木宏之(やぶき・ひろゆき) 1966年山口県生まれ。明治大学をへて88年に神戸製鋼ラグビー部に入る。神戸製鋼が89年~95年に日本選手権7連覇を果たしたころの主力メンバーとして活躍、98年に引退。企業人としては広報畑を歩み、2016年4月に日本ラグビーフットボール協会へ出向。現在、同協会の広報部部長。
藪木宏之(やぶき・ひろゆき) 1966年山口県生まれ。明治大学をへて88年に神戸製鋼ラグビー部に入る。神戸製鋼が89年~95年に日本選手権7連覇を果たしたころの主力メンバーとして活躍、98年に引退。企業人としては広報畑を歩み、2016年4月に日本ラグビーフットボール協会へ出向。現在、同協会の広報部部長。

前回3勝も、決勝Tには進めず

 

志村

前回2015年のイングランド大会初戦で、日本はついに悲願のW杯2勝目を飾りました。しかも相手は強豪の南アフリカ(19年1月現在世界ランク5位)。

それは20年もの間、苦しんできたラグビー関係者にとっては、ほんとうに「ありえない」ほどの出来事だったことを学ばせていただきました。

 

 

で、前回は結局……。

 

藪木

3勝しました。2戦目はスコットランド(同7位)に負け、サモア(同16位)に勝ち、米国(同12位)に勝って3勝1敗です。

ただし、勝ち点差で決勝トーナメントには進めなかった。

 

 

ああ、3勝1敗でなんで進めないの? って感じたことを思い出しました。

 

 

南アフリカとスコットランドと3勝1敗で並んじゃったんですよね。

ラグビーの場合、1試合に4トライ以上取ると勝ち点にボーナスが入ったりとか、いろいろな仕組みがあるので……。
米国戦に勝利し、喜ぶ日本代表
米国戦に勝利し、喜ぶ日本代表 出典: ロイター

中3日はきつい。試合日程にも力関係が……

 

 

第2戦のスコットランドは厳しかったですか?

 

 

試合が、南アフリカ戦から中3日しか空いてなくって、体力的にきつかったと思います。

やっぱり、日本ってまだそういう扱いをされてしまうチームなんですよ。

 

 

ああ、南アフリカやニュージーランド(同1位)ならそうはならないんだけど。まあ弱い日本だからいいだろうみたいな。

 

 

強豪国なら1週間は間隔が空きますね。

 

 

試合日程の組み方にも、そういう力関係が影響するわけですね。

 

 

スコットランドには10対45で負けた。で、その負けが最後に勝ち点に大きく影響してしまった。
スコットランドに敗れた日本代表
スコットランドに敗れた日本代表 出典: ロイター

 

 

でも、1大会で3勝稼いだのはすごいですよね。通算でW杯4勝。

勝てたサモアと米国は日本と同じ、いわゆるティア2の強さですか?

 

 

はい。過去も勝ったり負けたりの関係です。

 

 

W杯で戦ったことはあったんでしょうか。

 

 

米国は第1回大会で負け、サモアは第4回大会で負けていました。

 

 

素人目には、南アに勝てたんだから勝つだろうと思っちゃいますが。W杯はそんなに簡単ではないのでしょうね。

 

 

あのときは予選の最後に、スコットランドとサモア、日本と米国が戦って、スコットランドが負けて日本が勝ったら決勝トーナメントに進めたので、私も現地に行ったんです。

残念ながら両方勝ったのでスコットランドが進むことになったんですけど。ただ試合をみると、米国戦はもう安定した戦いぶりでしたね。
米国戦のワンシーン
米国戦のワンシーン 出典: ロイター

五郎丸選手の涙

 

 

これまでの日本の印象とは違った。

 

 

ぜんぜん違いました。

 

 

五郎丸歩選手が試合後のインタビューで泣いたのは、最後の米国戦の後でしたよね。

あれはラグビーをよく知らなくてもジーンと来ました。

 

 

いろんな思いがあったと思います。

彼個人がフューチャーされすぎていたり、エディさんとのきつかった練習のことだったり。やりきった感もあったと思います。
活躍した五郎丸歩選手
活躍した五郎丸歩選手 出典: ロイター

日本を見る目が変わった

 

 

