連載
「口が気持ちいい言葉」芸人がいた!中高生から人気の「フースーヤ」
何度でも言いたくなる、思わずつぶやいてしまう「口が気持ちいい言葉」。そんな言葉をギャグにしているお笑い芸人を見つけました。芸歴2年目の「フースーヤ」です。「ナッシングトゥーマッチ!」「オーマイゴットファーザー降臨!」などとリズミカルなフレーズでたたみかけ、最後に「ヨイショ!」で締めるギャグは中高生の間で人気上昇中。「中学生の時から口ずさんでいた言葉が、10年経って花開きました」。コンビ結成やネタ誕生のきっかけなどを語ってもらった爆笑インタビューに加え、編集部が選んだ「口が気持ちいい言葉」から即興でネタも作ってもらいました。
フースーヤは、谷口理さん(24)と田中ショータイムさん(24)のコンビです。ともに神戸市出身で、兵庫県立須磨友が丘高校の同級生。神戸学院大在学中の2015年に吉本興業の養成所「NSC大阪校」に入り、昨年デビューしました。
昨年末に若手芸人の発掘を狙うフジテレビの番組「新しい波」に出演すると、中高生を中心に人気が拡大。ユーチューブのネタ動画は、累計100万回以上再生されています。今秋から始まったフジテレビ系のバラエティー番組「AI-TV」でレギュラーを務め、元SMAPの中居正広さんや乃木坂46の齋藤飛鳥さんなどともコラボするなど、いま勢いがある芸人です。
とにかくクセになるフレーズと、「ヨイショ!」のインパクトはどのように生まれたのか、ラジオ出演後の2人を直撃しました。
まずは自己紹介をお願いします
谷口理、24歳です。1993年5月1日生まれ、兵庫県神戸市須磨区出身です。
田中ショータイムと申します。出身は兵庫県神戸市で24歳。血液型O型です。生年月日は1993年7月10日。O型です。ここ、絶対間違わないようにお願いします。
何でですか。
O型です。
………。では、コンビ結成のきっかけは。
そうですねー。同じ時間帯に同じタイミングでペルセウス座流星群を見ていたということで、運命を感じてコンビを組みました。
………………。
それ、たぶんメモを取らなくて大丈夫です。
では谷口さん、仕切り直してコンビ結成の経緯を。
そうですね。ある日僕がトイレに行ったら、おしりからちっちゃい田中君が「こんちは」って出てきて、こっちも「ああ、こんちは」って返したら、一緒にコンビをやろうとなって今に至っていますね。だから最初は臭かったんですけど、日に日に臭いも取れていきました。
…………………………。
すいません、まともなやつが一人もいなくて。僕がボケたんで、相方がちゃんとした話をするかなと思ったら大ボケになっちゃって。
中学生の時から芸人になりたいと公言していたんですよ。「なりたい、なりたい」と周りに言うタイプで。田中とは高校で一緒になりました。
(おお、いきなり真面目な話きた)
高校でも「芸人になりたい」って言ってて、結構うるさいタイプだったんですよ。クラスは別々でしたけど、田中もギャーギャー騒いで目立つタイプ。それで高2の時に廊下で急に田中に胸ぐらつかまれて、トイレに連れて行かれたんです。
「キャラかぶってるからケンカ売られるのかな」と思っていたら、トイレの奥までぶわーっと押し込まれて、「お前、芸人になりたいらしいな」って言われたんです。「そうやけど」って返したら、目をギンギンにさせて、
「俺もなりたいんや! 一緒にコンビ組もう!」って言ってきて。
えーって思ったけど、田中のことは面白いと思っていたので、「じゃあ、よろしく」って返事しました。そしたら次の瞬間に「俺、演技や歌も頑張りたいから」と言ってきた時は、「こいつ大丈夫かな」と思いましたけど。
今振り返っても不思議なのが、「今からこうしていこう」というようなビジョンは何もなかったんです。それなのに、「芸人になろうぜ、コンビ組もうぜ」って声をかけたら、「おお、やろうぜ」って谷口はよく言ったなと思って。まぁ、僕の後ろに成功する未来が見えてたんかなと思ってますけどね。
コンビ組めれば、誰でもよかったんです。
おい!
田中さんは、谷口さんのどういう所が面白いと感じたのですか?
面白かったんですよ。抜群に。目立ちまくっていたんで。
どういうキャラクターですか?
自己紹介って「○○と申します」「○○です。よろしくお願いします」って言うのが普通じゃないですか。クラスが一緒になって最初のあいさつで、谷口の順番になった時に、「どぉも、ぼぐは、だにぐち○×△□○×△□○×△□」。聞き取れない変な挨拶をしたんですよ。
そんなやつ、おもろないって。
一緒のクラスになって、「いたたたたー、変なやつおる」って思ってたんですよ。
たぶんそれ、合同授業の話です。クラス自体は高3で初めて一緒になったので。
高2から同じクラスですよ。
いや、高2は別やねん。いつもインタビューの時、間違ってんねん。最初は体育Aで一緒になっただけやねん。
あー、そっか。お前2年何組?
