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連載

#4 集まれ!「口が気持ちいい言葉」

5文字が起こす奇跡!SNS発「ひらがなポーカー」、避難生活に笑顔

おもしろい言葉をつくった人が勝ち!SNSから生まれたカードゲーム「ひらがなポーカー」って?

SNSから生まれたカードゲーム「ひらがなポーカー」
SNSから生まれたカードゲーム「ひらがなポーカー」 出典: 「ひらがなポーカー」公式サイト

目次

 みなさんは「ひらがなポーカー」ってご存じですか? ひらがなが1文字ずつ印字されたトランプを使って、ポーカーの役のように文字をそろえるゲームです。5文字以内のおもしろい言葉をつくった人が勝ちです。2015年にツイッターのある投稿がきっかけで注目を浴び、クラウドファンディングで商品化しました。12月上旬には、カードつきの「ひらがなポーカーBOOK」の販売も予定されています。商品化の理由をたどっていくと、アナログゲームならではの「あたたかさ」がありました。
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「ひらがなポーカー」って?

 「ひらがなポーカー」とは、ひらがなが1文字ずつ書かれたトランプを使って、言葉をつくるカードゲームです。このカードをつくるために、2016年9月にクラウドファンディングでの支援の募集が開始されると、目標金額の2倍近い資金を得て製品化が実現しました。
見た目はトランプですが、ひらがなが1文字ずつ書かれています
見た目はトランプですが、ひらがなが1文字ずつ書かれています
 遊び方は簡単。

①カードをよくきり、ポーカーのように手持ちカードを5枚ずつ配る
②配られたカードを使って、5文字以内の言葉を作る

 組み合わせた文字を発表して、一番面白い言葉をつくった人が勝ちです。
カードの裏面にもひらがなを使った柄があしらわれています
カードの裏面にもひらがなを使った柄があしらわれています
 通常ルールでは2回まで、不要なカードを捨て、捨てた枚数だけ山札からカードを引くことができます。なんとカードには、ひらがなだけではなく、想像力をかきたてるワイルドカードの「○」や、「草生える」でおなじみの「w」カードも含まれています。
「○」カードはワイルドカード扱いだが、想像力をかき立てる
「○」カードはワイルドカード扱いだが、想像力をかき立てる
 また「゛(濁点)」や「゜(半濁点)」が書かれた透明カードも用意されていて、自由に使うことができます。

 面白い言葉ができるかは狙ったひらがなを引く運と、引いたカードから言葉をつくる想像力にかかっています。
透明の「゛(濁点)」や「゜(半濁点)」のカードも自由に使うことができる
透明の「゛(濁点)」や「゜(半濁点)」のカードも自由に使うことができる

ツイッターで広がった「ひらがなポーカー」

実はこの「ひらがなポーカー」、あるツイートがきっかけで広がりました。


 たまに『ひらがなポーカー』というのをやるんですけど、これはひらがなを一文字ずつ書いた紙(カード)を用意して、ポーカーと同じように5枚ずつ配り、一番おもしろい言葉を作った人が勝ちというものなんですけど、カード交換なしの一発目で『やくみつる』が揃ったときは場が騒然としましたね。
シエさん(@s_sh)のツイート
 現在3万人を超えるフォロワーを持つシエさん。シエさんによると、はじまりは友人宅にあった、50音が書かれた子ども用のドミノのおもちゃだったといいます。友人と飲みながら、ドミノを並べて遊んでいたら、予想し得ない言葉が生まれるのが面白いと、紙でポーカーのように遊ぶようになったといいます。
 このツイートは2万7千回以上リツイートされ、「遊んでみたい」という声が寄せられました。中にはひらがなを書いた紙をラミネート加工して、自作でカードを作る人も現れました。