しかし、勝てて本当によかったですね。

 

 

前回がなかったら本当に、今どうなってたんだろうという感じです(笑)

 

 

あれが4連敗だったとしたら……。

 

 

たぶん、今年の大会で、日本戦の観客を集めることすら難しくなったんじゃないですか。

 

 

09年に日本への招致が決まったとき、日本弱いじゃん、本当にできるの? みたいな雰囲気だったというワールドラグビーの人たちの反応も変わりましたか。

 

 

変わりました。
本当に変わりました。


17年にプールドロー(組み合わせ抽選会)を京都迎賓館でやったとき、各国代表の監督がそろって来て、ワールドラグビーの会長も来たのですが、彼らが『ジャパン』と口にするときのリスペクトは随所、随所で感じましたね。
2017年5月10日に京都迎賓館で開かれた組み合わせ抽選会の様子=Getty Images/World Rugby
2017年5月10日に京都迎賓館で開かれた組み合わせ抽選会の様子=Getty Images/World Rugby 出典: 朝日新聞

 

 

以前はそういう雰囲気はなかった?

 

 

まったくなかったです。あ? ジャパン? という感じでした(笑)

 

 

15年大会の後も強豪といい勝負ができているんですよ。

世界というか、ティア1が近くなってきた実感があります。

 

 

かつては強豪国の眼中にはなかった日本が、ちょっと頑張らないと勝ちにくい存在になってきたと。

 

 

どこのチームにとっても、研究しないといけないチームになったとは思います。

ベスト8以上を目指す日本

 

 

そして、いよいよ今年のW杯を迎えます。

 

 

はい。だから期待は高いです。
日本の目標はベスト8以上。

各予選プールから2チームが勝ち進めるので、つまりは決勝トーナメント進出です。おそらくロシア(同19位)、サモアには必ず勝ち、スコットランドかアイルランド(同2位)のどちらかには勝たないと、決勝トーナメントにはいけません。

 

 

今回、中3日の試合間隔はないのですか。

 

 

はい。1週間は空いています。

 

 

おお、やはり開催国だけに。

 

 

スコットランドが予選プールの最後に日本と対戦するんですが、彼らのその前の間隔が中3日なんです。
ラグビーW杯2019日本大会、予選プールの組み合わせ
ラグビーW杯2019日本大会、予選プールの組み合わせ 出典:公式ページより

因縁のスコットランドとの決戦に持ち込めるか

 

 

おお、前回と逆の立場なんですね。

アイルランドも強いんですよね。

 

 

世界ランクは2位ですが、今たぶん世界でいちばん強いです。この前、1位のニュージーランドにも勝ちました。

 

 

昔からそんなに強いんですか。

 

 

これまでW杯で優勝したことがないんですけど、ここ3年ぐらいですね。急に強くなったのが。

 

 

ロシアとサモアはどうですか。

 

 

ロシアはとにかく身体がでかいのですが、戦術とかはあまりないです。サモアは乗っているときは怖いです。

 

 

それならアイルランドには、仮に負けるとしても出来るだけ点差を離されないようにくらいついて……。

 

 

そうですね。

 

 

スコットランドにはぜひ勝ちたいですね。

 

 

もちろん4連勝すれば予選は1位通過。これが最高です。

たとえいまのアイルランドに勝つのは厳しいとしても、スコットランドもアイルランドに敗れ、日本と一緒に2勝1敗で並んだとすると、予選の最終戦である日本対スコットランドが10月13日に横浜市の日産スタジアムであります。

そこで、満員のお客さんの応援が背中を押してくれる中でスコットランドに挑む、というのが、私の中でのベストシナリオです。
スコットランド代表チーム
スコットランド代表チーム 出典: ロイター

 

 

しかもスコットランドは前回、日本の決勝トーナメント行きを阻んだ因縁の相手。

 

 

ええ。そこでみなさんにぜひ熱狂してほしいのです。

 

 

1995年の記録的大敗からの日本ラグビーが歩んできた歴史を教えていただいて、前回大会で勝ったことの重みがより理解できました。

今年9月のW杯に対する見方が、もうずいぶん変わってきたような気がします。またぜひ、もっと教えてください。

 

 

はい、もちろんです。

連載 ラグビーW杯の楽しみ方

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます