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#7 ことばマガジン

「ヨッ、大統領!」呼び名の語源は? 絶妙だったプレジデントの和訳

国土安全保障省での会見にのぞむトランプ大統領=ロイター
国土安全保障省での会見にのぞむトランプ大統領=ロイター

目次

 「ヨッ、大統領!」。宴席でのそんなかけ声は死語になりつつありますが、日本では、トランプ氏のアメリカを始め、フランスやフィリピンなど多くの国の行政トップを「大統領」と呼んでいます。英語では「president」(プレジデント)ですが、「大統領」に落ち着くまではいろんな訳語があったようです。(朝日新聞校閲センター・菅野尚/ことばマガジン)

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大統領就任式で宣誓するトランプ大統領
大統領就任式で宣誓するトランプ大統領 出典: 朝日新聞

語源は「前に座る(人)」

 presidentは、ラテン語の「前に座る(人)」が語源です。アメリカが1787年に憲法を起草した時、行政府の長の呼び名として初めて採用したとされています。

 このpresident、英和辞典を見ると「大統領」のほかに、会社の「社長」や議会などの「議長」、大学の「学長」などの日本語訳が挙げられています。

 1853(嘉永6)年、アメリカの東インド艦隊司令長官だったペリーが、いまの神奈川県の浦賀に来ました。このとき、日本側は、耳にした発音そのままに「伯理璽天徳(プレジデント)」と表記したことが史料に残っています。

 その後、翌年結ばれた日米和親条約には「合衆国主」と書かれ、1858年の日米修好通商条約で「大統領」の表記が登場します。

ペリー艦隊来航記念碑
ペリー艦隊来航記念碑 出典: 朝日新聞

「統領」「頭領」「棟梁」

 ただ、英語の「スピーチ」を「演説」などとする名訳をたくさん残した福沢諭吉が、華語(中国語)と英語の対訳集に和訳をつけて出版した「増訂華英通語」(1860年)では、プレジデントの訳語は「監督」。まだ一定していません。

 日本語で集団をまとめる役割の人を「トウリョウ」と読ませる表記は、「統領」のほか、「頭領」や、大工などを指す「棟梁」もあります。

 presidentを指す「大統領」も、「明治のことば辞典」(東京堂出版)によると「大頭領」などとも書かれた時期もありましたが、明治半ば以降の辞書からは「大統領」に統一されました。

神奈川県横須賀市で開かれているペリー祭の様子
神奈川県横須賀市で開かれているペリー祭の様子 出典: 朝日新聞

「統領」これ採用!

 アメリカの大統領制を研究し、「アメリカ人の物語」の著書がある大阪大学非常勤講師の西川秀和さんは、「中国では、それ以前に官職名に統領を使った例はあったが、頭領はなかった」と述べています。

 西川さんは「統領には『統(す)べる』すなわち『支配する』という意味を含むので、適訳と考えられ、日本でも中国の例にならったのでは」と推測しています。

 アメリカの大統領は、世界に大きな影響を与える重い役職です。新大統領のドナルド・トランプ氏は、その責任をどう果たしていくのか。その肩書を背負ったトランプ氏の日々の動向に、世界中の目が集まっています。

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