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「優先席、譲ったら立ち去られた…」 上手な声のかけかたは?

電車内でお年寄りに席を譲ったら、断られた経験ありますか? 専門家は「条件反射的に、ぱっと立つ」とアドバイスします。

地下鉄の優先座席。譲ろうとしたら断られて、気まずい思いをする人も…
地下鉄の優先座席。譲ろうとしたら断られて、気まずい思いをする人も… 出典: 朝日新聞

目次

 電車内でお年寄りに席を譲ったら、断られた経験ありますか? 後に残った気まずい雰囲気、譲られた方は「私は年寄りではない」と思っていたのでしょうが…。上手に席を譲るコツはあるのでしょうか。専門家は「条件反射的に、ぱっと立つ」とアドバイスします。

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「あっ」と言って逃げるように…

 「優先席、譲ったら立ち去られた」という投稿を朝日新聞にした60歳の女性。車内に乗り込んできた白髪の婦人に「どうぞ」と声をかけたら、「あっ」と言って逃げるように立ち去られました。

 「私はその方に失礼なことをしたのでしょうか? 私の行為でその方を傷つけたのでしょうか?」と疑問を感じたそうです。

山手線の新車両「E235系」内の優先席=2015年3月28日
山手線の新車両「E235系」内の優先席=2015年3月28日 出典: 朝日新聞
ある駅で白髪のご婦人が乗り込まれ、私の前に立たれました。少なくとも私より年上に見受けられ、自分が優先席に座っているという自覚があったので、反射的に立ち上がり「どうぞ」と声をかけました。その方は「あっ」とおっしゃり、すぐ逃げるように立ち去られました。もちろん私は感謝されるのを全く期待していませんでした。私はその方に失礼なことをしたのでしょうか? 私の行為でその方を傷つけたのでしょうか?
2015年7月29日:(声 どう思いますか)6月20日付掲載の投稿「優先席譲ったら立ち去られた」:朝日新聞紙面から

「立っているのが好きですマーク」提案も

 投稿には、たくさんの反応がありました。マスターズ陸上にも出ているという80歳の男性は、50代くらいの女性に席を譲られた時「私は大丈夫です」と断りました。男性は後から妻に「譲った人の気持ち軽視。立っていれば通る人の迷惑。1人では生きていけないの。何かがあれば誰かの世話になります」と言われたそうです。

 64歳の女性は、自分と変わらない年に見えた男性から席を譲られ、「私がずっと年上に見えたの?」と思ってしまったそうです。譲った男性は、降りずに立ったまま。「私のような世代は、人生のたそがれ時にさしかかった自分を様々な事象に映し出し、落ち込むこともある」と複雑な胸中を明かしています。

 76歳の女性は「立っているのが好きなの」と言って、いつも断るそうです。しかし、譲ろうとした人が気まずい思いをするので車両を移ることもあるそうです。女性はマタニティーマークと同じように「立っているのが好きですマーク」を作れないか、提案しています。

シートにお年寄りらを描いたJR西日本の「優先席」=2002年2月
シートにお年寄りらを描いたJR西日本の「優先席」=2002年2月 出典: 朝日新聞
60歳で退職後も日課のジョギングと週1回のテニスを続け、マスターズ陸上の大会にも出場しました。車内で座る気は毛頭なく、座席に近づかなかった私でしたが、2年前に混雑に押されて座席前に立った時、50代ぐらいの女性に「どうぞ」と席を譲られました。「私は大丈夫です」と断ると、彼女は立ち去りました。状況を知る周りの人は座るに座れず、席は空いたままでした。若いつもりでも周りから見れば78歳の風貌(ふうぼう)だったと気づきました。妻にも「譲った人の気持ち軽視。立っていれば通る人の迷惑。1人では生きていけないの。何かがあれば誰かの世話になります」と言われました。
2015年7月29日:(声 どう思いますか)6月20日付掲載の投稿「優先席譲ったら立ち去られた」:朝日新聞紙面から
胸中はおだやかではない。紳士も私と変わらない年齢ではないか。レディーファーストならやめてよね。それとも、私がずっと年上に見えたの? 紳士はいつまでも降りない。気のせいか、娘も気の毒そうに私から顔をそらしていた。
2015年7月29日:(声 どう思いますか)6月20日付掲載の投稿「優先席譲ったら立ち去られた」:朝日新聞紙面から
心優しい方々が、私の白い髪を見て席を譲って下さいますが、お礼を言って「立っているのが好きなので」とお断りします。でも、譲ろうとした人は、後から乗ってきた人に「なぜ譲らないのか」という目で見られて居心地が悪そうです。仕方なく、私は別の場所に移動して本を読みます。そこで提案です。おなかに赤ちゃんがいる女性にマタニティーマークがあるように、高齢者用に「立っているのが好きですマーク」を作っていただけませんか。そうすれば、お互いの居心地の悪さが解消されると思うのです。
2015年7月29日:(声 どう思いますか)6月20日付掲載の投稿「優先席譲ったら立ち去られた」:朝日新聞紙面から

専門家「ぱっと立つ」「少し離れたところに動く」

 親切心で譲ったのに、気まずくなっていまう。席の譲り合いにコツはあるのでしょうか。

 精神科医の中沢正夫さんは「あれこれ考えるからうまくいかない。条件反射的に、ぱっと立つようにならないと、スムーズな席の譲り合いなんて無理」と言います。ぎくしゃくしてしまう背景には「必要以上の人間関係を結びたくない」という現代人の心理があると指摘します。「譲り譲られで相手とかかわりができるのがうっとうしい。今の世の中、電車の中でまで人とつきあいたくないんです。譲られる方だって、申し訳ないと負担に感じ、楽じゃない気持ちになる場合もある」

 生活評論家の吉沢久子さんは、立ち上がってくれた相手が「すぐ降りますから」と言い、少し離れたところに動いてくれると気兼ねがないと話します。「目の前にずっと立っていらっしゃると、こちらもどきどきしてしまいます」とアドバイスします。

1973年8月31日、この日で最後となった国鉄の「婦人・子供専用車両」。戦後作られた中央線の名物。代わって9月15日から「シルバーシート」が登場した
1973年8月31日、この日で最後となった国鉄の「婦人・子供専用車両」。戦後作られた中央線の名物。代わって9月15日から「シルバーシート」が登場した 出典: 朝日新聞
老いについての著作もある精神科医の中沢正夫さんは「あれこれ考えるからうまくいかない。条件反射的に、ぱっと立つようにならないと、スムーズな席の譲り合いなんて無理」。それは幼いときのしつけ次第だという意見だ。それにしても、なぜぎくしゃくするのか。「必要以上の人間関係を結びたくないからでしょう。譲り譲られで相手とかかわりができるのがうっとうしい。今の世の中、電車の中でまで人とつきあいたくないんです。譲られる方だって、申し訳ないと負担に感じ、楽じゃない気持ちになる場合もある」
2001年5月19日:上手な席の譲り合い 譲ったらその場離れる(お作法不作法):朝日新聞紙面から
生活評論家の吉沢久子さんも、立ち上がってくれた相手が「すぐ降りますから」と言い、少し離れたところに動いてくれると気兼ねがないと話す。「目の前にずっと立っていらっしゃると、こちらもどきどきしてしまいます」。譲られる側としては、降りる駅が近く、立っていて構わない時でも、譲られたら座るようにしている。「断ることで、相手がこれから先、譲る気持ちを失ってしまうのはもったいないと思います」
2001年5月19日:上手な席の譲り合い 譲ったらその場離れる(お作法不作法):朝日新聞紙面から

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