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ゴジラ-1.0に映像研…SNSで話題の聖地は「海軍の基地」だった
映画「ゴジラ-1.0」や「映像研には手を出すな」などのロケ地として使われた施設が昨年7月から一般公開され、SNS上の口コミなどで密かな人気を呼んでいます。
実はここは、かつて日本海軍の基地でした。戦後80年近く経った今、映画の撮影に使われたり、一般公開されたりしているのはなぜなのか。人気スポットの裏側を取材しました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
「廃墟が好きだから行ったら、好きな作品の聖地でもあった」
「聖地としても最高でしたが、当時の建物が残っていて中に入れるのもよい」
このようにSNS上で話題になっているのは、茨城県美浦村にある鹿島海軍航空隊跡です。
「ゴジラ-1.0」や「映像研には手を出すな」、「仮面ライダーBLACK SUN」などの映像作品のロケ地として知られています。
映画やミュージックビデオなど、多くの映像先品の撮影に使われてきました
土日限定で一般公開されており、入園料は18歳以上800円、小学生から高校生までは300円です。
残された遺構を歩いて見学できるほか、一部の建物は実際に中に入ることもできます。
取材を申し込むと、美浦村から委託を受けて施設の維持・管理を行っている「株式会社プロジェクト茨城」の篠田修宏さんが案内してくれました。
「風化で廃墟になりつつありますが、それでも当時の面影が色濃く残されています」
戦時中に海軍幹部たちが集まった会議室などがそのまま残されている本庁舎や、屋根が落ちて骨組みがむき出しになった発電所跡、巨大な煙突や釜が残るボイラー室などを間近で見ることができます。
歴史的な遺構だけでなく、「映像研には手を出すな」に登場する2足歩行ロボ「タロース」や、「ゴジラ-1.0」で主人公が搭乗する、戦闘機「震電」のコックピットのセットなど、実際の撮影に使われた品々も見ることができます。
「多い日は見学者が1日150~200人にもなります。聖地巡礼目的の映画ファン、歴史好き、廃墟マニアなど様々です」
ここは戦時中、日本海軍が水上機の実習訓練施設として使っていた場所です。
水上機とは、胴体や翼の下にフロートと呼ばれる部品を着けて水に浮くようにし、水上で発着できるようにした航空機のこと。
スタジオジブリの映画「紅の豚」で主人公のライバル、カーチスが乗っていた飛行機もその一種です。
すぐ近くの霞ケ浦の水面で訓練を行っていたようで、岸辺には機体を打ち出すのに使った機械「カタパルト」の跡も残っています。
案内してくれた篠田さんは「元々は水上機のパイロットを育てる施設でしたが、戦況の悪化により、1945年5月にはこの基地からも水上偵察機が特攻機として戦地に派遣されました」と語ります。
戦後、本庁舎が東京医科歯科大学附属霞ケ浦分院として活用されたものの、それも1997年に閉院。
2016年に跡地が国から美浦村に払い下げられ、昨年7月に「鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)」として一般公開が始まりました。
プロジェクト茨城代表の金澤大介さんは、「当初、航空隊跡に残る遺構は取り壊される予定でした」と指摘します。
「それはあまりにももったいないと、史跡として保存・活用することのメリットを村にアピールしたんです」
「一般公開することで、保存にかかる経費の一部をまかない、村の観光資源にすることもできる。映画の聖地巡礼が、歴史的背景に興味をもってもらうきっかけになることもある」といいます。
「戦争の遺構を映画の撮影に使ったり、観光資源にしてもいいのかという議論もあります。けれど、まずはこの遺構を後世に残す方法を考えないといけない。少しでも長く、次の世代へと遺構を残すことが、多くの人に戦争の歴史に関心を持ってもらうことにつながると考えています」
残された遺構の中で、比較的保存状態の良い庁舎も一部で雨漏りがあるなど、遺構は老朽化が進んでいます。
補修をしなければ老朽化が進むが、きれいに直しすぎれば遺構としての価値が無くなってしまう――。そんなジレンマがあるといいます。
「見学者の安全を確保できる程度の補修・整備はしつつ、なるべくありのままの姿を残していきたいと思っています」
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