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連載

#2 ラグビーW杯の楽しみ方

ラグビー日本、記録的大敗からはいあがっても……再び壁になったNZ

2011年W杯の開幕前に報道陣に意気込みを語る当時の日本代表メンバーら。日本への19年大会誘致も決まってのぞんだ大会だったが……=2011年9月、ニュージーランド
2011年W杯の開幕前に報道陣に意気込みを語る当時の日本代表メンバーら。日本への19年大会誘致も決まってのぞんだ大会だったが……=2011年9月、ニュージーランド 出典: 朝日新聞社

目次

 日本ラグビー協会広報部長の藪木宏之さんに、9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の楽しみ方を教えていただくインタビュー。2回目は、1995年第3回大会におけるニュージーランド戦「記録的大敗」のショックから、なんとかはいあがろうと動き始めた日本代表の苦闘をうかがいます。日本の人口約1億2600万人に対し、ニュージーランドは約480万人。福岡県(約510万人)より少ないのに、どうしてそんなに強いのかも教えていただきました。(朝日新聞記者・志村亮)

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藪木宏之(やぶき・ひろゆき) 1966年山口県生まれ。明治大学をへて88年に神戸製鋼ラグビー部に入る。神戸製鋼が89年~95年に日本選手権7連覇を果たしたころの主力メンバーとして活躍、98年に引退。企業人としては広報畑を歩み、2016年4月に日本ラグビーフットボール協会へ出向。現在、同協会の広報部部長。
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「平尾ジャパン」でテコ入れ

 

志村

前回は、2009年にW杯招致が決まったものの、日本はまだW杯で1勝しかしたことがなかった。だから藪木さんの当時の印象としては喜びより「大丈夫?」という不安のほうが大きかったし、世界のラグビー関係者もそうだったというお話をうかがいました。

 

 

1995年の第3回大会でニュージーランド(2019年1月現在世界ランク1位)に記録的大敗を喫した「ブルームフォンテーンの悪夢」といういやな思い出もあって、いわゆる強豪国との力の差が大きすぎたと。

 

藪木

はい。

 

 

そこからどんな見直しが行われたのですか。

 

 

97年に当時34歳の平尾誠二さんが監督につき、強化態勢の見直しに取り組みました。データを分析して緻密な戦略を練ったり、外国人選手を積極的に起用してキャプテンも外国人にしたり。代表スタッフもかなり優秀なメンバーでした。
日本代表監督時代の平尾誠二さん。神戸製鋼の日本選手権7連覇時代の中心選手で、藪木さんも一緒にプレーした。「ミスター・ラグビー」と呼ばれるほどの人気で、人望も厚く、引退後も日本ラグビーの発展に尽くしたが、2016年に53歳で亡くなった。
日本代表監督時代の平尾誠二さん。神戸製鋼の日本選手権7連覇時代の中心選手で、藪木さんも一緒にプレーした。「ミスター・ラグビー」と呼ばれるほどの人気で、人望も厚く、引退後も日本ラグビーの発展に尽くしたが、2016年に53歳で亡くなった。 出典: 朝日新聞社

負け方が変わってきた

 

 

99年の第4回大会は、初戦がサモア(同16位)だったんですけど、大会数カ月前のテストマッチでそのサモアに勝っていたんですよ。いけるんじゃないかと、かなりの期待をもってのぞんだ大会でした。

 

 

でも、9対43でよもやの大敗でした。2戦目ウェールズ(同3位)にも15対64の大差で負け、がっくり。平尾さんは00年に監督を辞任します。

 

 

そんなに簡単には差は埋まらなかったのですね。

 

 

続く03年の第5回、07年の第6回も、やはり厳しい結果だった。ただし、だんだん点差は開かなくなってきたんです。

 

 

たとえばスコットランド(同7位)やフランス(同9位)が相手でも後半20分ぐらいまでは拮抗している。最後には10点差、20点差と開いちゃうんですが。それでも、それまでは30点差、40点差が開いていたのが、少しずつ差が縮まってきた。負け方が変わってきたんです。
フランスで開かれた07年のラグビーW杯で観客の声援に応える日本選手
フランスで開かれた07年のラグビーW杯で観客の声援に応える日本選手 出典: 朝日新聞

再びニュージーランドの壁

 

 

しかし、11年の第7回大会でニュージーランドと戦い、7対80の大差で負けてしまいます。日本へのW杯誘致が決まったあとの大会だったんですが。

 

 

ああ、またニュージーランドですか。相手はベストメンバーだったんですか。

 

 

半分ぐらいは若手でした。まあ強豪ですし、スピードとフィジカルの強さを兼ね備えた、日本人がいちばん苦手とするタイプのチームなのですが。

 

 

それは今でもそうなんですか。

 

 

今でもそうです。
2011年W杯のニュージーランド戦
2011年W杯のニュージーランド戦 出典: ロイター

なぜそんなに強いのか

 

 

ニュージーランドって人口(約480万人)も多くないのに、なんでそんなに強いのでしょうか。

 

 

まずひとつはDNAとして先住民のマオリ族の血を引く方々が屈強な身体を持っているというのがあると思います。

 

 

あとはピラミッド型の強化態勢がすごいです。国内どこのチームでも、みんなが『オールブラックス』(ニュージーランド代表チームの愛称)を目指すんです。指導方法もぜんぶ一緒です。
「オールブラックス」の愛称で知られるニュージーランド代表
「オールブラックス」の愛称で知られるニュージーランド代表 出典: ロイター

「あのチームに勝つラグビー」になりがちな日本

 

 

日本だと『あのチームに勝つラグビー』を目指しがちです。あの高校に勝つ、早稲田に勝つ、明治に勝つ、ライバル校に勝つためのラグビーをやる。まあ結果的には代表をめざすのかもしれないですけど、ちょっと違うんですよね。

 

 

前回、指摘されていた日本はどこを向いてラグビーをやるべきか、という課題と通ずる気もしますね。みんながそれぞれの目標を追求していたら、結果的に世界から取り残されちゃったという……。

 

 

おっしゃる通りです。

 

 

ニュージーランドには、代表チームが強くなるのに理想的な環境があるということですか。

 

 

国技ですしね。日本で野球なら投手で4番、相撲なら横綱をめざす人たちがみんなラグビーやっているようなイメージです。

 

 

国中どこでも、いい選手を見つけたら、よし、お前はオールブラックスに行け!という雰囲気?

 

 

はい。生まれた時からラグビーボールを触り、芝生の上を走り、自然とタックルし、自然と相手を抜いて。そういう環境が整っている。

 

 

それに比べて日本はまだほとんどの学校のグラウンドは土で、転べば膝をすりむいちゃう。そして、スポーツをやらなくなってしまう。サッカーもそうでしょうけど、アウトドア球技にとっての理想的な環境はまだまだ整っていないですよね。

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