連載
#30 小さく生まれた赤ちゃんたち
早産児の家族、6割が「周囲の言葉で傷ついた」 うれしかった経験は
周りの人にできること
日本では、およそ20人に1人が早産(妊娠22〜36週)で生まれています。しかし、早産の子どもや家族の悩みについてはあまり知られていません。ベビー用品メーカーと家族会の調査では、早産児家族の約6割が「周囲との何げない日常会話で傷ついた経験がある」と答えました。
日本では多くの赤ちゃんは妊娠37~41週(正期産)で生まれ、22~36週は早産と言われます。
平均出生体重は約3000g。2500g未満で生まれる赤ちゃんは「低出生体重児」と呼ばれ、より早く小さく生まれるほど、命の危険や障害、病気のリスクが高くなり、医療的ケアが必要なこともあります。
ベビー用品大手のピジョン(東京都中央区)と、新生児集中治療室(NICU)に入院した子どもらと家族、全国の家族会をつなぐ「日本NICU家族会機構(JOIN)」が、早産を経験した家族を対象に調査したところ、9割以上が「子どもが早産で生まれて不安や悩みを抱えている」と答えました(2023年10月、有効回答数249人)。
特に目立ったのは母親の「自責の念」や、子どもの発育や発達といった「今後への不安」です。
「後遺症や障害がどのくらい残るんだろうと申し訳ない気持ちでいっぱいでした」(出生時28週、体重1020g)
「こんなに小さく産んでしまったのは自分のせいだとかなり気落ちしました」(31週、732g)
「順調に育ってくれているのか、発達や成長に問題はないか、ただただそれが心配だった」(34週、2000g)
早産になると自分を責めてしまう母親は多くいますが、早産の理由ははっきり分かっておらず、予防法も確立していません。
「周囲の理解や配慮が不足していると感じたり、周囲からの行動や言葉で傷ついたりしたことはありますか?」という質問に対しては、約6割が「よくある」「時々ある」と回答しました。
「『何カ月?』と聞かれ、本当の月齢を答えるとあまりに小さいので、『えっ?』みたいな反応をされるのがつらかった」(27週、587g)
「悪気はないのは分かっている上で、知人に『赤ちゃん小さい! もっと大きいかと思った。おむつのサイズも想像より小さくてびっくり』と言われてすごく傷つきました」(33週、1646g)
支援の窓口となる行政や幼稚園、保育園においても知識や理解が不十分だと感じるコメントも寄せられました。
「早産で生まれても保育園などの集団生活では実月齢のほうが重視されるため、保育士らとの認識の差があり、同じクラスの子と比べられてしまった」(23週、583g)
「自治体の保健師さんが、なぜか低体重児に関しての知識があまりなかったようです。出生届を出しに行った際に、『37週までおなかに入れておいてねってお話しましたよね』と言われてつらかった」(30週、1302g)
行政や地域の支援について、「不十分だと感じたことはありますか?」という質問に対しても、約6割が「よくある」「時々ある」と答えていました。
一方、早産児の家族がうれしかった経験としては、ありのままの子どもを肯定してもらうことや家族への理解、ねぎらいの言葉をかけられたことが挙げられていました。
「生まれた週数や体重の話ではなく、素敵な名前だねと言ってもらえたときうれしかった」(22週、497g)
「『ママもたくさん頑張ってるね』って母自身も認められ、泣きました」(22週、472gと436g)
「今の息子を見て『こんなに大きくなったんだね!』と言ってもらえると、ちゃんと大きく成長したんだなと安心する」(32週、1340g)
調査結果を受け、NICUなどで35年にわたり家族のケアにあたってきた臨床心理士の橋本洋子さんは、「早産児ご家族の周りにいる我々に大事なことは、色々なことがありながら早産の赤ちゃんが『ここまで育ち』、ご家族が『ここまで育ててこられた』ことへの想像力とリスペクトであると思います」と話します。
「そこから自ずと温かいまなざしと、お子さんを愛でる言葉が生まれます。温かいまなざしに包まれながら、ご家族は少しずつ心を開いてくださり、言葉がこぼれてくるかもしれません。そんな時は、そのままお聴きすることが大切です」
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