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ネットの話題

120年前の本から出てきた「押し花」 挟まれた意味深なページ

「学生情死」伝える記事、花言葉は「思惑」

120年前の雑誌から見つかった花。「学生情死問題」について寄せられた記事に挟まれていた
120年前の雑誌から見つかった花。「学生情死問題」について寄せられた記事に挟まれていた 出典: 古書森羅(@kosyosinra)さんのツイート

目次

120年ほど前の雑誌から「押し花」が見つかりました。押し花と呼ぶには主張の大きな植物。そして挟まれていたページが伝える意味深な内容。誰が、何を思って挟んだのか――ツイッターで話題になった投稿を巡る物語を聞きました。

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「誰かの日常が残っているみたい」

話題になったのはインターネット専門古書店「古書森羅(しんら)」(@kosyosinra )の投稿です。
120年ほど前の本から出てきました。すごいね、長生きだね。戦争も地震も水害もたくさんたくさんあったのに。

こんな文章とともに投稿された画像には、開いた本のページ。赤茶けた花をつけた大ぶりの植物が挟み込まれています。

本は120年前のものですが、色んなひとたちの手を渡り歩いて、今日わたしの所に来たので、この植物がいつ挟まれたものなのかは分かりません。でもせっかくの出会いなので、わたしのコレクションにお迎えしました。まだ長生きしてね。

この投稿には「今まで手に取った人が誰もこの花を捨てずにいたと考えると胸熱」「誰かのふとした日常がここにまだ残っているみたい」などとコメントが寄せられました。

また、映り込んだ記事の内容について、「押し花の下が『学生情死問題』!?」と読み解く人が現れると、「どんな思いで、そこにこの花を挟んだのだろうか」と思いを馳せる人も広がり、9万件以上のいいねがつきました。

「本を受け継いで行く仕事」

ツイートした、インターネット専門古書店「古書森羅(しんら)」店主の小柴麻帆さん(39歳)にお話を伺いました。

父が千葉で営んでいた同名の古本屋を、15歳の時から手伝ってきたという小柴さん。「本を受け継いで行く仕事」と語る父に古本屋のおもしろさを教わり、「古書森羅」を引き継ぎました。

今年1月、東京・神保町。古本を仕入れるための「市場」に小柴さんはいました。

「百戦錬磨」のベテランたちが集う中でも「最若手」の小柴さん。狙うのは、雑誌がメインです。比較的手に入れやすいということもありますが、当時の人が必要としていたもの、食べていたものなど、息づかいを感じられる魅力があります。

市場の中で、誰も見ないような場所に、その本は積まれていました。

由分社から明治38年(1905年)8月に発行された「家庭雑誌」。

家庭の中から近代化をはかろうと、明治の社会主義者・堺利彦氏が創刊したものだそうです。

この号には「結婚と幸福」を論じる記事や、天文現象、「チキンライスのこしらえ方」など、幅広い内容の記事が収められていました。

家に持ち帰って、本のクリーニングをしている時、突然、「異物」に気がつき、思わず声を上げました。虫?! いや、押し花だ。

古本で小柴さんがたまに見つける「押し花」の中でも、一見して歴史を感じるものでした。挟まれていた記事の内容にも、何かメッセージを感じます。

押し花のシミが目立つため売り物にはできない、古本屋として見れば残念な代物ですが、小柴さんは、「これは素敵だな」と感じていました。

ツイッターで投稿すると、反響を呼びました。

「思うところあったのかな」

投稿へのコメントでは、推測が広がります。植物の見た目から、マメ科の「萩」ではないかと言う人。

「萩」の花言葉を調べてくれる人もいました。

「思惑」「内気」「残酷」

挟まれていたページは、前の号から続く「学生情死問題」へのアンサー記事でした。

「情死」とは、愛し合う者同士がともに命を絶つこと。「来世で結ばれることを誓う」などと美化され、当時は相次ぐ若者の心中が社会問題にもなっていたようです。

この花を挟んだ人の真意は分かりませんが、「思うところあったのかな」と、小柴さんも想像をかきたてられたと言います。

「それも本の良さ」

古本には、こうした、昔の持ち主の「痕跡」が残っていることがあり、「痕跡本」として、一定のファンもいるそうです。


小柴さんも、これまで仕入れた本の中から、押し花のほか、昔のはがきなどが挟まれたままになっているのを見つけたことがありました。本の状態が悪いと売ることができなくなってしまいますが、「これは捨てられない」と、みんな自分の「お大事箱」にコレクションしているそうです。

押し花をするならば、古本屋としては「本が傷んでしまうので、どうかお気を付けて」との注意も喚起しています。

一方で、人から人へと、渡っていく本。古本屋はその「橋渡し役」。何かを挟み込めるリアルな本、だからこその偶然の出会いもある、「そういうのも古本の良さだと思います」。

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