連載
#20 小さく生まれた赤ちゃんたち
「おめでたい」だけでは乗り切れない 1000g未満で出産した親は
朝日新聞のアンケートには、多くの親から体験談が寄せられました
第2子を妊娠中、24週で破水してかかりつけの病院から緊急搬送で大きな病院に入院しました。
「今日か明日には生まれてしまうと思うから覚悟して」と言われましたが、その後2週間弱おなかでがんばってくれて、26週700g台で生まれました。
3カ月で退院し、1年ほど投薬。5歳まで通院しましたが、保育園生活でも特に問題はありませんでした。小学校入学後は体調不良で休むことなく、高学年になりました。
最近は小さく生まれたことを思い出す機会も少なくなりました。元気に過ごしています。(埼玉県 女性 40代)
息子を25週848gで産みました。周りに同じような経験をした人がいなかったため、不安の日々でした。
早産児でも2000gくらいある子とは比べ物にならないほど発達が違い、地域の早産児サークルには参加する気持ちにもなれませんでした。
母子手帳も標準でしか書かれておらず、単なる記録としてしか使えません。
1歳を過ぎても「何カ月?」と聞かれて複雑な気持ちになっていました。
3歳までは入退院を繰り返しましたが、遅いながらも息子なりのペースで育ってくれています。(神奈川県 女性 30代)
2人目を24週1日600gで産みました。
今は医療の進歩で早産でも助かる命が増えましたが、「助かったね」「良かったね」だけではありません。
生まれても通常の分娩のように「おめでとうございます」とも言われません。小さな赤ちゃんを産むということは、こういうことなのかと実感した瞬間でした。
小さな赤ちゃんを産んだ母親は、自分を責めてしまう方がほとんどだと思います。同じ家族なのに、心ない言葉を投げかける人もいると思います。
NICUに通う母親と父親は毎日心が苦しいです。それぞれが不安で、同じNICUに通う人を気遣う余裕もありません。その苦しい胸の内を受け止めてもらえる場所は少ないと思うので、心の支援が増えれば……と切に思います。(愛知県 女性 40代)
25年前に長男を27週926gで産みました。
それまで子どもを産むことはおめでたいことだと思っていましたが、それだけではない。人それぞれいろんな出来事があり、おめでたい気持ちだけでは乗り切れないことだとそのとき初めて知りました。
息子は生まれてすぐNICUのある病院に運ばれて、私は産科の病室に1人で残されました。周りは、出産でお祝いムードのお母さんや赤ちゃん、ご家族であふれていて、とてもつらい思いをしました。
産科のドクターが気をきかせてくださり、体が回復するまで、私は婦人科病棟に移されました。不安に寄り添っていただけるケアがあると良いと思います。(大阪府 女性 50代)
長男が23週4日で、580gで生まれました。「子宮頸管無力症」が原因でした。
初めての出産で、何も分からないまま突然生まれてきて驚きましたが、本人とともに親も少しずつ成長しています。
本人が大きくなるにつれ、いろんな壁と向き合いながら、うちは両親ともにOT(作業療法士)なので、その時々でできる支援を精一杯検討しつつ、素敵な本人らしさをいかしつつ、3兄弟と両親みんなで成長中です。
出産時に「早くお母さんたちに会いたかったんだね」とよく声を掛けられましたが、私はそれをなかなかポジティブに受け止めきれず、言われるたびに涙が出そうでした。
長男が無事に10歳になり、ようやく笑って受け止められそうです。(長崎県 女性 30代)
我が子は11年前27週950gで生まれました。
早く生まれて助かる命もあるけど、後遺症が残る赤ちゃんがいることをもっと先に知りたかった。
小さいときは成長が遅れがちだけど、大きくなるにつれて追いつく子もいます。でも様々な障害が残るケースがあるのも事実です。
我が子は重度の未熟児網膜症と診断され手術もしましたが、左目の視力を失い、残された右目も視力は0.1で視野もありません。視覚障害者となりました。
ニュースで取り上げられるのは、「小さく生まれたけど障害もなく元気に育ちました」「あの時は本当につらかったです」という内容が多いけど、障害が残れば病気や生活環境における闘いは一生続きます。そんな事実も報道してほしいです。(北海道 女性 40代)
妊娠24週で690gの息子を出産。おなかが張るのと少量の出血で入院となってから2日目で大量出血となり、NICUのある病院へ搬送されました。
臍帯が出ているとのことで緊急帝王切開となり、そこからは自分のことではないんじゃないかと、ただただ泣いて現実逃避の日々でした。
気持ちの整理もつかないうちに、息子は脳内出血を起こし、生後3日目で亡くなりました。
あの時の病室やNICUでの罪悪感と戸惑い、どうすればいいかわからない気持ちはいまだ消えることはありません。
寄り添ってくださった先生や看護師さんには感謝の気持ちでいっぱいです。その後、次男の出産の際にもみなさん覚えていてくださり、私の気持ちに寄り添ってくださいました。(富山県 女性 40代)
2500g未満で生まれる赤ちゃんは、「低出生体重児(ていしゅっせいたいじゅうじ)」と呼ばれます。日本人の平均出生体重は約3000gですが、約10人に1人が2500g未満で小さく生まれており、その割合は近年横ばいです。
低出生体重児の中でも、1500gに満たない赤ちゃんは「極(ごく)低出生体重児」、1000gに満たない赤ちゃんは「超低出生体重児」とされ、小さく生まれるほど病気や障害のリスクは高くなると言われています。
人口動態統計によると、2022年に生まれた日本人の子どもは77万759人。そのうち、低出生体重児は7.3万人(9.4%)で、1975年の5.1%から増加しています。極低出生体重児は0.7%、超低出生体重児は0.3%でした。
小さく生まれる背景には、早産や、双子などの多胎児の増加、妊婦への体重制限(やせ)や病気などが関係していますが、はっきりとした原因が特定できないこともあります。
背景のひとつである早産は、年間およそ20人に1人と言われています。早産は予防できるものではなく、母親が何かをしたから早産になるということではないそうです。
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