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連載

#15 現場から考える安保

なぜ私は、自衛隊取材を続けるのか 現場から考える日本の安全保障

プロペラ音が響く中、陸上自衛隊のCH47ヘリコプターに乗り込む報道陣。東京タワーなみの高さからパラシュート部隊が跳び出す様子を取材する=1月12日、千葉県の陸上自衛隊習志野演習場
プロペラ音が響く中、陸上自衛隊のCH47ヘリコプターに乗り込む報道陣。東京タワーなみの高さからパラシュート部隊が跳び出す様子を取材する=1月12日、千葉県の陸上自衛隊習志野演習場

目次

 ミサイル防衛や最新鋭戦闘機など、自衛隊の訓練や兵器が報道陣に公開されることがあります。ふだん近づけない自衛隊の「現場」から見えてくるものとは――。時には自分で訓練を体験しながら、日本政治の焦点であり続ける自衛隊を追う記者が思いをつづりました。(朝日新聞専門記者・藤田直央)

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現場から考える安保
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なぜ自衛隊を取材するのか

 2016年に外交・安全保障・憲法の専門記者という肩書になって防衛問題も担当し、自衛隊をよく取材するようになりました。防衛省の広報部門からは、陸海空自衛隊の訓練などの取材募集が毎月のようにあります。

 これ幸い、となるべく応じています。私は政治部に属し、国会や省庁にはよく出入りしますが、そこで扱われる問題の現場を見る機会はなかなかないものですから。

高さ11メートルの「跳出塔」と筆者(45)。パラシュート降下の基礎である跳び出し動作の訓練を体験した=1月12日、千葉県の陸上自衛隊習志野駐屯地
高さ11メートルの「跳出塔」と筆者(45)。パラシュート降下の基礎である跳び出し動作の訓練を体験した=1月12日、千葉県の陸上自衛隊習志野駐屯地

 自衛隊のことを、みなさんはどこまでご存じでしょうか。どんなことができて、何を求められ、何をしようとしているのか。そもそも、なぜ「日本軍」ではなく自衛隊と呼ばれるのか。

 戦後に自衛隊ができてから60年以上、問われ続けていることです。今でも、安倍晋三首相が自衛隊の存在をはっきり認めるよう憲法を改正すべきだと唱えるなど、日本政治の焦点になっています。

陸上自衛隊創立祝賀式で観閲行進する隊員たち=1954年7月1日、東京・越中島
陸上自衛隊創立祝賀式で観閲行進する隊員たち=1954年7月1日、東京・越中島

 「戦力不保持」を掲げる憲法と自衛隊の関係は、一筋縄ではいきません。「日本軍」の暴走を止められなかった戦前の軍国主義への反省と、戦後も続く東アジアの緊張にいかに備えるかが今も絡み合います。

 みなさんにそうしたことを考えていただく助けになればという思いで、私は自衛隊を取材しています。

 「日本のために頑張る自衛隊の姿をもっと伝えるべきだ」という立場とも、「いや、それは軍事礼賛につながるから控えるべきだ」という立場とも違います。議論がすれ違いにならないよう、自衛隊の姿を丁寧に伝える記事を提供できればと考えています。

現場には自衛隊を考える素材が

 そうした報道にうってつけなのが、訓練などで自衛隊が実際に動く現場を取材できる機会を生かすことです。現場には、自衛隊について考えるための素材が満ちています。

 まず、自衛隊がどんな能力を持ち、どう使おうとしているのかを実際に見ることができます。それは、日本はどのような脅威にどこまで備えるべきなのかを考える助けになります。

ミサイル落下に備えた航空自衛隊の迎撃部隊による展開訓練。この直前に実際に北朝鮮が日本列島を越えるミサイルを発射していた=2017年8月29日、東京都福生市の米軍横田基地
ミサイル落下に備えた航空自衛隊の迎撃部隊による展開訓練。この直前に実際に北朝鮮が日本列島を越えるミサイルを発射していた=2017年8月29日、東京都福生市の米軍横田基地

 現場で自衛隊員に接することができるのも貴重です。厳しい状況を想定し、緊張感をみなぎらせて活動する姿を目の当たりにすると、日本人の記憶から消えゆく戦争というものの過酷さが思われます。

中国に対する南西諸島防衛を念頭に置いた陸上自衛隊の訓練。水陸両用部隊約40人が7隻のボートで上陸を終え、後続部隊の上陸に備え安全を確保する=2017年11月12日、静岡県沼津市の米軍沼津海浜訓練場
中国に対する南西諸島防衛を念頭に置いた陸上自衛隊の訓練。水陸両用部隊約40人が7隻のボートで上陸を終え、後続部隊の上陸に備え安全を確保する=2017年11月12日、静岡県沼津市の米軍沼津海浜訓練場

 訓練などが公開されたり、取材が認められたりする意味も実感できます。自衛隊が日本を守るためにこんな活動をしているとアピールすることで、国民を安心させ、他国を牽制しようとするわけです。

平時の自衛隊に向き合う意味

 現場から見えてくる自衛隊の姿は、日本の安全保障という、より大きな問題を考えることにつながります。日本防衛に必要な自衛隊のあり方とは。それは国内向けには「安心供与」となり、他国には攻撃を思いとどまらせる「抑止力」になるのか――。

 もちろん、取材を認める防衛省・自衛隊は、報道を通じて国民の間に自衛隊への支持を広めたいと考えています。そこに絡め取られず、読者に日本の安全保障にまで考えをめぐらせてもらえるような記事が書けるかどうかが勝負です。

毎年恒例の陸上自衛隊による富士総合火力演習を前に満員の観客席。29倍超の抽選でチケットを手にした人や、招待された自衛隊や在日米軍の関係者ら約2万4千人が詰めかけた。左上は富士山=2017年8月27日午前、静岡県の陸自東富士演習場
毎年恒例の陸上自衛隊による富士総合火力演習を前に満員の観客席。29倍超の抽選でチケットを手にした人や、招待された自衛隊や在日米軍の関係者ら約2万4千人が詰めかけた。左上は富士山=2017年8月27日午前、静岡県の陸自東富士演習場

 また、もし日本が攻撃され、自衛隊が出動する有事になれば、取材は厳しくなる一方で、自衛隊を支持すべきだという風潮は強まるでしょう。その時に冷静な報道をするための私にとっての訓練が、平時に自衛隊の現場に向き合っておくことだとも考えています。

 ちなみに私は自衛隊だけの「専門記者」ではなく、外交に関する記事も書いています。戦争を起こさないために外交という営みもとても大切ですので、ぜひそちらの記事もウニュでご覧ください!

【藤田記者の外交関連の記事はこちら】
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ミサイル防衛や最新鋭戦闘機など、自衛隊の訓練や兵器が報道陣に公開されることがあります。ふだん近づけない自衛隊の「現場」から見えてくるものとは――。時には自分で訓練を体験しながら、日本政治の焦点であり続ける自衛隊を追う記者が思いをつづります。

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