連載
#3 ラグビーW杯の楽しみ方
記録的大敗を経て、史上最大の番狂わせ 「劇薬投入」で変わった日本

日本ラグビー協会広報部長の藪木宏之さんに、9月開幕のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の楽しみ方を教えていただくインタビュー。3回目は、W杯で20年ものあいだ勝てなかった日本代表がなぜ、前回2015年のイングランド大会でいきなり南アフリカという「超強豪」に勝てたのか、を語っていただきました。個人的に圧巻だったのは「後半残り10分の心理戦」のくだりです。やっぱり玄人の視点は素人と違うんだなあとうならされました。(聞き手・朝日新聞記者、志村亮)
①ラグビーW杯の歴史、「ブルームフォンテーンの悪夢」が衝撃的だった
②ラグビー日本、記録的大敗からはいあがっても……再び壁になったNZ
③記録的大敗を経て、史上最大の番狂わせ 「劇薬投入」で変わった日本
④ラグビーW杯、日本のベストシナリオとは 鍵を握る「10.13決戦」

「びっくり」南ア戦の大金星
志村
そこから態勢を立て直し、2009年にはW杯の誘致に成功しました。
藪木
ラグビー界だけじゃなく、スポーツ界で世界最大の番狂わせだといわれましたからね。

でも、日本も同じぐらい身体を鍛えていて、タックルを繰り返して対抗しました。
エディ・ジョーンズという「劇薬」
そして、エディさん独特の、
日本人を熟知した強化態勢
のもとで、めきめきと力をつけていきました。


そのやり方じゃだめだと。
つまり、日本人のマインドがよくわかっている方だった。日本人が持つ我慢強さとか、細かいデリケートなこともやれることとか、ぜんぶ分かって指導していたんです。

『日本代表に劇薬を投入した』という言い方が、いちばん似合うんじゃないですかね。

後半残り10分、南アフリカがみせた焦り
きょうは厳しいな、
という感じですよね(笑)。

そこで南アフリカがトライ(決まると5点、そのあとのゴールキックが決まるとさらに2点入る)を取りに来ると思ったら、ショット(ペナルティキックのこと、決まると3点)を選んだ。それが決まって29対32でリードされます。

それが3点差だと1回トライを取れば5点取れて逆転できるわけです。そのモチベーションはかなり違います。負けている方も負けている感がぜんぜんないです。
一気に離せず、食らいつかれる展開は、リードしているほうが嫌なんです。ラグビーは結構、心理戦なんです。

ラグビーに「番狂わせ」はあまりない
あと50cmボールを手前でもらっていたら完全にタッチに出されているんですけど、ほんとうにぎりぎりだった。
