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2018年03月30日

美少女おじさんたちの「楽園」で起きていること…急成長するVRの世界

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VRの世界には、「kawaii(かわいい)おじさん」たちが日々集う場所があります。なぜ、おじさんたちは、かわいい女の子になるのでしょう。

VRの世界には、「kawaii(かわいい)おじさん」たちが日々集う場所があります。なぜ、おじさんたちは、かわいい女の子になるのでしょう。

出典: 「おうち de VTuber」紹介動画 (第1回 VTuberハッカソン成果作品)から - YouTube

 かわいい美少女のキャラクターをまとったおじさんたちが日々集う場が、バーチャルリアリティー(仮想現実、VR)空間の中にあります。「そんなばかな」「どうやって?」と疑う人もいるかもしれません。けれど技術はすさまじい勢いで進み、そして利用法は次々と開拓されています。300万インストールを超えたソフトで繰り広げられる「kawaiiおじさんたちの楽園」。美少女おじさんたちの集う場は、その「最先端」とも言えるかもしれません。


「kawaii(かわいい)おじさん」たちの楽園

 「皆さん、本当は男なんですよね? どうして女の子の姿をしてるんですか?」

 VR空間内のコミュニケーションの場「VRChat(ブイアールチャット)」のさるワールド(一種の「部屋」)。周囲にたくさん集まってくれたアニメ調のかわいらしい女の子たちを前に、筆者はそう尋ねてみました。

 この質問を発する5分ほど前のこと。リアル世界の私は、取材者として、東京都内で開かれていたVR技術開発イベントの会場にいました。休憩時間になり、メディアアーティストの坪倉輝明さん(ツイッターID @kohack_v)の机に立ち寄ったところ、「ちょっと入ってみませんか。みんな集まってるので」と誘われたのです。

 すでにスタンバイ状態になっていたVRセット一式をお借りし、このワールドに入れてもらいました。ちなみに「みんな」とは、「kawaii(かわいい)おじさんたち」のこと。坪倉さんのワールドには、「kawaiiおじさん」たちがいっぱい集まるのです。

VR系ウェブメディア「PANORA」が主催した技術開発イベント「VTuberハッカソン」で、坪倉輝明さんが発表した作品の紹介動画。「kawaiiおじさん」もたくさん参加しています

出典:「おうち de VTuber」紹介動画 (第1回 VTuberハッカソン成果作品)

一瞬で広がるVRコミュニケーションの世界

 「朝日新聞の記者さんが入りますよー」と紹介されたはず……なんですが、心の準備があまりできておらず、正確な文言をよく覚えていません。

 準備さえできていれば、仮想世界に入るのは一瞬です。気がついたら、周りにかわいい女の子のアバター(仮想空間での分身キャラクター)がたくさん集まっていました。みな、こちらを向いています。

 落ち着いた色調の空間、壁や床は石造りのイメージでしょうか。周りにいるのは十人程度。ちょっとクールめの背の高い女の子や、小さな魔法少女っぽい子、ふわふわのドレスをまとったネコ耳の子、さまざまですが、共通しているのはみなアニメ調のかわいい女の子ということです。

 VR空間では一つの部屋ですが、集まっている一人一人のリアルの身体は別々の場所にいます。大半は自宅でしょう。同じようにVRヘッドセットやコントローラーを装着し、体の動きを細かく追跡するモーショントラッカーなどを着けている人もいるはずです。

 背の小さい子はこちらを見上げ、背の高い子は少し見下ろし気味。どうやら私は、中くらいの背のアバターのようです。現実世界と一緒で、自分の姿はとりあえず見えません。

作業中の坪倉輝明さんワールドはワイワイガヤガヤ。kawaiiおじさんたちが引きも切らない模様です(坪倉さんの動画から)

作業中の坪倉輝明さんワールドはワイワイガヤガヤ。kawaiiおじさんたちが引きも切らない模様です(坪倉さんの動画から)

出典:「おうち de VTuber」紹介動画 (第1回 VTuberハッカソン成果作品) - YouTube

なぜ女の子の姿をしているの?

