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#6 小中高時代「あれ」がおしゃれだった

奈良県民しか知らない?「マラソンタオル」 ダサくても機能的!

冷え込む季節に、奈良県出身の記者が思い出す子ども時代の必需品があります。その名も「マラソンタオル」。生まれて23年、全国民が「寒中マラソン」で使うと思っていました。フェースタオルの前と頭の部分を切って、体操着の下に着るだけで汗を吸う優れもの。

奈良の人なら誰でも知ってる?マラソンタオル=近鉄奈良駅前、御船紗子撮影
奈良の人なら誰でも知ってる?マラソンタオル=近鉄奈良駅前、御船紗子撮影

目次

 冷え込む季節に、奈良県出身の私(御船)が思い出す子ども時代の必需品があります。その名も「マラソンタオル」。生まれて23年、全国民が「寒中マラソン」で使うと思っていました。フェースタオルの前と頭の部分を切って、体操着の下に着るだけで汗を吸う優れもの。え、知らない? 「ダサい」という言葉も聞こえてきそうなマラソンタオル、ええもんなんやけどなあ。世の変遷とともに消えつつある、その魅力と分布を聞き込みました。(朝日新聞盛岡総局・御船紗子、デジタル編集部・影山遼)

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【関連記事】奈良名物「マラソンタオル」地味に消滅の危機 せつない理由とは?
 

見たことありませんか?

 マラソンタオル、幼稚園や小学校でいつも母が持たせてくれました。素肌と体操着の間に着るだけで、走る前には暖かく、走った後には汗を吸い取ってくれます。

マラソンタオルを身につけた高校1年生
マラソンタオルを身につけた高校1年生

 見たことないでしょうか、この特徴的な形。子どもの頃に一回でも着たなら、忘れるはずはないのですが…。本当に奈良県民しか知らないのでしょうか。もしかしたら県民じゃなくても知っているかも。

 そんな淡い期待を胸に、近鉄奈良駅前の待ち合わせスポットとして有名な行基像の近くで聞いてみました。

近鉄奈良駅前の行基像
近鉄奈良駅前の行基像

 「マラソンタオル? 知らないです」

 神奈川県川崎市から修学旅行に訪れたという女子高校生(2年)のグループから、ばっさり切り捨てられました。

 絵を描いて説明すると「ダサい」。

 めげずに使い方を力説すると、「体育の時とかに良さそうかな」。根負けしてくれたのでしょうか? いや、魅力が伝わったと信じることにします。

抜き取ると気持ちいい

 マラソンタオルとは何か、ひとまず私(もちろん御船)の記憶に基づいて説明します。専門家に聞いた内容も、もちろん後述します。

 小学生の時、冬になると授業の合間に「かけあし」という不思議な時間が設けられていました。児童たちはマラソンタオルを素肌に直接着け、上から体操着を着て校庭を走ります。

 走り終えて授業に戻る時には、体操着の後ろからタオルを引っ張り出せば、汗臭くないきれいな体操着だけが残る仕組みです。

 タオルの前がベストのようになっているため、背中から抜き取ることが出来ました。

 引っ張り出した途端に体が冷めていく感覚には気持ちよさが。他県民はあの感覚を知らないなんて、もったいない気がします。

元はただのタオル
元はただのタオル

奈良の都会で聞き込み

 一体どこまで広まっていたのか。人が集まりそうな、奈良屈指の都会スポットの近鉄奈良駅と近鉄大和西大寺駅で聞き込みを始めました。

 広陵町と橿原市から通っている男子高校生(3年)は、いずれも小学校で着けており、奈良市に住む20代の女性も使っていたといいます。

 大和郡山市の女子大学生(21)は「体操着が汗でベタベタにならなくていい」とその効果を熱弁します。

 少なくとも奈良県の北部では使われているようです。(奈良県の南部広すぎる問題は置いておきます)

 大学で東京に通っていたという県内出身の会社員の男性(32)は「え、全国区じゃないの。知らなかった」と私と同じように驚きます。

 「当たり前のように使っていました」

慣れ親しんだマラソンタオル
慣れ親しんだマラソンタオル

識者が教えてくれた

 そもそも、マラソンタオルに実用的な効果はあるのでしょうか。ないとしたら、なぜ。抜いた後が気持ちいいから? 県民なりのおしゃれ? そんな、あほな。

 だんだん不安になってきたので、奈良女子大の星野聡子准教授(スポーツ精神生理学)に聞いてみました。

――マラソンタオルはご存じですか。

 「私自身は使ったことがありませんが、生駒市や奈良市の、一部の幼稚園や小学校では使われていると聞いています」

 
――着けることでなにか実利はあるのでしょうか。
 「ありますよ。一般的に運動は、体がある程度温まっているときに始めた方が効率的です。体温が高い方が、筋肉が運動に必要な酸素を受け取りやすいためです」

 「耐寒(寒中)マラソンが行われるのは、秋から冬にかけて。寒い時期に体操着1枚で外に出ることに比べれば、綿でできたマラソンタオルを1枚挟んだ方が体温を保ちやすいのです」

 「運動後にも効果はあります。かいた汗は、乾く時に体の熱を奪います。秋から冬の時期に汗でぬれた服を着たまま放っておくと、体温が下がって危険です。マラソンタオルがあれば汗を吸ってくれるので、運動後はこのタオルを抜けば、着替えたのと同じ状態に戻ります」

奈良女子大の星野聡子准教授
奈良女子大の星野聡子准教授

実は合理的

――タオルを抜き取った後の気持ちよさは、一体何なのでしょう。

 「タオルを抜き取った瞬間の爽快感は、運動による達成感を体がご褒美のように受け取って生じる感情です」

 「走った後にタオルを抜き取って得られた快感情は、また運動をしたいという意欲につながります」


――体操着1枚でいるよりも合理的なのでしょうか。

 「体操着だけだと運動前に外に出ただけで体温が下がりますし、運動後は服が汗を吸ったままです。小学生の体力を鑑みて、体操着だけでは風邪を引いてしまいそうというならば、マラソンタオルを中に着て寒さを調整するのは有効でしょう」

 「マラソンは学外へ走りに行くこともありますし、いつもその場で着替えられるとは限りません。そんな時に、保温目的でマラソンタオルを着けるのは効果的と言えます」


     ◇

 マラソンタオルには、どうやら合理的な効果があるらしいです。安心したら、この便利で画期的なタオルを全国に広めたくなりました。マラソンタオルの爽快感と達成感、他県の方もぜひ味わっていただきたいです。

【動画】奈良県内で使われている「マラソンタオル」の作り方=影山遼、御船紗子撮影

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