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2018年09月18日

ウーマン村本大輔さん「いじめと、いじりは同じ」春名風花さんと激論

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対談した村本大輔さん(右)と春名風花さん=瀬戸口翼撮影

対談した村本大輔さん(右)と春名風花さん=瀬戸口翼撮影

 ウーマンラッシュアワーの村本大輔さんと、俳優の春名風花さんが、いじめについて、語り合いました。「いじめ」と「いじり」の違い。なぜ、他人に生きていてほしいと願うのか。どこまで付き合えるのか。人間の根幹に関わる、深い対談になりました。(朝日新聞デジタル編集部記者・原田朱美)


 ふたりが対談したのは、8月25日に渋谷ヒカリエで開かれたトークイベント「いじめているきみへ 伝えたいこと」(朝日新聞・KDDI共催)です。春名さんの絵本「いじめているきみへ」の出版を記念して開かれました。

 テーマは絵本のタイトルでもある「いじめの加害者」です。


「いじめ」と「いじり」の違い

 村本さんと春名さんの後ろには、集まった約140人がタグ「#いじめているきみへ」をつけてつぶやいたツイートが映し出されます。

 あるユーザーが、こんなツイートをしました。

<いじりとイジメってそもそも境界線があって区別されるような異なる概念なのかな? いじり=いじめと見えてしまう僕は短絡的なのだろうか?>


 「『いじり』であって『いじめ』ではない」という言葉は、加害者側の言い分としてよく聞く言葉です。

 テレビのバラエティ番組でも、よくいじられる芸人さんがいます。

 これは村本さんに聞くしかありません。

村本 「同じ。いじめといじりは同じです」

 即答です。
 村本さんは中学高校時代、いじめられた経験があるそうです。

村本 「愛があるのが『いじり』とか言うことがあるけど、急にジョン・レノンみたいに愛をちらつかせてくんなっていう。こっちが愛を感じなかったら愛じゃないから」

 「ジェットコースターには、乗りたい人と乗りたくない人がいるんですよ。OKな人なのか、やめてほしい人なのか。それまでのその人との関係性によっても違うし」

 「相手がジェットコースターに乗れるやつなのか、見極める力がないのに、みんなを無理やりジェットコースターに乗せるから、中には怖い思いをする人が出てしまうんです。楽しめる人なのか、ひとりひとり見極めないといけない」

 一気に語り切る村本さん。

 会場のみなさんも、なるほどという表情です。

なぜ他人に生きていてほしいの?

 トークでは、「第三者にできること」もテーマになりました。

 春名さんは「いじめを解決するために、第三者は加害者に働きかけなければ」ということを繰り返し発信しています。絵本のタイトルが「いじめているきみへ」なのも、同じ理由です。

 ただ、対談では意外な心情を口にしました。

春名 「ぼくは、いじめられた経験がない。第三者であることにコンプレックスがあるんです。結局誰にも寄り添えない立場。だから、第三者ができることを探しているんです」

村本 「やっぱり、生きてほしいの?」

春名 「はい。生きてほしい」

村本 「僕はどっちかというと『ご自由に』やねん。だって、もしかしたら来年すごくひどい目にあうかもしれないし。なんで生きてほしい?」

 なぜ、他人に生きていてほしいと願うのか。
 いじめに関わる人たちにとって、本質的な問いです。
 春名さんは、少し考えた後、言葉を選ぶように話し始めました。

春名 「自己否定したまま、死んでほしくないなって。いじめって、その子の存在意義をなくす行為です。そういう外的要因、他の人から受けた行為によって命を落とすのは、ぼくはすごく嫌なんです」

村本 「それは俺もすごくわかる。俺も嫌だ」

春名 「その子が今後、幸せになる保証は、ぼくにはできない。でもその子に会うことによって幸せになる人はいるかもしれない。少なくとも、春名風花という人間は、あなたが会いに来てくれたら喜ぶ人間だから。少なくともひとりはここにいるから。だから生きていてほしい」

村本 「じゃあ、どこまで付き合える?」

 村本さんの問いは、止まりません。春名さんは、さらに考え込みます。

春名 「正直、誰とでも友だちになれるとは思わないし、会いに来てくれても、好きになれるかわからない。でも……今日まで生きてくれたことに感謝します」

 村本さんが、あるエピソードを語り始めました。

 後輩の芸人さんに、養護施設出身の人がいるそうです。なにか贈り物をしたくて、「施設の住所を教えて」と後輩に尋ねたら、こう言われたそうです。「村本さん、毎年できるんですか? 施設の子って『ああ、また1回か』って思うんですよ」。