4組。だって修学旅行一緒に行ってないもん。
じゃあ俺何組や。
3組やろ。田中はインタビューの時に毎回「僕ら高2から一緒で」って言うんですけど、その度に「えっえっ」ってなってた。言い出せんくてごめんな。いい機会だからいうけど、俺ら高3からや。
えっじゃあ俺の先生誰や!
(谷口さん…………)どれくらいモヤモヤしてたんですか?
1年になりますね。初めての取材を受けてから、今日までずっとです。
俺の先生誰や!(2回目)
話を進めますね。高校を卒業してすぐ芸人になろうとしたのですか?
キャンパスライフは楽しもうってことで、大学には普通に進学しました。お互い4回生になった一昨年、授業も減ったので、養成所に入ったんですよ。
その頃からコンビ名はフースーヤですか?
一番最初は、「クレイジーダイヤモンド」というコンビ名でした。ただ、養成所の授業のアシスタントをしていた先輩芸人が「クレイジーが付く芸名は終わるからやめとけ」って言われて。
「そんなの絶対売れへん」となって、「アマテラス」にしたんですよ。それで活動していたんですけど、東京吉本の同期に同じコンビ名がいることが分かって。それで芸名をかけて東京NSCと大阪NSCの東西ネタ合戦をやったんです。
僕らの方がウケた自信があって、「これは勝ったな」と思って審査員の結果を見たら、大阪2票、東京3票で負けたんです。会場も「えー」ってなって。「誰が東京に入れてんねん」って見たら、大阪の劇場の支配人が東京の札を上げてて。「終わったー!」って崩れ落ちました。
アマテラスが使えなくなって、他の芸名を探しまくったんですけど、考えれば考えるほど煮詰まって。そしたら、相方がしていたファイナルファンタジーのキャラクターにかっこいい名前や珍しい名前が多かったんです。頭パンクしている状態だったので、「適当に決めてくれ、お前がビビッと感じたやつ」と言ったら、「フースーヤ」っていうキャラが出てきて、「これや!」ってなりました。
決め手は何だったんですか?
直感ですもう。「フースーヤ」っていう文字の並びが珍しいし。これは後付けなんですけど、変わったネタをしていたので、珍しいネタをする変なコンビと思ってもらえるかなと。それでフースーヤになったんです。
フースーヤって、月の民の眠りを守るおじいさんですよね。
あ、知ってるんですね。フースーヤじゃなかったら、カイナッツォになってました。もしかしたら僕らカイナッツォやったかもしれないです。4本足のカメの化け物。今思えばカイナッツォじゃなくて本当によかった。
あともう一つ、候補に「神戸マカロニサラダ」があったんですけど。これは絶対にあかんってなって。
全然面白くないやん。
そういういきさつだったんですね。昨年末の「新しい波」は衝撃的でした。ネタはどういうきっかけで、できたのですか。
養成所を卒業して昨年の春にデビューして、ちょっと変わったネタをやっていたんですけど、このネタが生まれたのはトイレでした。
一緒にトイレに行った時に、ふざけてしゃべってたら、たまたま谷口が「ナッシングトゥーマッチ」って。元々ギャグみたいに使ってて、その日も「おしっこが『出ナッシングトゥーマッチ』」って言い出したんです。
これ中学生から言ってたんですよ。塾で「nothing too much」を習ってからずっと。「これは覚えないと『いけナッシングトゥーマッチ』だな」とか、ウケるウケないに関わらず、ぶつぶつ言い続けてきました。
それに田中さんが反応した。
トイレで聞いた時に、ほんまに何も考えていなかったんですけど、「オーマイゴットファーザー降臨」って言ったんですよ。今でも何でか分からないんですけど。で、言ってみたら「あ、これおもろいな」と思って。その後に、これだけだとさみしいから「ヨイショ!」を付け足しました。
ヨイショは、舞台の本番前にできました。「ナッシングトゥーマッチ」「オーマイゴットファーザー降臨」だけだと、「オチへんな」って感じて。「ヨイショでも言おっか」って大阪の劇場の舞台袖で決めたんです。
そしたら、客席が「ウォアー」って盛り上がって。あの瞬間にこのネタが「爆誕」しましたね。
それが昨年の夏ごろで、9月に「新しい波」のオーディションがあったんです。そしたらネタがウケて。タイミングがめちゃくちゃよかったですね。
番組では岡村隆史さんが絶賛して、芸能人にもファンがいますね。
そういってもらえてありがたいです。でも年配の方には、ウケないウケない。ライブでおじさんは笑ってくれますけど。
おじさんからしたら、「何やってんねんお前ら。けど、笑ってまうわ」みたいな感じなんですかね。やっぱり、若い女性や男性に笑ってもらえることが多いですね。
自分たちではネタの魅力をどう捉えていますか。
ネタを作る時は、できるだけ「意味分からんけど、なんかおもろいな」という言葉を組み合わせて、「ヨイショ!」でバーンっと見せることを心がけています。だから、「お前ら何言ってんねん。でも雰囲気面白いな」って思ってもらえたら一番ですね。意味分からんからこそおもろい、逆に意味が分かったらちょっと面白くなくなると思うんです。
響きやリズムも大事にしていますか?
