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ヒロト&マーシーのあふれるアナログ愛 あの名曲に隠された誕生秘話
ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトと真島昌利が、アナログ盤への思いから、あの名曲の誕生秘話まで語り尽くした。かつてのインタビューを振り返る。
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ザ・クロマニヨンズの甲本ヒロトと真島昌利が、アナログ盤への思いから、あの名曲の誕生秘話まで語り尽くした。かつてのインタビューを振り返る。
――モノラルでよく聴いているのはどんなアーティストですか。
マーシー いっぱいあるよ。スウィンギング・ブルー・ジーンズとか、ジェリー&ザ・ペースメイカーズとかサーチャーズ。70年代のドクター・フィールグッド。
ヒロト そうだね!
マーシー ドクター・フィールグッドのファーストアルバムはモノで出してくれたんですよ。
ヒロト あと古いものは全部モノラルだからね。マディ・ウォーターズとか。
マーシー バディ・ホリーとかね。
ヒロト ハウリン・ウルフとか、そういうのはモノラルしかなかったわけだからね。
――「YETI vs CROMAGNON」は12曲入りで約37分。CDだけなら容量的にもっと曲数を増やすこともできますが、アナログは物理的に難しいですね。
ヒロト アナログにはそれ以上入らないんですよ。それ以上やると2枚組みとかになっちゃう。で、2枚組みってちょっと重たいでしょ。価格も上がってさ。自分が中学生でレコード買っていた時に、2枚組みって高くて買いづらかったんですよ。
――CDだけなら、入れようと思えば70分以上入るわけですが……。
ヒロト たとえばCDに5時間入るからってさ、毎回5時間のアルバム出されたらめんどくさいっしょ? そんな規格に合わせて作品をつくるってのはさ、本末転倒もいいところで。「ドラム缶しかないから、これでカツ丼食ってよ」って言われてもさ。いらねえよって思うじゃない。そういうことです。
――資料に「60年代フリップバックE式盤を可能な限り再現」とあります。これは具体的に、どのあたりにこだわっているんですか。
マーシー ジャケットの仕様のことですね。Eっていうのは多分ヨーロッパのことで。60年代は高級。70年代以降だと全然つくりが違うんですよ。(前作「ACE ROCKER」のLPジャケットの折り目を指しながら)これがフリップバック。
ヒロト (ジャケットを触りながら)こっちからきて、こう折れてるじゃん。で、こことこことは紙が別物なんですよ。だから、ここはノリで貼り付けてあるの。
――結構、手間ひまがかかってるんですね。
ヒロト そう、めんどくさいよ。どこが何センチというのも、当時のイギリスの会社が2社ぐらいあって、そのどっちが好きっていうのを比べて、お手本にしてんの。
マーシー それでね、このジャケットの表の紙がツルツルなんだ。ほら、コーティングが。
――裏はザラザラしてるんですね。
マーシー でしょ。アメリカ盤はね、これとは全然違うんだ。表紙をペタッと貼り付けるようなタイプなの。
ヒロト こんなの説明しても、だから何だよって話ですけど。僕らの家には、これと同じものが何百枚もあるんです。たまたま僕らが60年代とか古い音楽の当時のUK(英国)のオリジナル盤を好んで聴いたり、手にしたりしていて、自分らの好きなものっていうのはこういう形のものなんだっていう感覚なんですよ。
CDのプラケ(プラスチックケース)が大好きっていう人は、それはそれでいいんだよ。プラケのはじっこのギザギザは何ミリのがたまんねえとか、何個なきゃダメだとかさ。それはどうぞ、こだわってください。僕らはこれが好きなんです。僕らが好きなものが、世の中からなくなっていくのは寂しいし。いいか悪いか知らないけど、好きなんです。
――最近、若い人の間でアナログ盤がまた人気になりつつあるようですが。
ヒロト それが普通だと思う。両方あればいいんじゃないかな。両方あって、両方聴いてどっちが好きっていうならいいんだけど、CDしか聴かないでCDが好きっていうのは、知らないクセにさ、比べてないじゃん。フェアじゃないなって思う時があるけど。
――CDどころか、デジタルでダウンロードしておしまい、という人も多いですよね。できたらレコードで聴いてほしいですか。
ヒロト 僕はレコードで聴くよってことですね。だけど、もったいねえなあと思っちゃうんですよね。せっかく良いものが世の中にあるのに。そんなので満足してたらかわいそうだなっていう。もっとおいしくて安くて健康になれる食べ物があるのに、なんでそれ食ってるんだろう、みたいな。おせっかい焼きたくなるんですよ。