村本 「最後まで付き合う自信が、俺にはなかった。『付き合っていく』っていうことが、俺の中でいま課題やねん」
 
 「どこまで付き合える?」と春名さんに投げた問いは、村本さん自身の問いでした。
 大きく傷ついた人に、寄り添うこと。それは同時に、自分の覚悟が問われます。

朗読「いじめているきみへ」春名風花さん

加害者に罰を求めては、いけないのか

 参加者から寄せられた質問の中に、「いじめの加害者に罰を望んではいけないのか」というものがありました。

村本 「いけないことじゃない。ロボットじゃないんだから、そりゃあ望みますよ。娘さんが亡くなった人のツイートを見ていて、僕は胸が痛くなるんですよね。『そんなこと言うな』ってとても言えない。僕とは見ている景色が違うわけだから」

春名 「望むことは、いいと思う。春名風花を心の中で殺した人はたくさんいると思う。でも本当に個人で罰を与えようとしたら、相手を強い力で制圧するしかない」

村本 「うん、そうね」

春名 「そういうことをした場合、『あなたは救われるのだろうか?』という疑問があります。罰を与えても、あった出来事が消えるわけじゃないし、自分は人を傷つけた、相手と同じことをしたということで苦しむことになるんじゃないか。ぼくだったら、苦しむ」

いじめの正当化、怒りの正当化

 終盤、村本さんが春名さんに、こう投げかけました。

村本 「自分の正義に理由をつけさせないためには、どうしたらいいかな?」

 以前、芸人の先輩に怒鳴られたそうです。「いじめられるやつには理由があんねん。いじめられっ子が出しゃばるな」と。

村本 「自分の怒りに理由をつけて、正当化する。『ゲイだからいじめているんじゃない。出しゃばるからだ』とか、理由をつける。正当化する言葉をつければ、許される。悪意の言葉を発した次の瞬間に、許す言葉を加えることで、悪意がなくなる」

 いじめ加害者の言い分として、「いじめられる人間にも悪いところがある」というのは、よく聞く言葉です。
 ただ、村本さんは、やはり自分にも問いを向けます。

村本 「でも僕も正当化する言葉をよくつける。全員そうだと思う。いじめている人も、いじめられている人も、自分の怒りに理由をつけて、自分で許して、自分の意見を変えようとしない。言葉を後から足せば、どんな言葉でも、どんな暴力でも正当化できる。それに終わりは来るのかな」

 誰かを糾弾し、それが相手にとっては暴力となり、また相手も同じことをする。お互いそれを「正しい」と思っている。いじめている側を「やっつける」だけでは、対立は永遠に終わらない。村本さんは、そう言いたいようです。

 先ほど春名さんが、罰の話の時に「同じことをしたと苦しむ」と言っていましたが、通じるものがあるでしょうか。

 春名さんは、背後のスクリーンに映る来場者のツイートを、指さしました。

 <一対一では、喧嘩で終わるのだけれど、誰かが共感すると、いじめに変わる>


春名 「確かになって思いました」

 春名さんは以前ツイッターで、子どもの尊厳を踏みにじると感じたツイートを指して、「嫌いだ」とつぶやきました。すると、共感したフォロワーが、わっとその相手に向かっていったそうです。そして「自分は今、いじめている側にいる」と怖くなったそうです。

 誰かを守るつもりが、誰かをいじめることにもなる。「加害」と「被害」は、たやすく入れ替わる危うさをはらんでいます。

村本 「風花ちゃんも僕も仕事柄、共感させないといけないじゃん。僕はお笑いをやっていて、例えば沖縄で小泉進次郎の悪口を言ったら、ぶわっとウケるんですよ。『そうだ、そうだ!』と共感がつながる。これ、僕は違う角度から見たら、いじめっ子です。パチパチパチと拍手された瞬間に、怖くなる時がある」

春名 「『ケンカは1対1でしか、しちゃいけない』っていう価値観をもった人間同士だったら、いじめという構図になりづらいのかな……。どうなんだろう……」

 2人のトークは、約2時間。

 迷いながら、身をよじりながら、頭をかきむしりながら。
 「うまく言えないけど」「やっぱり違うな」と言いながら話す2人の言葉に、会場の人たちは耳を傾けました。

 いじめの加害者は、「悪い人」「モンスター」という単純なイメージでバッシングされがちですが、現実は、そう簡単ではありません。
 共感がいじめを生む。怒りを正当化して、自分で許す。そして「自分も簡単にいじめる側になりえる」という事実。
 いじめ加害者を考えることは、人間を考えること、そのものでした。

 

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