ネットの話題
「キムワイプパン」レシピが誕生?「非推奨用途」着目した公式の狙い
「特別な一日、大いに楽しんでほしい」
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「特別な一日、大いに楽しんでほしい」
理系学生や、実験業務を行う組織の一員にとって、なじみ深いアイテム「キムワイプ」。エイプリルフールに合わせ、公式ツイッターアカウントが投稿した「ネタ」画像が、好評を博しています。今年のテーマは「パン」です。商品ファンたちの間で、もはや春の風物詩となった取り組みの背景事情について、取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)
キムワイプとは、工場や医療機関、理工系大学などで使われる「産業用ワイパー」の一種です。製造・販売元の日本製紙クレシア(東京都千代田区)によれば、米国企業が開発し、1969年から国内でも取り扱いが始まりました。
一般のティッシュペーパーと比べて、毛羽立ちにくく丈夫なため、傷つきやすい実験器具の拭き取りなどに欠かせません。いわば「実験の友」とも言うべき製品です。
そんなキムワイプの公式ツイッターアカウント(@kimwipes_crecia)が4月1日、画像をツイートしました。
写っているのは、グリーンの背景に、「理系が愛するザラザラ キムワイプパン」と書かれた冊子の表紙です。
中段には、円を四分割したように見える、濃淡二通りの緑色で引かれた曲線(通称「キムワイプカーブ」)が特徴的な、主力商品「S-200」の外箱が配されています。
その手前側を見ると、箱とそっくりな色合いの曲線が切断面に描かれ、お皿に載った、正方形の食パンが目に入ります。そして画像には、こんな文章が添えられているのです。
実はこちら、エイプリルフール向けのジョーク企画。投稿には「やっぱりキムワイプ味なのかな」「ちゃんとパンを焼いてるのがポイント高い」などのコメントが寄せられました。2日時点で6千近い「いいね」もついています。
/#キムワイプパン 🍞
— キムワイプ (@kimwipes_crecia) March 31, 2022
レシピ本📖出版決定‼️
\#キムワイプパン のお取り寄せ
現在8ヶ月待ちとなっており
皆様に大変ご迷惑をおかけしております…
「待ちきれないよ~」という声に
お応えし、本にまとめました!
ラボのみんなで作ってくださいね🍞#エイプリルフール#キムワイプ pic.twitter.com/4I6uZlUs74
キムワイプアカウントが仕掛けるエイプリルフール企画は、例年盛り上がっています。2年前には「食用キムワイプ(キムワイプの外箱型ケーキ)」、昨年は「飲むキムワイプ」「キムワイプリン」を発表し、ユーザーを騒然とさせてきました。
キムワイプ本来の用途は、言うまでもなく、ほこりや汚れを拭き取ることです。一方、この製品に不思議な魅力を見いだし、卓球用ラケットとして使ったり、はたまた感情の赴くままに食べてしまったりするファンたちも存在します。
特に後者の人々は、半ば都市伝説化し、「キムワイプおいしい」とのネットミームまで誕生したほど。キムワイプはあくまで産業用ワイパーです。日本製紙クレシアは、たびたび「食用ではなく健康被害を引き起こす」と呼びかけてきました。
翻って、エイプリルフール向けの企画は、「非推奨」とされる使用法に、あえて着目したものと言えます。
同社の担当者も「普段は『キムワイプおいしい』の関連ツイートには反応していないが、4月1日だけは、特別な一日として大いに楽しんで欲しかった」と、その狙いを認めます。
では、今年の主役にキムワイプパンを据えたのには、どんな理由があったのでしょうか。
担当者いわく、昨年発表した「飲むキムワイプ」と「キムワイプリン」が、ネットニュースなどで話題になりました。関連記事の内容に触発され、日本製紙クレシア社員の家族が、キムワイプ風の見た目のパンを作ったといいます。
「当時は、まだキムワイプカーブを再現できていませんでした。しかし、そのパンがヒントとなり、『来年のエイプリルフールはキムワイプパンにしよう!』と思い立ちました」
以後、社内で何度も試作が重ねられました。製品の象徴である緑色の曲線は、パンの内側に表れます。色みや全体のバランスが整っているかどうか、焼き上がり、切ってみるまで分からず、非常に苦労したそうです。
試行錯誤の結果を活かしたいと、今回は冒頭のツイートに加え、レシピの画像も添付しました。生地のこね方から、独特の「キムワイプカラー」を出すための包み方まで、写真つきで解説する内容です。
ちなみに材料一覧を読むと、「キムワイプの素 3g」との表記に気がつきます。担当者に詳細を尋ねたところ、「キムワイプから抽出したもの」だとか。抹茶でも代用できるそうで、「キムワイプ愛」と共に注ぐのが大切といいます。
ところで、2020年に「食用キムワイプ」が発表された際にも、ツイートの閲覧者から「調理法が知りたい」との声が出ていました。しかし同社は「企業秘密」として、内容をつまびらかにしていません。
今年、対照的な判断を下した背景には、ユーザーへの深い信頼がありました。
「キムワイプリンと比べても、キムワイプパンはかなり難易度が高いものでした。あえて難しいものに挑戦したくなるのがキムワイプユーザーだと思います。ある程度情報公開することで、自ら作り上げてみる楽しさを提供できると考えました」
「また最初の挑戦で、パン作りに成功するのは至難の業だと思います。何度も挑んでみたいと思えるきっかけになれば」
ファン心理をがっちりとつかみ、称賛を得たキムワイプパン。現状を踏まえて、担当者は次のように話しました。
「何事もリアルが面白いですよね! キムワイプファンから沢山の反応をいただけてうれしいです。今、必死に全てに目を通して、コメントを返しています」
「これからもキムワイプは『いつも、究める人のそばに。』の精神のもと、未来をつくるあなたを、支える一枚でありたいと思います」
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