めっちゃ大事にしています。リズムがちょっとでも合わなかったら「それちゃうな」ってやり直します。
だからネタ合わせをしていても、ネタを作っているのか曲を作っているのか、時々分からなくなります。
そういった言葉はいつ思いつくのですか。
「ネタ作ろっか」ってなったら、集中するので「ドドドドド」って出てきますね。雑談していて思いつくこともあるし。
普段思いついたのを頭の片隅に置いといて、ネタ合わせのときに「ブワー」と出しています。ネタのストーリーを先に作って、当てはめていく感じですね。
その基準は「口が気持ちいいかどうか」ですか?
そうです。
withnews編集部でも、考えてみたんですけど……。これ、どう思いますか?
うわっ、すごっ! 僕らもこんな感じですよ。気持ちいい言葉を並べて、つなげていってます。だからびっくりしました。僕らの台本かなと思って。知らん間に、谷口が記者さんに送ったのかと思った。
ほんまに。ネタ作り盗撮されてるかと思った。俺もお前が送ってると思ったもん。
ここからネタって作れますか?
これ結構面白い言葉ありますよ。
歴史の縛りで言ったら「六波羅探題、王政復古の大号令、ヨイショ!」。こういうのは簡単ですよね。
ヨイショを付けたら何でもギャグになっちゃう。最近はヨイショで逃げるのが、僕らのやり方です。少しずつ知ってもらえてきているので、僕らがトークで失敗したときもMCの人が「ヨイショ!」ってフォローしてくれるんです。この言葉を作った昔の人は本当にすごいですよ。
そういう意味だけで使っていないやろ(笑)。でも、最近は言い過ぎてヨイショに過剰に反応してしまいますね。先日も、新幹線で隣に座ったおばちゃんが荷物を上げようとして「よいしょ」って言った時にピクンってなりましたもん。
今後の目標は何ですか。
ありがたいことにテレビに少しずつ出られるようになったので、この勢いを保ちたいですね。毎回の仕事で一つは結果を残して、レギュラー番組を増やしたいです。
僕は生活できるだけのお金を稼いで、本当に早く家庭を持ちたい。
谷口は安定志向なんで。
今はアルバイトもしているんですか?
今は籍だけを置いている感じですね。最近ようやく芸人だけでも、死なない程度に食べられるようになったんで。
籍だけ置いてて出勤しないので、店長にはめっちゃ嫌がられています(笑)。
この後、「しゅーん」と沈んでいくのは嫌なんで、とにかくみなさんにもっと知ってもらいたいです。
このネタで行けるところまで行くのですか? それとも新しいネタも考えていますか?
今は行けるところまではこのネタで突き進みつつも、ほかに当たるようなネタも探りつつ、という感じですね。
ライブで新ネタを試すこともありますが、まだ僕ら自身がこのネタを面白いと思っているので。
時代が変わっても、たぶんこれはいつまでも面白いと思うんですよ。言葉があり続ける限り。
新しい言葉が出てきたら、「頂きます!」って採り入れていくことができるんで。理想は90歳になって、杖つきながら2人でやりたいですね。「な……、なっしんぐとぅーまっち」「お……、おーまいごっどふぁーざーこうりん」って言って「よいしょ」で入れ歯が飛ぶみたいな。
何やそれ(笑)。
さらに「口が気持ちいい言葉」も考えてもらいました。2人が考えた言葉はこちら。
谷口理さんの「口が気持ちがいい言葉」
「アーモンド大賞受賞」
田中ショータイムさんの「口が気持ちがいい言葉」
「嬉ピーナッツバターぬりぬりぬりっ!」
なんとナッツ類でかぶるコンビ仲の良さを見せたフースーヤ。「withnews 口が気持ちいい言葉週間」として記事を配信しながら、Tシャツにプリントする「口が気持ちいい言葉」を集めてきましたが、2人からは直筆でTシャツに書いてもらいました。ようやく「口が気持ちいい言葉Tシャツ」、略して「口きもT」の完成です。
そしてwithnews編集部は、ネットを飛び出して18日に東京都大田区で開かれる「ウェブメディアびっくりセール」に参加します! これまでの記事やユーザーさんからいただいた言葉をTシャツにした「口きもT」を展示・販売する予定です。
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