 「は、初めまして。朝日新聞の丹治です」とあわてて自己紹介。すると、一人の女の子がにっこり笑ってくれました。よかった。どうやら敵意は持たれていない様子。あたふたしながら、あいさつの言葉を二つ三つ続けた後、してみたのが冒頭の質問です。

 そう。どうして、男なのに、女の子の姿をしているのでしょうか?

 数秒の沈黙の後、斜め左側にいたオレンジ系の衣装の女の子(だったと思います。記憶違いだったらごめんなさい)が身振りを交えて話し始めました。

 「だって」

 まごうことなき成人男性の声。声域的にはやや低めでした。

 「考えてみてください。こんな場所(仮想空間)まで来て、むさ苦しい男の格好、していたいと思います?」

 「ああ~」

 そりゃそうだ、と納得したのは、すでに私が、個人限定とはいえ、VR空間で美少女になる経験をしていたからかもしれません。とはいえ、何かしらの抵抗とか違和感はないのだろうか。疑問はまだ残ります。

 「やっぱりそうですか。でも…」

 質問を続けようとしたとき、視界の右端に何か動きを感じました。顔をそちらに向けます。VRとは全天周、360度の世界。顔を向ければ、現実世界と同様に、その方向の風景が視野に入ります。

kawaiiおじさんたちは未明になっても帰らない。正直いって楽しそうです(坪倉さんの動画から)

kawaiiおじさんたちは未明になっても帰らない。正直いって楽しそうです(坪倉さんの動画から)

出典:「おうち de VTuber」紹介動画 (第1回 VTuberハッカソン成果作品) - YouTube

スキンヘッド&サングラスの大男たちに襲われる

 「えっ! ちょっ! やめっ!」

 本気で腰が引けました。スキンヘッド&サングラスの浅黒い色の大男、それも筋肉ムキムキの半裸のやつが、のしのしと迫ってきます。その隣には、やはりいかにも屈強そうな巨漢たちが続いている。

 そんな連中、占めて3体ほどが、筆者の周囲を取り囲み、上から見下ろします。見下ろすだけならまだしも、無遠慮に手を伸ばし、顔の付近を触ろうとしてきます。

 『こわい!』

 嘘いつわらざる心境です。はっきりと恐怖を感じました。逃げ出したい。

 何が起きたのか、頭ではすぐに理解しました。さっきまで女の子のアバターをまとっていた3人が、アバターをこの巨漢のモデルに切り替えたのです。そうわかっても、やっぱりこわい。視覚の効果は絶大です。

 「わかった! よくわかった! これはこわい! だからやめて。わかったから」

 すると、男たちは少し身を引き、しばらくこちらを見て、元いた方に去っていきました。『薬はよく効いたようだ』なんて思っていたのでしょうか。

 もうヘロヘロです。

急激に成長するVRコミュニケーション

 さて、巨漢たちに襲われた後の私には、まださらにコペルニクス的転回が待っているのですが、その前にちょっと背景の解説を。

 「VRChat」はSteam(スチーム)というゲーム配信サイトで無料で提供されています。実態は、ゲームというより、コミュニケーションを楽しむスペースといった方が正しいでしょう。IDを登録してログインし、自分用のアバターを選んで、さまざまなワールドに移動します。世界中から集まったさまざまなアバターがコミュニケーションを楽しんでいます。

 その成長ぶりはすさまじいものがあります。

 Steamで配布されているゲームの統計を取っている第三者サイト「SteamSpy」によると、2017年12月10日に16万5000インストールだったのが、年明けごろから急増し、2018年2月1日には300万インストールを達成、その後も増え続け、3月10日には369万インストールに達しています。

 SteamSpyは100%正確とは言えないものの、傾向をおおまかに捉えるには大きな問題はないとされています。

VRChatのインストール数の推移。昨年12月10日には16万5000インストールだったのが、今年3月10日には369万インストールと激増しています(SteamSpyによる)

VRChatのインストール数の推移。昨年12月10日には16万5000インストールだったのが、今年3月10日には369万インストールと激増しています(SteamSpyによる)