 そんな人の中に、熊本市に住む吉本圭美さんもいました。「ひらがなポーカー」をつくるために、クラウドファンディングを募った本人です。
吉本さんが手作りしたひらがなポーカー
吉本さんが手作りしたひらがなポーカー 出典:ひらがなポーカー
 もともと美術や図工が好きだったという吉本さん。シエさんのツイートを見て「せっかくなら」と裏側が白紙のトランプを用意し、よりポーカーらしい「ひらがなポーカー」を作りました。

 実際に遊んでみると、家族や友人、恋人と誰とでも遊べて、無限に応用できる魅力を感じたといいます。

電気もガスもない中で、「笑い合った」経験

 そんな吉本さんが、「ひらがなポーカー」でクラウドファンディングのプロジェクトを始めたきっかけには熊本の震災がありました。

 2016年4月、大きな揺れに見舞われた熊本県。余震が続く中、吉本さんは家に戻れず車中泊をしていました。
 「家の中はぐちゃぐちゃで、家族4人で車の中で過ごしていました。ガソリンスタンドはひどい渋滞で、ガソリンを使うのもはばかられて、どこにも行けない。電気やガス、水道が使えず、本当に気が滅入りそうになって、そんな中でも何かできないかなって……」

 そんなときに思い出したのが、家族で遊んでいた「ひらがなポーカー」でした。震災後初めて家の中に入ったのは、ひらがなポーカーを取りに行くためでした。

 「どんな言葉を作ったのかは思い出せないのですが、くだらない言葉がたくさん出てきました。それがおかしくて、人と対面して、笑い合って、それがとてもほっとしました」
クラウドファンディングでたくさんの支援を集めた「ひらがなポーカー」
クラウドファンディングでたくさんの支援を集めた「ひらがなポーカー」 出典:「ひらがなポーカー」公式サイト
 人を笑顔にする遊びの力を再認識した吉本さん。自身の経験から「アナログゲームのあったかさを共有したい」と思うようになったといいます。実際にカードを自作してみて、本格的なトランプで作った方が扱いやすく、遊びやすいのではと感じていました。

 2016年9月に開始したクラウドファンディングは大好評。今年2月に開始した第2弾のプロジェクトも目標の2倍を超える支援を受け、1人で複数個分支援した人もいたといいます。現在は公式サイトで販売をしています。

実際に遊んでみた

 早速私もひらがなポーカーを購入して遊んでみました。withnews編集部でやってみたところ、これがなかなか難しい。思った通りの言葉の組み合わせにならないことが多いので、意味のない言葉でも前説で補ってなんとか形にします。経験上、「みろや」とか「うめやしw」などツッコミのような言葉ができると面白いです。
5文字の言葉をつくるのは難度が高いため、最初は3文字くらいを目指してチャレンジしてみよう
5文字の言葉をつくるのは難度が高いため、最初は3文字くらいを目指してチャレンジしてみよう
 特に感じている魅力が、「やろっか」と言ってから5秒で始められるところ。手を伸ばせばすぐに始められることに爽快感を感じます。

「ひらがなポーカー」のおもしろさ

 吉本さんは「ひらがなポーカー」について、「とにかく楽しく遊んでほしい」といいます。「ルールはあってないようなものです。購入した人のアイディアで新しいルールが追加される自由なところも魅力」と話しています。

 クロスワードパズルのように言葉をつないでいく「ひらがなスクランブル」や、17文字をふんだんに使ってつくる「ひらがな川柳」など、誰でも使える身近な「ひらがな」なだけに、遊び方はさまざま。
公式サイトでもさまざまな遊び方を紹介しています
公式サイトでもさまざまな遊び方を紹介しています 出典:「ひらがなポーカー」公式サイト
 「ひらがなポーカー」をやる人たちにとって伝説的に語られるのがシエさんがカード交換なしでつくった「やくみつる」。ひらがなポーカー界のロイヤルストレートフラッシュと呼ばれ、実際にやってみても、最初の5枚で言葉ができるのは奇跡的。更にこの5文字と考えるとその瞬間世界中の幸運がシエさんに集まったと言っても過言ではないくらい…。

