お金と仕事
専業主婦でも「ひきこもり」?支援つながりづらい〝見えにくい存在〟
「あなたは1人じゃない」と伝えたい

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「あなたは1人じゃない」と伝えたい
専業主婦の「ひきこもり」と聞くと、どう感じますか?国のひきこもりの統計で、近年になって「専業主婦(主夫)」が対象に含まれるようになりました。実は、直近の半年間に家族以外との会話がほぼなかった場合は、専業主婦もひきこもりに含まれるのです。当事者の抱える思いとは――。
「専業主婦のひきこもり」――。そう聞いて、どんなイメージを抱くでしょうか。専業主婦でありつつ、何年もの間必要最低限の外出しかしていない当事者をたまたま知っていたため、私にとっては身近な問題でしたが、あまりピンと来ない人が多いようだと、取材をする中で感じました。
専業主婦とひきこもり、それぞれの定義を見てみると、重なる部分があることに気付きます。
広辞苑第7版で「専業主婦」と調べると、「職につかず、もっぱら家事に当たる主婦」と書かれています。
一方、内閣府の調査では、「広義のひきこもり」を、「仕事をしておらず半年以上自室や家からほとんど出ない人」や「趣味以外で外出しない人」と定義しています。
主婦(主夫)も、直近の半年間に家族以外との会話がほぼなかった場合はひきこもりに含まれます。
定義に重なる部分があるため、専業主婦であり、かつひきこもり状態にある人の姿が可視化されにくいという実態がわかっててきました。
大阪府の女性(53)はこの10年、家族以外との会話はほとんどなく、大半の時間を家で過ごしているそうです。
ワンオペ育児で精神的に追い詰められても、実家は遠方で頼れず、夫は出張で留守がち。近くに住む義母との関係も良いとはいえず、子育てのささいな悩みを誰にも相談できませんでした。
長年抱え込んだストレスが限界を迎え、ひきこもりに。
それでも女性は「表面上は、ただの主婦」に見えるだろうと話します。「私が10年ひきこもりであると社会の誰も知らない状態です」
取材中も、様々なタイミングで「主婦のひきこもり」がみえづらく、理解されにくいことを感じました。
女性を対象に「ひきこもり女子会」を開催している当事者団体「ひきこもりUX会議」の調査(2017年)によると、女性の当事者のうち4人に1人が主婦との結果が出ました。
ただ、代表理事の林恭子さんによると、「主婦以外の参加者から、『職業欄に書ける〈主婦〉という肩書があるならひきこもりではない』などの声が寄せられることが結構あります」と指摘します。
当事者の中でも、主婦は肩身の狭さを感じることがあるのです。
「ひきこもり女子会」には、当事者が語る会場とは別に「家族や支援者が語り合う場」がある時もあり、私も一度参加しました。
そこに来るのは「ひきこもりの子どもを持つ親」が多数派。「ひきこもりの母親を持つ子ども」や「ひきこもりの主婦の夫」は、一人も見かけませんでした。
専業主婦はひきこもりになってもケアしてくれる人がいない、支援につながりにくいのだと改めて感じました。
主婦の方がひきこもりになるきっかけは様々で、一般化することはできません。子ども時代に不登校の経験がある方も多くいます。
ただ、当事者と家族を支援する「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の山本洋見理事長は、「家事や介護を長年1人で担ううちに、家庭の外とのつながりが切れてしまうケースもよくある」と話します。
「特に中高年は『女は家で家事をするもの』との感覚が周囲も女性自身も強く、ひきこもり状態になっても認識されないまま孤立を深めがち」。これも主婦ならではの特徴だと思います。
人知れずひきこもり状態に苦しんでいる主婦の方に、「あなたは1人じゃないよ」と伝えたい。そして記事を読んだ人が、身近にいるかもしれない当事者のつらさに気づいてくれたら、と思います。
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