出典:SteamSpy

VRスペースのフロンティア

 アバターは、出来合いのものも用意されていますが、アメコミをさらにごつくしたようなデザインが中心で、日本人ユーザーにはあまり好まれません。自分で作ったアニメ調の3Dモデルを持ち込んで利用する人もたくさんいます。

 一方、他人が作ったモデルを流用する例も多く、モデルの利用規約上、問題になるケースも起きています。VRChatで使えるアバターを提供しているワールドもあるので、それらの勘所がわかるまでは、出来合いのアバターで探索するのが無難でしょう。

 Steamでの配布開始が2017年2月と、一般に広がってからまだ1年あまりしかたっていない世界。生まれたてのエネルギーにあふれている半面、マナーも確立されていない。開拓地を歩く割り切りや覚悟も必要になります。実際、マナーの悪いユーザーが横行し、荒れているワールドもかなりあるので、いきなり飛び込むのはあまりおすすめしません。

 ユーザーはアメリカ人が多く、主要言語は英語です。ただし、日本のアニメキャラのアバターをまとい、アニメ文化を好む外国人ユーザーも多いので、こちらが日本人とわかると、片言の日本語で話しかけてくる場合もあります。

 雰囲気を知りたければ、YouTubeを「VRChat」で検索し、出てきた動画を見たり、あるいは、身のまわりにくわしい人がいれば、その人に案内してもらったりするのがいいでしょう。VR用のヘッドセットなどがあった方がはるかに楽しめますが、パソコンの平面ディスプレイでもプレイできます。

VR用ヘッドセットの接眼部。二つの大きなレンズを通して、画像が視野全体を覆います。広大なVRの世界への入り口です

VR用ヘッドセットの接眼部。二つの大きなレンズを通して、画像が視野全体を覆います。広大なVRの世界への入り口です

kawaii(かわいい)おじさんたちに癒やされる

 さて、巨漢たちの「洗礼」を受けた私のその後、別方向から近寄ってくる姿が目に入りました。

 「わかったでしょ? こういうことですよ」

 見ると、先ほどの背の高いクール系(とはいえかわいい)女の子。これまた男性の声です。

 「はい、もうそれは」

 さっきの男たちと同じように、今度はその女の子が筆者の間近に迫ってきました。むしろさっきの連中よりさらに近い。そして手を伸ばしてくる。あ、頭なでられてる(VRの世界に触覚はないのですが、何となくわかるのが不思議なところです)。



出典:坪倉輝明さんのツイッターから。ワールドはその後も発展を続け、楽しい様子を中継する機能が続々と整備されています

「ところで私、今、どんな格好なんですか?」

 「こわいですか?」

 この落差には驚きました。全然こわくありません。いつの間にか、男性の声にも違和感がなくなっています。

 それを見て、ほかの女の子たちも集まってきます。みな至近距離。手を伸ばしたり、頬をすり寄せたりしてきます。

 「こわいですか?」

 もう一度聞かれます。

 「こわくありません」

 今度ははっきりと答えました。ただ、一つだけ疑問が。

 「ところで私、今、どんな格好なんですか? 見えないもので」



出典:坪倉さんのツイッターから。とうとう仮想世界にビデオミキサーまで構築してしまいました。もちろんkawaiiおじさんたちと一緒

鏡に映る幸せそうな「私」

 「じゃあ、鏡出しましょう」

 あ、鏡、出るんだ。まあ仮想空間なんだから、何でもありだよね。と思うまもなく、正面やや上方に鏡が出現。何だか中心に、ぽわーんとした表情の、癒やし系の女の子が見えるんですが、みんなに囲まれて……これ、私?

 「かわいー」「かわいー」

 周り中から声がします。もちろん男性の。そして鏡の中の私(のアバター)、えらく幸せそうな顔をしてまして……。

 何なんだ、この安心感と、もうこのままここにずっと浸かっていたい気持ちは。こりゃたしかに、女の子の姿をする以外、できない体験かも。そんな感覚を味わったのでした。


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