「あの歴史上の人物は、実はフリーメイソン会員だった」。こんな噂を一度は聞いたことがありませんか? 超常現象・オカルト分野を30年間取材し続ける専門記者に、300年に及ぶ歴史をもつ秘密結社「フリーメイソン」について、聞きました。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

皆神龍太郎さん(ペンネーム)です。
超能力から、ネッシー、ツチノコ、死後の世界、生まれ変わり、予言、水素水、ホメオパシーまで。
超常現象かいわいのテーマを30年間取材し続けている、専門家です。
(そして、朝日新聞社員です)
質問役は、怪しい話に興味津々な若者5人。
多くの都市伝説がささやかれるフリーメイソンについて、気になることをぶつけてもらいます。
今年は300周年
若者
皆神さん
若者
皆神さん
近代化する前にも、もっと古くからあったんですが、本当のルーツとなると古すぎてフリーメイソンにも資料が残っていないそうです。とにかく当時ロンドンに四つあったフリーメイソンの団体が一緒になって「本拠地をつくろう」と発足したのが、1717年6月24日。これが近代フリーメイソンの始まりです。

若者
皆神さん
また、日本に開国を迫ってきたペリー提督もフリーメイソンでした。
300年前にできた近代フリーメイソンですが、大きく分けると、もともとのイギリス系と、大陸に渡った後にできた大東社と呼ばれるフランス系の二つの流派があります。
若者
皆神さん
あと、入会の条件に「創造主を信じていること」というのもあります。キリスト教じゃなくてもいいんですけど、「大いなる建設者」、つまり宇宙をつくった何者かを信仰していないと入れません。
一方フランスの大陸系は、そういう条件がありません。
たぶん、イギリス系の進化系がフランス系なんでしょうね。

ヤクザと同じ?
若者
なんでそんなに必要とされてるんですか?
皆神さん
フリーメイソンの秘密の入会儀式を通過すると、入会前は「ミスター」と呼ばれていたのが、入会儀式通過後は「ブラザー」と変わります。
つまり、他人の関係から義兄弟になったということです。儀式の秘密を共有しあう仲になったとして疑似血縁関係を結ぶわけです。簡単に言うと、ヤクザさんが互いに杯を交わして義兄弟になるのと似たようなものかもしれません。
若者
皆神さん
仲間作りのひとつの手段として秘密結社があって、それが世界的なネットワークにつながるわけですから、けっこうな人脈となるわけです。

若者
皆神さん
そういう世界を望む人たちが次々入ってくるわけですが、フリーメイソンが生まれた当時の支配階級や旧体制側からすると「あいつらは革命派だ」と警戒しますよね。
若者
皆神さん
「邪教である!」といって、
何度も破門攻撃をくらっています。
ただ何度も破門されたということは、それだけ「入るな」という教えが守られていなかったということですよね。イギリスで近代フリーメイソンが発足したのは1717年ですが、十年経たずにヨーロッパ大陸にわたり、60年ちょっとで日本まできました。まさに、あっという間ですよね。
若者
皆神さん

明治政府と結んだ秘密の協定
若者
皆神さん
なんで日本では「世界征服を企む組織」とか、へんちくりんな話になったかというと。
明治時代に、日本政府とフリーメイソンの間に、
ある秘密の紳士協定が結ばれたためなんですよ。
若者
どういうことですか?
皆神さん
つまり結社の自由がなかった。
若者
皆神さん
だから、儀式で集まっている時に警察に踏み込まれるなんて彼らは絶対に許せないわけです。で、日本政府と話をして、
「フリーメイソンの儀式は外国人だけでやる。日本人は入れない。その代わり日本政府は踏み込むな」
という約束をしたわけです。
皆神さん
なぜなら、GHQのマッカーサーがフリーメイソンの会員だったんですよ。
若者
皆神さん
若者
一大ニュース!!!
皆神さん
天皇に「フリーメイソンとは何か」というご進講(天皇に講義すること)を行う計画があったんですが、フリーメイソン側の担当者が事件を起こしてしまってダメになったそうです。
こんな風に、なんとなく生臭い話もちょこちょこあるから、日本では陰謀論が根強いんでしょうね。

皇族、元首相、アメリカ大統領…
皆神さん
日本の総理大臣経験者にはフリーメイソンの会員が2人いるんですが、ご存じですか?
若者
皆神さん
前回お見せした「友愛ロッジ」の人ですね。

皆神さん
終戦直後にちょっとだけ総理大臣をやった皇族です。実は総理大臣だけでなく、日本の皇族にもすでにフリーメイソンがいたというわけです。
若者

皆神さん
若者
なんで皆神さんは、フリーメイソンをそんなに調べているんですか?
皆神さん
第二次世界大戦前って自由も平等もそうなかったでしょ?

皆神さん
でも宗教や権力より、人間の理性をより尊重し「自由・平等・友愛」の旗印の元に、新しい世界を築こうとした人たちの「梁山泊」として、フリーメイソンが生みだされたわけです。
注:梁山泊=豪傑や野心家の集まりを指す故事由来の言葉
若者
皆神さん
でも逆に言えば、近代が生まれたその時点でフリーメイソンの社会的役目は、すでに終わっていたのかもしれません。
彼らが望んだ民主的社会が実現してしまった今の世界では、フリーメイソンは、いわば脱皮して蝶を生みだし後の「抜け殻」みたいな存在と言えるかもしれませんね。
若者
皆神さん
フリーメイソンの組織の内部で起きた金銭上のトラブルとか、人間関係のゴタゴタなどいくつも聞いてます。
若者
皆神さん
でもね、時代を動かし作り出したって、やっぱりすごいことだと思うんですよ。
だから、私はフリーメイソンが好きなんですよね。
――悪の組織と思いきや、民主主義社会の誕生という、壮大なテーマにまで話が広がりました。次回は、少し懐かしい「ミステリーサークル」です。貴重な「物証」が登場します。(5月4日配信予定)