水野:私はwithnewsの編集長になって3年目ですが、その間でもネットメディアを取り巻く環境が大きく変わっているなと思います。この10年、お二人がウェブメディアの大きな変化を感じた出来事ってなんでしょうか?
徳力:ネガティブな出来事になってしまうのですが、分岐点と考えているのは6年前、ネット上での罵倒や誹謗中傷をきっかけに起きてしまった殺人事件だと思っています。
【参照】孤高の秀才、卒論で狂った歯車 Hagexさん殺すまで(2019年11月20日) - 朝日新聞デジタル
https://digital.asahi.com/articles/ASMCM5CJQMCMTIPE010.html
それまで、インターネット上でケンカをしても「ネット弁慶だから命には支障はないんだ」「実際に殴られることはないんだ」というのが、私のようなネット民の常識だったのですが、それはやはり6年前に変わってしまって。
以降も、誹謗中傷が殺到することによって、その対象になった方が自ら命を絶ってしまうようなことが起こりました。ネットの影響力が悪い意味でも上がってしまって、命に関わることにもなってしまうということは、やはり一番、印象に残っています。
足立:私はマスメディアと呼ばれる側でありますけれども、徳力さんのようにブログなどの新しい書き手の方々が登場して、互いに刺激し合ったと思うんですよね。
徳力さんのようなブロガーや、津田大介さんのTwitter(当時)の実況ツイートなど、他にも佐々木俊尚さんはマスメディア出身の方ですが、情報のキュレーションも話題になりました。
また、ネットの話題を一般ユーザーが紹介するNAVERまとめやTogetterといったサービスが普及したり、BuzzFeedやThe Huffington Post(現HuffPost)のような海外発祥のメディアが国内市場に参入したりしました。
そこで、従来のマスメディアの記者の私たちも覚醒して、「読まれるように」「見られるように」ということを意識するように、刺激を受けたと思うんですよね。
一人ひとりの記者ってとても面白い人がいるんですが、それが放送や紙面に出ていくと、やっぱり従来のスタイルやルール、形式などにはまっていってしまう。じゃあ新しい表現の場を作りましょうと。
そうしてどんどん新しいサイトや、ウェブメディアができていった。マス系と独立系、外資系など、さまざまなメディアの書き手同士が刺激し合って、どんどん新しい表現が出てきた。それがここ10年ぐらいで起きたことかなと思います。
水野:私もwithnewsに配属になる前から、編集者や記者、ビジネス部門で働きながら関わり続けていましたが、立ち上げ初期は「こんな発信方法があるんだ」と驚きましたね。「文字数の制限なく自分の思いを書いてもいい」というような。