 「これ、本当に出たんですか…?」と聞くと、「いや、本当に出たんです!」とシエさん。「実はこの後、やくみつるさんの名前が麻雀の『役満』をもじっているという話を聞いて、改めて奇跡だと感じました……」。

 シエさんは予想以上の反響に「家の裏にはえてるキノコが、市場で高値で売れた気分」としながら、ひらがなポーカーについて「普通のポーカーと違って、勝敗が相手からの評価で決まるのがポイント」と話します。「やる相手によって、きっと出す言葉も変わってきますよね。例えばスナックで上司とやることになったら、出世にまつわる言葉とかを狙ってしまいそう……」。
withnews編集部が試した結果。5文字の言葉とともにストーリーを考えるのが楽しい
withnews編集部が試した結果。5文字の言葉とともにストーリーを考えるのが楽しい
 「面白い言葉をつくる」というルールに構えてしまう人もいるかもしれませんが、シエさんいわく「結局は『楽しんだもん勝ち』です!」。

 「よく僕のところに『ひらがなポーカー欲しいけど友だちがいない』っていうコメントもらいますが、手元に1個置いておいて友だちづくりのきっかけにしてはいかがでしょう」とアドバイス。「もしくは相手がいない同士で連絡取り合って集まってやってもいいと思います。あっでもそうなったら買うのは1個で済んじゃうか……」と宣伝部長(?)らしいコメントもいただきました。
 ちなみに「ひらがなポーカー」を販売している吉本さんは、ひらがなポーカーでは「あまり勝ったことがない」そうで、他の人がツイッターであげた写真のうち「くらえ びわ」や「とんかつぶ」などがお気に入りだそう。「5文字だけなのに、ストーリーを感じさせるフレーズが好きです」。

 クラウドファンディングで支援者を募って製作された「プレミアム版」のひらがなポーカーは公式サイトより購入することができます(1個3,500円、税・送料込)。また12月上旬には、紙の質やサイズを変更して価格を抑えたカードつきの「ひらがなポーカーBOOK」(学研プラス)の販売も予定されています。
 吉本圭美さんの「口が気持ちがいい言葉」
 

「プレタポルテ」
「プレタポルテ」とは、既製服を意味する言葉。吉本さんいわく「個人的に半濁音に弱いみたい」。

 
 シエさんの「口が気持ちがいい言葉」
 

「アルテッツァ」
シエさんいわく「ためてからぱっと出す感じが好きです。『ピッツァ』とかも同じです」。ちなみに特に好きな言葉は「ごはんですよー」と教えてくれました。「これを聞くとすべてがどうでも良くなります」。

 

「withnews 口が気持ちいい言葉週間」です

 「withnews 口が気持ちいい言葉週間」として、言葉にまつわる記事を配信中です。口が気持ちいい言葉で編成した打線や言葉を使ったおもしろゲーム、口が気持ちいい言葉芸人など、すぐに楽しめる言葉の世界を深掘りします。そこで関わったみなさんから「口が気持ちいい言葉」を集める予定です。
第1回:思わず言いたい「口が気持ちいい言葉」赤坂サカス・ヘモグロビン
第2回:PPAPは言語学的にも最強だった 「口が気持ちいい言葉」の特徴は
第3回:「口が気持ちいい言葉」、海外にもあるの? 意外と言いたい早口言葉
第二回ウェブメディアびっくりセール

 日時:2017/11/18(土) 12:00~17:00(入場無料)
 場所:大田区産業プラザPio 小展示ホール
デイリーポータルZが主催するウェブメディアのイベント
デイリーポータルZが主催するウェブメディアのイベント 出典:第二回ウェブメディアびっくりセール
 さらにwithnewsでは、みなさんからも「口が気持ちいい言葉」を募集しています。あなたの「口が気持ちいい言葉」がTシャツにプリントされ、ウェブメディアびっくりセールで展示・販売されるかもしれません。

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