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ネットの話題

「貴様が食べているチョコを作ったのは俺」娘の彼へ忍ばせた父の抵抗

スーツ姿で現れたあいつへのはなむけ

ツイッターで初めて投稿した「義父チョコ」(2019年)。「無駄にこだわってしまった」という力作
ツイッターで初めて投稿した「義父チョコ」(2019年)。「無駄にこだわってしまった」という力作 出典: シャリ(@shaleed)さんのツイート

目次

義理チョコならぬ、「義父チョコ」を、娘の彼氏のために作り続けた父親。今年のバレンタインは、チョコにある「抵抗」を忍ばせました。ツイッターで話題になったチョコについて、父親に話を聞きました。

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「今回はそれでいいんだ」

バレンタインデー直前の2月10日未明。ツイッターに、こんな投稿が上がりました。

いいか 娘の彼氏よ よく聞くんだ

今回も貴様が食べているチョコを作ったのはもちろん俺だ。

どうみても市販品にしか見えないだろう?そうだ、ほぼ市販品だ。今回はそれでいいんだ
投稿したのは、ラッパーで七味唐辛子販売をしているシャリさん(@shaleed)です。

この投稿には、毎年、娘のバレンタイン作りを手伝ってきた「父」としての特別な思いを込めていました。

投稿はこう続きます。

……なぜなら貴様は先日スーツ姿でうちに現れ「娘さんと結婚させてください」などとのたまったな(つづく

バレンタインデーの思い出

それがシャリさんの習慣になったのは、娘がチョコを作り始めた小学校中学年ぐらいからでした。

もともと料理人だったシャリさんが「おもしろそうだな」と、娘の横で菓子作りを手伝い始め、日頃から台所に立つ父を、娘も当然のように受け入れました。

娘は自作のケーキを渡すのとは別に、「家族で作った」とシャリさんが作ったチョコを渡していたそうです。

毎年のように続いた共同作業。


2019年のバレンタイン前夜、シャリさんはツイッターでこんな投稿をしました。

いいか、娘の彼氏よ よく聞くんだ

恐らくは明日貴様がおいしいおいしい食べているチョコを作ったのは この俺なんだ

無駄にこだわってしまって色んなフレイバーをしこんでいる 

本当にすまない

丁寧にラッピングした生チョコ、ナッツを練り込んだホワイトチョコ。
そしてチョコをディップして食べるチョコソース。キャラクター型を使った棒付きチョコレートまであるこだわりよう。

投稿したのは、ちょっとしたちゃめっけでした。

ところが「クオリティが神」とツイッターで話題になり、「無駄にこだわった」という表現に「逆に娘と彼氏への愛情を感じる」と共感が集まって、この投稿は3万件以上のいいねを集めました。

義理チョコならぬ、「義父チョコ」と称されたこのチョコ。

ツイートが拡散した結果、見事に彼氏にばれてしまい、彼氏もシャリさんのフォロワーになったそうです。

バレンタインのコミュニケーション

フォロワーである彼氏にばれることは織り込み済み。

2020年のバレンタインも、あえて、つぶやきます。

いいか 娘の彼氏よ よく聞くんだ

恐らくは今日 貴様が食べているチョコタルトを作ったのは俺とセブンイレブンなんだ。

時間が無かったからお菓子とおつまみナッツをチョコに混ぜただけの手抜品だ

「隠し味に塩気があってうまい」そりゃそうだろうソレおつまみだし。

今年もこんな事になって本当にすまない

ネタのように作ったチョコ。

フォロワーゆえに、「事情」を知っていた彼氏も、ニヤニヤしながら食べてくれたと言います。

しかし、恒例となっていた「義父チョコ」も、2021年は、コロナ禍で自粛せざるを得ませんでした。

市販品に込めた「思い」

これまでずっと手作りだった「義父チョコ」。

でも、今年のバレンタイン直前に投稿したのは、よく見かける「市販品」でした。

「今回はそれでいいんだ」

そこには、特別な思いがありました。

今年のバレンタインに贈った「義父チョコ」。市販品のような見た目ですが
今年のバレンタインに贈った「義父チョコ」。市販品のような見た目ですが 出典: シャリ(@shaleed)さんのツイート

昨年の暮れ。娘の彼氏がスーツを着て、家に来ました。

いつもは、娘が不在の時にもシャリさんと二人でゲームをしたり、趣味のバイクをともに楽しんだりしていた、シャリさんにとっても「友達」のような彼氏。

いつもと違う改まった様子に緊張したシャリさん。

彼氏は「娘さんと結婚させてください」と頭を下げました。


振り返れば、高校時代から娘と付き合いを重ねてくれた彼氏の申し出。二人がシャリさんのクラブイベントに来た時は、舞台上から「娘と彼氏がいるぞ! 盛り上げろよ~」と観客をあおったこともありました。


「俺なんかより、よっぽどしっかりしている男」

息子同然に思っていた人が、娘と一緒になってくれる。

うれしくて特上の酒を一緒に飲みました。

「娘は良い子に育ったんです。かみさんがしっかりしていたおかげで」

ひとりの作業、くりぬいた市販品チョコ

夫婦となり、家を出て行った娘。

今年のバレンタインには、傍らでケーキを作っていた娘は、もういません。


市販のチョコレートから、一粒取り出して、中身をくりぬきました。

そこに詰めたのは手作りの七味唐辛子。


大丈夫。
チョコレートに合う、辛くない七味唐辛子を配合した、安心しろ、俺も料理人だから。

でも、わかってほしい、大切な娘を嫁に出す父親の、これはほんの少しの抵抗なんだ。

詰め込んだ七味唐辛子。チョコレートに合うように配合した
詰め込んだ七味唐辛子。チョコレートに合うように配合した 出典: シャリ(@shaleed)さんのツイート

「どうか、どうかよろしくお願い致します」

フォロワーの彼氏にばれるのは折り込み済みで、今年もツイートをしました。

バレンタインデー当日に貴様はさぞビックリすることだろう。こんなイタズラをして本当にすまないと思っている。

……最後にこれだけは言わせてくれ

娘の彼氏……いや娘の夫、新しい息子よ

「娘を幸せにしてやってください。どうか、どうかよろしくお願い致します」

義父チョコツイート三部作 ~完~

家を訪ねてきた娘の彼氏、もとい夫は、苦笑いしながら切り出しました。「ロシアンルーレットにしましょう」

結果は、シャリさんが「当たり」を引きました。

「無駄に精巧に作り過ぎちゃって、自分でも、分からなくなっちゃったんですよ」と照れ笑いします。

友達みたいに仲がいいから成立する話なので一般的にはこんなイタズラはおすすめしません

これから新しい人生を歩む、娘と「息子」。若い二人に贈る言葉を聞くと、「二人の人生なので、仲良く二人で生きていってくれたらいい。それ以上、何も望みません」。

もしかしたら今年が最後の「義父チョコ」?

「いや、これからもまた、ノリノリで作るんじゃないですかね」

「『孫はまだか』なんて、言う父になりたくない」そう前置きしつつ、もしも孫ができたら「その時は『祖父チョコ』を作りましょうか」。

そう笑いました。

出典: シャリ(@shaleed)さんのツイート

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