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思春期は「親の子育ての転換期」STORYが大切にする〝場〟作り
「思春期子育て」ならではの悩みとは?

親にとって、子どもとのコミュニケーションに難しさも感じる「思春期」。雑誌「STORY」の河合良則・統括編集長は、企画「Junior STORY」で思春期子育てをテーマにして発信しています。「思春期は、親にとっても子育ての転換期」と話す河合さんに、編集部に寄せられる現代ならではの悩みを聞きました。(聞き手・水野梓)
子育ての悩みが変わる「10年目」
もともと「STORY」の読者層は働く女性が多く、子育て女性がメイン読者の雑誌「VERY」と棲み分けをしていました。
しかし、読者のなかにも働きながら子育てをしている人が増えてきました。アンケートなどをしたところ、メインの読者層にはちょうど小学校高学年あたりの思春期の子どもがいる方が多かったんです。
子どもが10歳ぐらいになった「子育て10年目」のタイミングって、子どもの成長するスピードがグッと上がって、ママたちの悩みが変わる……というポイントでもあります。
「STORYでも、思春期子育てをテーマにしてお母さんたちを応援していこう」と始まりました。

子どもがしっかり意思を主張するようになったけど、親がその変化に追いついていけないことも。どう対処したらいいのか、と悩んでいる方は多いんですよね。
晩婚化や晩産化、少子化といった社会の変化に伴って、読者も変化しています。私が「STORY」に携わり始めた16年前には聞いたことのなかったような悩みが出てくるんです。
同級生の友人とは子どもの年代が違って、身近なところで子育ての悩みをなかなか共有できない、という背景のある人もいます。
子どもの思春期は、親の子育ての転換期。子育て10年目にある壁を乗り越えていこうと、企画を考えています。
親の「こうするべきだ」を押しつけない
二人とも男の子ですが、性格はまったく違いますね。8歳の長男は、たまに親に反抗したり「家出する」って言ったりすることもあって、もう「プレ思春期」に突入したなと感じます。
――それは早いですね。
読者からのお悩みや、子育て中の編集部員たちと話していても、全体的に子どもたちの心の思春期が早まっている、前倒しになっている印象があります。

親としては「自分からやりたいって言ったんだから、頑張ってみたら」「自分が望んで始めた習い事なんだから、行くべきだよね」と感じてしまいます。
記事で取材したクリニックの先生に、ふとそんな相談をしたら、「お父さんの『こうするべきだ』を子どもに強いている」「お子さんにそんな風に言うのを控えてください」と指摘されて、ハッとしたことがあります。
仕事脳になっていて、「自分の発言には責任を持ちなさい」という気持ちになっていたんですね。
親が受けていない「性教育」どうしたら…
STORY編集部では、SNSのトラブルを取り上げたこともあります。
子どもがうそをついたり、隠したりするので、ついSNSやLINEをチェックしたくなってしまいますが、やっぱりそれはしない方がいいんですよね。
ふだんの子どもとの会話やコミュニケーションから、何を考えているか、学校・友達関係に何か変化が起きてないかをしっかり知っておくこと、「雑談力」が大事です。
でも、子どもと雑談するには、YouTubeで何が流行っているか、学校で何が起きているか、情報を常に仕入れておかないといけない。親も大変です。

まわりには言えないけれど、「上の子かわいくない症候群」で悩む読者さんもいらっしゃいます。
どうすれば親の注目を集められるかが分かっていたり、甘え上手だったりする下の子がいるお母さんから悩みが寄せられますね。
そんな様子を見ている上の子は、「なぜ自分をかまってくれないのか」とわざと親を怒らせるような行動をとることもあります。うちの8歳の長男も、次男へ親からの注目が集まっているのを敏感に感じ取ります。
そんな状況の中で、「上の子がかわいいと思えない、そんな自分っておかしいんじゃないか」と罪悪感をおぼえてしまうお母さんもいるんです。
ほかにも、子どもにどう「性教育」をしたらいいか、という悩みはよく聞きます。
――「昭和世代」の親たち自身が、性教育をちゃんと受けた経験がないですもんね。
そうなんですよね。特にお母さんからは「異性の男の子にどう性教育していいのか分かりません」という切実な言葉が聞かれます。
昭和で教えられてきた価値観が全然通用しない時代になってきていると感じます。実は、子どもの方が考えがフラットで、気づかされるようなことを言うんですよね。
教えようとしたら、子どもから間違いを指摘されたり、学校でちゃんと教わっていて、SDGsだって子どもたちの方が詳しい、なんてこともあります。
親側が頭を切りかえて、学んでアップデートしていく必要があると思います。
悩みを吐露できる「場」も大事
ママたちは、送迎が本当に大変だと聞きますね。放課後、2,3カ所に子どもを送るお母さんもいて、待ち時間にふと「私の人生って、なんだろう」と思ってしまう人もいるそうです。
とはいえ、送迎中って子どもと二人っきりになれる貴重な時間でもあります。そこで、さっきのような雑談をしてみたり、コミュニケーションを深める機会ととらえるのがいいかもしれません。
――withnewsで配信している記事を読んでも、日本では「お弁当は栄養と彩りを考えて作らないと」と感じたり、「こうしなきゃいけない」と植え付けられたプレッシャーや「呪い」みたいなものを内面化してしたりしてしまうところがあると思います。
【関連記事】「お弁当これでいいの?」聞いた妻 フィンランド人の夫の答えが秀逸
https://withnews.jp/article/f0230210002qq000000000000000W08k11101qq000025507A
【関連記事】「弁当は愛情の証し」って本当? 横浜市の給食議論で記者が思うこと
https://withnews.jp/article/f0221116000qq000000000000000W02c10101qq000025251A
真面目なママたちは、完璧でいようと思ってしまったり、SNSに映えるものを投稿しなきゃと思ったりしてしまうんですよね。いったんそういうことを置いておく、ということがどれぐらいできるか。
たまには、お弁当がマッシュポテトとミートソースだけ、という日があってもいいですよね。
STORYでは今度、送迎の合間に食べられるような「スティックメシ」を特集します。

余裕ができると、子どもとのコミュニケーションも深まると思います。実は子どもって親の姿をよく見ていて、両親で話していることもしっかり聞いています。
親の本棚に置いてある本を手に取ったり、楽しそうに仕事をしていれば「生き生き仕事をしているな」と感じたり。「後ろ姿を見せる」というと、急に昭和っぽくなってしまいますが(笑)、機嫌良く楽しく、明るく過ごす姿を見せておくことが大事だな、と自分に言い聞かせています。
――お母さんお父さんが忙しい背景には、働かせすぎる、長時間労働でまわる日本社会の影響があると思います。もっと日本社会の働き方が変わって、社会全体で「子育てを応援しているよ」という気持ちが伝わるといいですよね。
人に言えないことや悩みを吐露できる「場」も大事ですね。
クローズドな場でもいいですし、信頼できる人相手でもいいし、メディアに匿名で相談する、というのでもいいので、悩みは誰かに伝えてほしい。Junior STORYとしてはそんな「場」を作れたらいいなと思っています。